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唇を離し、下肢の方に目線を落とすと、雄を示す部分がスラックス越しでも見て分かる程に昂っている。
相当窮屈なのだろうか·····言葉で表さずとも刺激を求めるように擦り続けて居心地悪そうにしている。
大樹は胸元で片方の突起を弄っていた手を下肢まで持っていこうとしたところで「そこは·····いやだっ」と藤咲が涙声で訴えてきた。
「解放してやらないと痛いんじゃないのか?」
「痛くないっ·····からほっとけよっ·····」
言葉と体が真逆の行動をとって矛盾している藤咲に振り回されながらも
こんな状態を放って置くわけになどいかない。
張り詰めた状態の藤咲の昂りはきっとスラックスに収まりきらないほど膨張して苦しいはず·····。
このまま帰ることは不可能な以上、大樹が責任を持ってどうにかするしかないと思っては大樹は目元を手の甲で覆い、泣いている藤咲を他所にベルトに手を掛ける。
チャックを下して圧迫感から解放してやると既に先端が隠れているであろう黒下着の一部分が色濃く楕円形のシミができていた。
日頃は性欲とは無縁だと言うほど、あんな涼やかな顔をして可愛げなく詰ってくるくせに、身体は正直に反応してくれている。
大樹が触れたことに藤咲も悦びを感じてくれている·····。
試しに先端を触ってみると、波打ち際に上がった魚のように身体がピクリと跳ねる。と同時に藤咲が上体を起こして睨んできた。
「だ、だからっ·····触るなってっ·····言ってるだろ····こんなのっ·····おかしいからっ」
ここがコンサート会場の救護室だということも忘れて、咽び泣きながら叫んでくる藤咲を大樹は黙らせるように唇を塞ぐ。柔らかい唇の感触に背中からゾクリと沸き立つものを感じながらも、藤咲の唖然とした表情を見つめた。
「あんまり騒いだら誰か来るぞ·····こんな状況見られたくないだろ?それにおかしくないよ。好きな人に触れたり触れられたら誰だってこうなる。自然のことだ」
「でも·····ぼ、ぼくっ·····穢らわしいからっ·····あんたをっ·····汚したくないっ」
どこか寂しそうな瞳。
数週間前に自分の母親が彼に浴びせた言葉が彼の心に傷を負わせてしまったのだと痛感した。
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