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「大樹と来たのか?さっき車がみえたから·····」 何年前に母親と弦一の元へ専属契約を頼みに来る際に座っていた場所と同じ所に宏明と向かい合わせで座っている。商談用の椅子とテーブルがある場所から中心の広いスペースには、先ほど横を通ったグランドピアノ。 宏明が座る、更に奥の木製のディスクにはお茶を出して掃けていった、弦一が新聞を広げて寛いでいた。 「はい、今。一緒に住んでいるので」 「そう、尚弥とあいつが……」 左程驚いた様子もなく、両手をテーブル上に組んでは独り言ちるように呟いた。その間も、俯き加減のままで尚弥との目線を合わせてくれようとしない。 「君や……君たち家族には申し訳ないことをしたと思ってる。そして光昭さんにも……。彼を好きになることは道理に反していることは自覚してた。でも、どうしても君のお父さんに好かれたかった。自分だけのモノにしたかった。優秀な弟を持って、家族では外れ者にされていた俺を褒めて慕ってくれてたのは光昭さんと幼い君だけだったんだよ」 宏明を信じて、ピアノの先生として慕って受けていたレッスン。 格好よく、そして何より楽しそうに弾いている彼が輝いて見みえて、ただの遊びで弾いていたピアノを本格的に始めたいと思わせた。 幼いころには気づくことのできなかった、宏明が父に向けていた熱の込められた視線や、父の言動で一喜一憂する様は今思えば、彼の心境の現れだったのかもしれない。 「だけど、君らと過ごして光昭さんへの気持ちがもっと独占的になる度に、光昭さんに酷く可愛がられてる尚弥が妬ましかった。だから俺との関係を洗いざらい話したのが君だと聞いて、余計に恨めしかった。弦一さんの所に来たのは、音楽が好きな光昭さんの為だったけど、君が恭子さんと此処に来た時、いつか君たち二人を陥れてやろうと思ってたのは本当だよ」

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