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「べ、別に·····放っておかれるくらいなら、僕の事·····かまってくれたほうが·····ぃぃ」 のぼせた様に顔が熱くなるのは、酔いが残っているからじゃない。 僕自身も大樹を求めている。 触れたい触れてもらいたい。 愛することが穢れたものなんかじゃないと受け入れることが出来た今なら·····。 「いいのか?」 尚弥は少しばかり不安げに揺れる瞳に静かにうなずいた。 ----------------------------- 普段尚弥が活用しているビジネスホテルとは一味違う。高級感のあるエレベーターに大樹に手を引かれながら乗り込む。カジュアルな服装に手に下げたペットボトルの入ったビニール袋でもホテルに上手く溶け込んでいる彼は、多分元から備わている清涼感のおかげだろうか。傍から見ればそんな澄ました表情の彼だが、かなり緊張しているのか、手に汗が滲んでいるようすから伝わる。 八階層まで到達し、赤い絨毯を踏みしめる。 部屋まで着く間の道中で大樹の繋がれた手を眺めながらこの先起こりうることへの緊張が勝ってすっかり酔いが醒めてしまっていた。 奥の部屋へ辿り着くと、大樹は徐に尻ポケットから紺色のカードキーを取り出して、ドアノブにかざす。 ふと、部屋までの道中でいつの間にホテルの部屋を予約していたのだろうかと疑問に思ったが、そんなことを不躾に問えるほど余裕はなかった。 部屋に入り、扉がパタンと閉まるなり、大樹が大きく息をつくと尚弥の緊張が一気に高まる。 「ほんと律仁のやつ·····」 掌に下げられた袋を揺らしながら口元を左手で抑えては、頬を赤く染めている。 「あの人がどうかしたのかよ」 「律儀に部屋のカードキーと一緒に尻ポッケにコレ入れてきたんだよ。馬鹿だろ」 入ってすぐのタンスにビニール袋を置くと開いた手で徐にスラックスの尻ポケットに手を入れては、正方形で黒い袋に個梱包された袋を取り出した。中の形状がくっきりと円を描いていることから、完全にソレだと分かる。 この大樹の反応から先ほどの疑問は紐解かれ、全て律さんの仕向けたことだと諭した。 第三者に促されるほど自分たちは進展していなかったのだろうかと途端に羞恥に見舞われる。確かに酔い潰れる前に律さんと世間話程度で大樹とのことを聞かれたので、当たり障りなく返したつもりだったが、訝しんだ表情のまま「そっかー」と納得されたのが胸に突っかかってはいた。

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