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ブリュッセルの日本食スーパーで藤咲が適当に買ってきたという食材をキッチンカウンターに並べる。藤咲が寝泊まりさせてもらっている恩義として、ソフィアさんには子供たちとの時間を優先させることにし、晩御飯と大樹と藤咲で作ることになった。 藤咲がその手で何か出来るとは到底思えないが、料理は大樹に任せて自分は2階の自室として使ってる部屋に閉じこもろうとしていたところを無理やり引き留めた。 「僕、料理出来ないけど」 「いいから、片付けぐらいは出来るだろ?手伝え。それにお前が一番お世話になってる人なんだしお礼ぐらいしたらどうだ」 「でたよ、お説教」 藤咲は鬱陶しそうにため息を吐くと何時もの布手袋からニトリル手袋に履き替える。 履き替えた瞬間に見えた藤咲の素手。 心做しか最後に見た時よりも傷が治りかけているような気がして、此処にきてから症状は収まっていたようだった。やはり一緒にいることで藤咲のトラウマを想起させ、生きずらくさせていたのではないかと思わざる負えない。 藤咲のためにも海外で暮らしていた方が心の平穏を保てるのではないかと本来の目的を断念する気持ちが揺らいでいた。 藤咲のことを考えるよりも先に日本食を所望するダニエルに答えねばと誰にでも好みそうなものをある食材の中で考えることの方が優先的だ。 大樹は並べられた食材から一件小ネギのように見えるヨーロッパの薬味として使われることが多い、チャイブを手に取り藤咲に渡すと「小口に切れるか?」と問いかける。 不貞腐れたように「それぐらい出来る」と呟くとキッチンバサミを手に持ち、チャイブを細かく皿に切っていった。大樹も藤咲が自分が捌くことを考えて買ったとは思えないサーモン丸々一匹を手に取り包丁で捌いていく。 「お前、料理できないのによくこれ買おうと思ったな」 「バター料理に飽きたんだよっ。あっさりしたものが良かったから·····日本食が恋しくなったんだよ·····」 料理が出来ない奴は並外れた発想力の持ち主だとよく言うが·····砂糖と塩を間違える律仁は可愛い方で、食べたいという理由だけで捌けないと分かっていながら鮭一匹を購入した藤咲には腰を抜かしそうになる。

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