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これが世間で言う一汁三菜というものなのであろう。大樹の出してくる食事は基本、健康志向だった。秋刀魚の塩焼きにおろしとすだちも忘れていない。ほうれん草の胡麻和え、レンコンのきんぴら、そして具だくさんの豚汁。
食の細い尚弥を気遣ってかひとつひとつの量は少ないが品数は多いのでお腹は充分満足できる組み合わせ。ダニエル家で食べたベルギー料理も悪くは無いが、和食の方が断然好みであった。アイランドキッチンの目の前にある二人用の椅子テーブルに向かい合わせに座る。
大樹は先程のシャワーから髪を乾かした後、Tシャツを着て現れたことで、漸く尚弥が目線を合わせられる格好になった。
「今日は何の仕事だったんだ?」
大樹が作り置きをしていた夕飯を一人で食すことが多かったが、
彼と二人で向かい合って食べる食事は久しぶりだ。常に独りでいたときは何とも思わなかったが、二人でいる楽しさを知ってから誰かとの食事は美味しさの調味料になるのだと気が付いた。
「朝の番組のインタビューと帰りに律さんの楽曲のデモがきたら視聴してきた」
「へー尚弥、テレビに出るのか。それは楽しみだな。曲の方は順調なのか?」
大樹の料理を美味しく味わいながらも黙々と箸を進めている中で、近況報告をする。
「うん、普段のあの性格から出てくる言葉だとは思えないくらい凄くいい詞書いてくれた」
尚弥なりの誉め言葉のつもりで言ったのが大樹には相当うけたらしく、飲みかけていた豚汁を吹き出しそうになり、慌てて口元を抑えては、飲み込むと声を出した笑っていた。
「確かにあいつは自由奔放だけど、それは余計だろ。本人に言ったらしっぺ返しされるから気をつけろよ」
「誉め言葉のつもりなんだけど」
今の自分の環境下で親しい中には理解されているが、自分はよく憎まれ口を叩いてるとマネージャーであった時、母親から注意を受けることがあった。
だけどそれは、素直に言葉に表すことに照れを感じてしまい、隠そうとするあまり、ひん曲がった発言が出てしまうからだ。表舞台に立つ時は、発言には細心の注意を払っているが気心知れている人を前にすると、どうしても本性が出る。
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