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【SIDE:L】
11月中旬――俺は、ニヤニヤしていた。
理人さんが、そわそわしている。
スマートフォンを肌身離さず持ち歩いたり、ブツブツ言いながら一生懸命なにかを検索していたり、普段は買わない類いの雑誌を買い込んでペラペラめくってみたり、俺が風呂に入っている隙にこっそり鞄の中を覗いてみたり。
すっかりこの時期の風物詩となったそんな理人さんを見る俺は、うっかり緩みそうになる頬の筋肉を引き締めるのに必死だ。
今、理人さんがこんな行動を取っている理由は、ただひとつ。
俺の、誕生日。
その日を一緒に迎えるのが当たり前になったのも嬉しいし、クリスマスと一緒でいいやって思わずにいてくれるところも嬉しいし、俺のために真剣になってくれる理人さんの姿が見られるのも嬉しいし、愛おしくてたまらない。
だから俺は、たとえ理人さんが食事中に上の空でも、夫の浮気を疑う妻のような怪しい行動をしていても気にしない。
むしろ、そんな理人さんがかわいすぎて、ところかまわず押し倒してしまいたくなる衝動を抑えるので、手一杯だ。
だから、そう。
たとえ、理人さんが俺の上司と二人きりでカフェのクリームソーダを飲んでいるところを見てしまったとしても――え?
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