113 / 326
言わぬが花
*******
仁side
「仁、起きろ」
身体を揺すられて俺は目を開けた。
ぼんやりした視界に現れたハルさん。
「おはよ仁」
オデコにチュウされた。
「ハルさん、はよっございます」
「おいで、抱っこしちゃるから」
そう言われてハルさんに抱き付いた。
ぎゅうって抱き締められて至福の時。
そして、お兄さんと目が合った。
ん?お兄さん?
ドアに寄りかかりこちらを見ているお兄さんの姿。
えーーと、
状況を把握するのに数秒かかった。
1
2
3
ギャーッ
お、俺、裸だよーっ!
ハルさんから離れてシーツをかぶった。
「仁、どした?」
シーツの上からハルさんの手の感触。
「す、すいません、お兄さん居たんですね、忘れてました!俺、裸なんでーっ」
テンパる俺。
目が合ったお兄さんはクスクス笑ってたもん!
「大丈夫だって、全部見られてないって」
「そんな問題じゃないです!服下さい、服」
「はいはい。」
ハルさんは服をベッドに置いて、俺を1人にしてくれた。
服を着て、怖ず怖ずとハルさんとお兄さんの居る部屋へと行った。
「おはようございます」
改めて2人に挨拶をする。
「おはよ仁くん」
お兄さんに微笑まれて、つい、照れてしまう。
だって、ハルさんに甘えた所見られたし、裸も………全部じゃないとはいえっ見られた。
恥ずかしいのは裸じゃなく、裸だった理由を知られてしまっているから。
ハルさんとセックスした事がバレているのが恥ずかしい。
喘ぎ声を聞かれてたしなあ。
「仁、座れよ」
ハルさんに呼ばれて横に座る。
テーブルには朝食が並べられていて、
ハルさんが作ったのかと思いきや、お兄さんだった。
しかも凄く美味しい。
「なあ、ハル、隣の部屋空いてるよな?」
お兄さんの問い掛けに、ハルさんが頷くと、
ちょっとニヤニヤしながら、
「じゃあ、仕事いくから、またね」
と言って帰って行った。
またね。の意味が分かるのは一週間後になる。
ご飯を食べて自分の部屋に戻る。
「仁さん」
何時ものようにケイが出迎えてくれた。
ぎゅっと抱き付くケイ。
夕べ、誘われて…結局は抱けなかった俺。
どうしてケイはこんなに俺に懐くのかなあ?
「ケイ、夕べはその……」
言いかける俺にケイは、
「仁さん、仁さんは真面目だから今、色々悩んでるでしょ?僕が夕べ誘った事とか、佐伯さんの事とか、」
そう言って俺を見てニコッと笑う。
「なんで?」
「昨日はちょっとやり過ぎました。ごめんなさい。なんかムラムラきて、今朝は仁さんおかずに1人エッチしたから今日はスッキリですよ」
可愛い顔して凄い事を言うケイに驚く。
「あまりワガママ言うと追い出されちゃうし。我慢します」
ううっ、
年下にこんな気遣いされちゃうなんてー!
「追い出しはしないよ。」
「良かった。僕、足も治ったしお仕事手伝います」
「ありがとう。給料安いけどな」
ケイは素直で可愛い。
だから余計に傷つけたくない。
「景那」
本名で呼ぶ。
「はい?」
「名字言いたくない?」
ケイは一瞬考えて、
「小浜」
と言った。
オバマ?
イエス、うぃーきゃん!
「大統領?」
「小さい浜で小浜ですよ。」
ケイはクスクス笑う。
あーね。
「そっか、ありがとう景那」
「仁さん………僕は仁さんが好きです。佐伯さんが居ても僕は諦めたくありません。」
いきなりの告白。
「ケイ、俺は……」
ハルさんがっ、と言う前にケイにキスしてきた。
直ぐに離れた唇。
「仁さんって隙だらけ。しかも、顔真っ赤」
ケイの指摘通り耳まで熱い。
「僕、佐伯さんから仁さんを奪いますから覚悟して下さいね」
そう宣言された。
ともだちにシェアしよう!