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「また来たなんて酷いなー。この浅倉律がリスク冒してまで徒歩圏内に住んでいた大の親友が住む場所失って、俺の事務所の寮に借りぐらししてるっていうからわざわざバイト先まで会いに行ってあげてるっていうのに」 マスクで口元の形は分からないが明らかにニヤけているのは、半月型の目の形からして分かる。 「なら寮の方に来いよ。ここまで来る必要ないだろっ。吉澤さんに怒られても知らんぞ」 「だってお前最近、寮にすら帰ってないらしいじゃん。大樹がいるから大丈夫だって、その為のマスクでもあるんだし」 問題ないと訴えるように手を振っているが、大樹は懸念しているのか、より深い溜息を吐いていた。 「その自信はどっからくるんだよ。お前なあー·····もっと自分が芸能人だって自覚持てって言われてるだろ·····」 自分の存在に一向に気づいて貰えず、浅倉さんの方を向いて熱心に小言を洩らしている大樹とその傍らで小言を右から左に受け流して気怠い返事をしている浅倉さん。 浅倉さんと大樹が昔から仲良いのは勿論知ってはいるが、大樹の自分といる時には見せない砕けた表情とやり取りに、胸が掻き毟られる感覚がした。 あんなに連絡を心待ちにしていたのに、浅倉さんであれば意図も容易く会えてしまうことに、フツフツと黒い感情が沸き立つ。 尚弥はテーブルの端から大樹の足元を確認すると彼の左脛を目掛けて、靴先で思い切り蹴飛ばした。 「い、いてぇー。え、藤咲がなんでこんな所に?!」 脛に受けた鈍痛によって、漸く尚弥の存在を認識した大樹は、足を上げ泣き所を左手で擦りながら、一驚していた。浅倉さんはその様子を周りを気にしてか、控えめに上下に肩を揺らしながら面白ろ可笑しく傍観している。

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