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「あんたちゃんと寝れてるのか?」 「休憩時間とか移動時間の合間縫って睡眠とってる」 尚弥の予想は的中し、ちゃんと休めていない大樹に心配の念が堪えない。 「はあ?そんなんじゃ、あんた身体壊すだろっ」 「大丈夫だ。研究発表間近はいつもこんなんだし、まだ寝れてる方だ。慣れれば平気だよ」 そう言っている端から、朝日に向かって大きな欠伸をしてるところが説得力に欠ける。今は大丈夫かもしれないが、こんな生活を続けていたら心身ともにボロボロになるのは目に見えていた。そんな大樹の苦労してる姿を目にしながら、何もせずにただ見ているなんてできるわけがない。 自分が彼の為にできることはあるだろうか。 苦笑いを続けながら「藤咲はそんなに心配する必要はない」と言い張っている 大樹の横顔が無理しているように見える。 「少し遠くなるけどウチにくれば·····」 自らウチに住めばいいと誘うなんて尚弥のガラじゃない。 だけど、帰る家があるのなら大樹の居住地のない不安を払拭できるし、本人も 体を休める事ができる。そしてなにより、この先マメに連絡を寄こしてくれる保証もないこの男と一緒にいることができる。 尚弥は照れくささを紛らわすように腕を組んで大樹にそう提案すると 当の本人は「え?」と目を見開き、口を開けて驚いていた。 「あんたの為になりたい·····。それに·····僕の克服の手伝いしてくれるんだろ?あんたがご飯作ってくれたり家事全般してくれんなら入れてやってもいいよ」 願ったり叶ったりの好条件だと思うが·····。 「そんなのでいいなら俺は有難いけど、それはいくら何でもお前に悪い。それに俺がいたらお前が休まらないんじゃないんか?」 大樹に喜んでもらえると思い提案したのに、尚弥の精一杯の勇気も虚しく、素直に受け入れてもらえず、煮え切らない態度に恥ずかしさからくる怒りが込み上げてくる。 大樹は僕に会いたいとか思わないんだろうか·····。 ずっと一緒にいたいと思わないんだろうか。

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