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シャワーから出るとビルの夜景が一望出来る大窓に腕を組んで窓枠に寄りかかり、外景を眺める大樹の姿があった。てっきりすぐ傍のベッドで待機しているかと思っていたので、いきなり始まるわけではなさそうでホッとした。 少し身構えている尚弥を気遣ってか、あからさまなホテルのバスローブではなく、わざわざ洋服に着替えたのだろう。尚弥もそのつもりとはいえども、張り切っているように思われるのも恥ずかしくて、結局ワイシャツにスラックスのままだった。 隣に立つべきか悩んだ末、二つ並ぶうちの大樹の位置から近いセミダブルサイズのベッドの足元側に腰掛けて、景色を眺めた。 「こういう夜景も綺麗だけどさ、やっぱり俺は人工的なものより、何も人工的な明かりもない山の中で光輝いている星の方が何倍も綺麗にみえて好きだよ」 尚弥が居ることに気づいては、景色を眺めながらそう呟く。確か今年の初めに4人でキャンプに行ったときにみた、夜空の景色は溜息が出るほど綺麗で、思わず笑みがこぼれてしまうほど、心が洗われるようだったを覚えている。 尚弥自身も電飾が煌びやかな景色は地元に帰れば常日頃、目の当たりにしている景色なだけに、特別な感情を抱くことはなかった。 「僕も·····あんたと見る夜空が好きだから、また連れてってよ·····今度はふたりで·····」 あの時は大樹への期待と不安定な恋心を認められない自分への葛藤、集団で共にすることへの不安で素直にまっさらな気持ちで楽しんだ訳ではなかった。 「そうだな、前は冬だったから。今度は夏の空も尚弥に見せてやりたい」 「冬もいいけど夏も夏で風情があっていいんだぞ?」とキラキラと少年のように目を輝かせて話す大樹は、心底楽しそうで気持ちが伝染して、こっちまで胸が弾んでくる。 「んでまた、あんたの解説が始まるんだろ?」 空を眺めながら、あの星はなんとかで·····嬉々と話している彼の姿が目に浮かぶ。 「解説って·····まぁ、話しだしたら止まらなくなるだろうな」 耳朶を仄かに赤く染めて人中を人差し指で左右に擦る。照れているのか、そんな彼が可愛くみえた。

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