203 / 292

22-4

中の様子を視察しようとメディア人がその男の前で屯っては言い合いをしている。言語はよく理解できなかったが、きっと藤咲がどうなったのか問うては、 現場の状況を確認しようと強行突破しようとしているのだろう。何度もカメラを構え、男を通過しようと詰め寄っていたが、ボディガードは自らの体を盾にして一歩も通す気はなさそうだった。 そんな殺伐とした空気に圧倒され、集りの後ろの方で呆然としていると 脇腹辺りから身体をすいっと持ち上げられたかと思えば、どこの誰かも知りえない肩に抱えられて足が宙を浮いてはどこかへと連れて行かれる。 身長も体重も一般男性の平均くらいだし、なんなら身長だって律仁と並ぶくらいある。そんな大樹を軽々と持ち上げられるといったら相当な大男。 顔はよくわからないが黒人のような小麦色の肌に明らかにスーツだし、筋肉の付き具合も良さそう。大樹を抱えて歩き出した途端に無線で誰かと会話しているようだったことから関係のような気がした。エントランスから少し入り組んだ通路に入ったところで、もしかしかしたら……なんて希望が生まれる。 このまま藤咲の元へと連れて行ってもらえないだろうか……。 なんて思っていると等間隔で並ぶ扉のそのうちひとつの扉の前で降ろされた。 メディア人に囲われていた男よりも大分大柄な、一時期一世を風靡した大柄な黒人格闘家を彷彿とさせる。 どうりで俺を軽々と持ち上げられたわけだと納得したと同時に190センチ程はあるであろう大男を目にするのは、自分よりを大きなものを前にして威嚇する小型犬の気持ちが分かったかもしれない。 よく言えばつぶらな瞳の二重だが体形の印象の方が勝り、目力と威圧に根負けそうになり、大樹は自然と男から距離をとっていた。 そんな怖気づている大樹とは知らずにその大男は淡々と何かを喋りだしたので 慌て話の途中で割って入る。 『ちょっと、待って……俺、フランス語分からないんだ……だから英語で話してもらえるとありがたいんだけど……』 伝わるかどうかは分からないが、日本語で話すよりは世界共通言語だから伝わってくれると願い、英語で説明をすると小さく「ah」と呟くと深く頷いたので理解してくれたようで安堵する。 『ダニエルから言伝で上司に、日本人のタイキって男を探して連れてこい って言われてたんだ。これくらいの慎重で黒髪で……日本人だから分かるはずだって言われてとりあえず連れてきた……君はタイキか?』

ともだちにシェアしよう!