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ピアノの繊細なメロディが印象的なイントロ。律さんのイメージにしては、綺麗すぎる爽やかなバラードだが、編曲により律さんのイメージを大幅に崩さないものとなった。
寧ろ従来の色気のあるお洒落さ、格好良さとは違う形で優しさのようなものを感じる。
律というより、普段の恋人といる時の律さんのイメージに近い雰囲気と言った方がいいもしれない。
歌詞も尚弥が律さんに話した曲の想いも含めて彼が感じた曲に対するイメージを的確に言葉にしている。大切な人を想い、希望を全面に押し出した歌詞。メロディに歌詞を当てただけのデモ段階ではあるが、律さんの声からメロディに乗せて発せられる言葉が甘くて、冷めた心を溶かしてくれるように暖かくて、耳にしていて心地いい。
作詞に関しては彼の方がプロだし申し分無い出来だった。
「とても素敵だと思います」
「了解、これでオッケーだしとくね。レコーディングの日程はまた連絡するから。今日はありがとうね。これ焼きましたデータ尚弥くんにあげとくね」
桃瀬は満面の笑みを浮かべてパソコンを閉じると先程聴いた楽曲のデータであろうUSBメモリを渡してきた。多分レコーディングまで2週間も無いはず、当分はこの楽曲の稽古に当てられるだろう。
沢山のファンを抱えて期待されている律さんの楽曲だからこそよりいい作品にしたい。ライブの時もそれなりの責任感を感じてはいたが、初めて舞台に立った時のような緊張感とワクワク感が尚弥の心を奮い立たせる。
既存の曲を弾いて己の表現力を魅せ、聴かせる以外にもこうやって周りと連携を取りながら自らの曲を生み出す活動は初めての試みであったが、とても有意義だった。と同時に、音楽の深い世界に浸ることで、自分はどんな時も人の心に寄り添えるこの世界が大好きなんだと再確認できた。
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