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「そうですか·····」 ほぼほぼ初心者である僕が過信していた訳ではないが、いざ辛烈な意見を受けると、自分が時間をかけて作った楽曲のセンスを否定された気分になり、凹む。浅倉さんはすべてとまではいかないが、ほぼ作詞作曲をしているのでその度にレコード会社を納得させるものを作っていると言える。やっぱり尊敬すべき人だよなと思う。 「俺はいいと思います。俺じゃあこんな曲作れないし、切ないメロディがポップな要素と上手く中和してて聴きやすい。尚弥くん自身を表してるみたいで 苦悩の間にも希望も見えてくるそんな曲だと僕は感じたかな」 それでいてちゃんと明確な浅倉さん自身の意見をくれる。この人も心から音楽が好きなんだと人々に自分の曲を届けることに真剣なんだと見ていてわかる。 「最近俺だってクールとかに色気に拘ってる訳じゃないですし。もちろん基盤を完全に崩しちゃうのは良くないけど、もっと柔軟でもいいと思います。俺はこの曲に詞書きたいです」 余程僕の曲を気に入ってくれたのか渋っている木内に対して熱心に助言をしてくれている。木内も浅倉さんによって気持ちが揺らいできたのか尚弥に「尚弥君はどう思う?」と意見を求められ、「僕は・・・・この曲のすべてが今の僕の想いです。律さんに歌っていただけたら、これ以上に光栄なことはないです」 しばらくの間、木内が唸るように考え込むと尚弥の意見と朝倉さんの熱意に負けたのか、編曲と浅倉さんの詞次第でこの話は一旦纏まった。 会議を終え、颯爽と出口へと向かう木内に向かって浅倉さんは「木内さん、尚弥君と曲についてもっと聞きたいから此処少しだけ借りていい?」と 会議室の使用許可をとっていた。会議室に浅倉さんと二人残される。

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