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ダニエルの自宅はブリュッセル郊外にあり、周囲は緑豊かな一軒家で静かに暮らすには快適な地域とも言えそうだった。
車から降りては男に案内されるままに家の扉までの間の敷地内を歩いていると、隣の家の柵から大型犬が舌を出しながら身を乗り出し、此方の様子を覗いている。
金色の長い毛並みに満面の笑みを浮かべたような愛嬌のある口元。そして、思わず抱き締めたくなるほどのつぶらな瞳は誰が見てもゴールデンレトリバーだと分かる。
ダニエルは高笑いをしながら犬に近寄り、「マックスって言うんだ、うちの娘たちもよくお世話になってるんだよ」と撫でて戯れると嬉しそうにつぶらな瞳を細めたマックスの姿はなんとも微笑ましかった。
そんな一呼吸置いたあと、家の中へ招かれて出迎えてくれたのはダニエルの奥さんらしき女性だった。落ち着いたアッシュ系の長く巻かれた髪色に鼻が高い鼻が特徴的な顔立ち。モデルを思わせるスタイルの良さ。音楽家の選ぶパートナーはやはり美意識高いのだと納得させられる。
名前はソフィアと言って軽く初めましての挨拶をしたところで、少し長い廊下を抜けリビングへ辿りつくと、彼女の娘なのだろうか·····女の子二人がテーブルに身を乗り出して平たい生地に二人で詰め寄って星形のクッキー型を押しはめていた。
お菓子作りをしていたのだろう。
大樹は思わず入口で足を止めてその光景を感慨深く眺めていた。ダニエルは娘たちの元へ、藤咲は奥さんに連れられてキッチンまで抱えていた紙袋を運ぶ。
そこにあるのは温かみのある理想の家族の姿。大樹自身にはなかった家族の在り方だっただけに胸に込み上げてくるものを感じた。
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