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藤咲の背後から近づいてくる、うねりのある茶髪に綺麗な整えられた髭。
額の皺と少し釣り上がった大きな瞳と眉が一件人を寄せ付けなさを感じるが、藤咲とは大分打ち解けているのかフランス語と思しき言語で会話を交わしていた。
大樹自身、フランス語に関しては少し触れた程度で日常会話が出来るほどではない。しかし、英語であれば日常会話が出来るほど問題ないので今に至るまで言語による壁で悩まされることはなかった。
しかし今は、流暢に喋っている藤咲の言葉が分からない。それに疎外感を感じながらも、俺と話す時より、力を抜いて会話をしている彼を見ていて、胸騒ぎのような·····今すぐ藤咲の手を引いて男から突き放したいような衝動に駆られる。
特別な関係ではないと思いたいが、例えそうでは無かったとしても水知らずの男が藤咲の隣にいるのは嫉ましい光景だった。
紙袋を提げている手を強く握りしめて、開閉口が皺になっていく。
大樹は仲睦まじい二人をただただ眺めていることしか出来なかった。
暫くして藤咲ではない男の青い瞳が此方を捉える。誰であろうとも初対面での好印象は心構えているだけに、目が合った瞬間に、固まった表情筋をぎこちなく上げて、挨拶程度に一例をした。
すると、男は友好的に両手を広げながらこれまたフランス語で話しかけてきては、挨拶程度にハグをしながら男の頬が触れるとキスをされた。
大樹の胸のうちでは勝手に敵対視していた人物からの突然のハグやキスに呆気に取られては、されるがままに握手を交わすが、肝心の言語の意味が伝わらない。
首を傾げ呆然としていると、藤咲に「あんた、英語話せる?」と問われたので大きく頷いてみせる。それを目視した藤咲は「Daniel」と男のことを呼びつけたところで
男に少し近寄っては俺の事を見ながら何かを教えているようだった。男は藤咲の話したことに応えるように「oh,sorry」と大樹にお詫びをしてきた。
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