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言わぬが花 2話
「ケイ、俺は……」
「佐伯さんと付き合ってる、でしょ?だから?だって先の事なんて分からないでしょ?佐伯さんとだって付き合い始めたのは最近ですし、いつ誰を好きになるか分からないんです。未来なんて、本当分からないんです。だから、僕にも可能性はある。でしょ?」
俺の言葉を遮り、そう言ったケイ。
確かに、ハルさんとこんな関係になるなんて思ってなかったもんなあ。
未来なんて分からない。
「だから今は我慢します!」
ニコッと笑うケイ。
なんで、
なんでケイは、そんなに………っ
「俺なんか好きになっても良い事なんてないぞ?」
「ありますよ。幸せな気持ちになります」
ケイ、お前ってば!
照れる事を!
「仁さん、凄い顔真っ赤ですね。そんな所も好きですよ僕」
やーめーれーっ!
照れてくさい!
ビビビーッビビビーッ
音が割れたような呼び鈴。
まるで空気を読んだように今の状況から救ってくれた呼び鈴に感謝。
だって恥ずかしいもん。
ドアを開けて、
俺、フリーズ!
「仁さん」
満面な笑みを浮かべる小悪魔真世が居る。
迷いもせずにドアを閉めようとする俺。
「ちょ、閉めないで下さい!」
真世はドアの隙間に素早く足を入れる。
「何しに来たんだよ」
「仁さんを抱きに」
思いっきり閉めようとする俺。
「冗談ですてば!今日は差し入れとお詫びに来たんですよ」
真世は力づくでドアを開けようとする。
「信じされるか」
言葉を吐き捨てる俺に、真世は涙目で見つめ、
「信じて貰えないのは仕方ないですよね。だって酷い事したし、でも!反省しているんです凄く」
真世はそう言うと涙をポロポロ零した。
ちょ、マジかよ!
ドアの向こうで子供みたいに泣く真世。
イジメしてるみたいじゃんか!
イジメ、カッコ悪い!
「分かったよ、真世ごめん」
ドアを開けた瞬間。
しまった……と後悔した。
「仁さん」
ニヤリと笑いとぎゅっと抱きついて来た真世。
泣き真似かよ!
「こらっ、離れろ!嘘つき小僧」
「やだっ」
真世は力を入れて俺に抱き付く。
「仁さん、依頼人の方ですか……」
ケイの声に俺は驚く。
少年に抱きつかれている俺。
ケイに誤解される!
「誰?仁さんの知り合いですか?」
真世をジロジロと見るケイ。
真世もケイをじっと見ている。
しばし見つめ合う2人。
な、なんかヤバいかも~この状況!
「仁さん、この子誰?仁さん1人暮らしですよね?」
確かめるように俺を見る真世。
「彼はケイ。まあ、一緒に暮らしてる」
「弟とか?」
「血の繋がりはない」
「えっ?どういう事ですか?」
「僕は仁さんの愛人なんです」
ニコッと笑いケイが答えた。
ケイーっ!何言い出す!
「愛人?仁さん、佐伯さんと二股してるんですか?」
真世の質問に俺はどう答えて良いか悩む。
上手く説明しないと真世が暴走しかねない。
「いや、あの、」
しかーし、俺はかなりテンパっている!
上手く説明出来るわけがない!
「ズルい!僕とは拒否ったくせに!僕も愛人にしてよ!ううん、僕を本命にしてよ」
ほっぺを膨らませ拗ねる真世。
「えっ?彼って仁さんとどういう関係なんですか?」
ケイもピクリと反応する。
「仁さん話してないんですか?この前の夜の事」
真世はわざと何かあるような言い方をする。
「この前の夜?」
もちろんケイは反応した。
「何もない、ケイ、おいで」
俺は真世を自分から引き離してケイの腕を引っ張り、奥へ。
「あ、逃げないで下さい」
真世も慌てて靴を脱いで後を付いて来た。
「仁さん、あの子は友達?」
ケイは不安そうに聞く。
「仁さん、ちゃんと僕を彼に紹介して下さいよ。ベッドで僕に抱かれた事とか」
嘘つき小僧登場。
「ウソだからな。」
慌てて、俺は否定する。
「ウソじゃありません。僕、仁さんのチンコの茎部分にホクロあるの知ってますから」
勝ち誇ったような真世。
「真世!お前いい加減に!」
本気で怒らないとダメだ。
コイツは反省していない。
「仁さんと寝たの?」
真っ直ぐに俺と真世を見るケイ。
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