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言わぬが花 4話

「だってケイにゃん可愛いから………仁さんとやりに来たのに出来ないからムラムラきて」 真世の声の後にガタンと倒れる音。 「やっ、だめっ、ドアの向こうに仁さん居るし……っ、佐伯…さんもっ、やっ…」 「聞かせてやろうよ、佐伯さんも混ざる?」 会話の合間に聞こえるクチュクチュという音と、荒い息。 「だめっ、やだっ、そこは………んんっ、仁さんしか」 「ケイにゃん、イヤイヤ言いながら感じてるね。佐伯さんに見せてやりなよ。感じてるところ」 「やだっ、みないで……っ、やっ、指いれちゃイヤ」 なっ、なに、そんな可愛い声出してんだよ! 指、どこ入れてんだよ真世! 「やっ、舐めないで……」 えっ、舐めてんの? 俺は外が気になり、ゆっくり鍵を回した後にドアを少し開けた。 瞬間、真世と目が合い、その目が笑った。 騙された! 瞬時に判断して、直ぐにドアを閉めた。 「あ~、もう真世!ばか」 ハルさんのがっかりした声。 「失敗しちゃったね」 ケイもがっかりしたような声。 あー、こんちくしょう芝居かよ。 でもケイ、上手いなっ。 絶対出てやんねえ! なんて誓ってみるけど、良く考えてみると、ここって俺の部屋だよな? 家主の俺が何でトイレの中に居るんだ? おかしいだろっ! くそっ、 俺はトイレの小窓を2枚とも外した。 で、身を乗り出す。 外に脱出してやる! でも、靴ないよなっ、とか考えていると、ある人と目が合った。 「仁くん?何してるの?」 ハルさんのお兄さん。 俺は指を口に当て静かにのポーズ。 で、小声で、 「降りたいので受け止めてください」 とお願いして、俺はお兄さんに抱き止めて貰い脱出した。 「………あの、もう降ろして貰っても良いですけど」 お兄さんは俺を抱きしめたままなのだ。 「仁くん靴履いてないから。駐車場に車あるからそこまで抱っこしていくよ」 お兄さんは歩き出す。 「えっ、大丈夫ですよ」 そう言っても降ろして貰えずに結局は駐車場まで、 でっ、 お兄さんの車はなんと! ジャガー! 助手席に座らせられた。 「怪我とかしてない?」 お兄さんは姿勢を低くして俺の頬に手を当てた。 ちょ、ちょっとっ、 お兄さんは心配そうな顔。 「ないです!大丈夫です!」 俺は照れてしまい、俯く。 「で、どうしたの?」 お兄さんは優しい口調&笑顔。 その優しさについ、事情を話した。 「そっか、大変だったね。じゃあ、気晴らしにドライブでも行く?」 「えっ?そんな、お兄さんにそこまで迷惑は」 優しさについ、話してしまったけれど、そこまでは甘えられない!俺は首をブンブンと振った。 「部屋戻れないんじゃない?」 あっ………っ、 うっ、どうしよう! 「時間潰してたら、その男の子も帰るよ」 お兄さんにそう言われて頷いた。 「じゃあ、決まりね」 お兄さんはニコッと笑う。 「すみません」 謝る俺の頭をポンポンと叩くと、 「気にしないでね」 お兄さんとドライブに行く事になった俺。 ****** 佐伯兄side キター、キタキターっ! 仕事をとっとと済ませて来た甲斐ありましたよ! まあ、野暮用だったし。 仁くん会いたくてウロウロしてたんだよね。 ストーカーみたいって思ったけど、 イヤ、違う!純粋な気持ちをストーカーという言葉にしたくない。 自分の幼い頃は好きな女の子の家を突き止めても周りはストーカー扱いしなかった! そうだよ、昔は周りさえも協力してくれてたじゃないか! だから、ストーカーじゃないよ! だって、小窓から仁くんが………自分から、胸に飛び込んで来たんだから。 しかもドライブ! ああっ、 いますぐ、抱きたいなあ。 今朝みた仁くんをまた見たい。 『ソウさんっ激しくして』 とかっ……… 『ハルさんより、気持ちいい』 とかっ…… 言われたいなあ。 仁くんをチラリと見る。 首筋にキスマーク。 いいなあ。ハル! で、足元を見ると裸足。 そっか、裸足だったな仁くん。 車をある場所へと向かわせる事にした。

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