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果報は寝て待て 8話

****** 仁side 良かったー!時間間に合ったぜい! 俺はお兄さんに感謝しながら喫茶店の中へ。 確か一番奧の席に居るって言ってたよなあ。 依頼人とは初対面。 電話でのアポ。 まあ、職業柄危ないヤツも居たりするから用心してるんだけど、怪しげなビルとか人目につかない場所の指定じゃなかったから、とりあえず会う事に。 なんせ、毎回美沙に金品奪われてるからなあ。 金、必要、絶対! 一番奧へと進むと男性が俯き加減で座ってる。 依頼人は男性だから、この人かな?と声を掛けてみた。 「あの、失礼ですが、佐々木…良介さんですか?」 男性は顔を上げて、 「はい」と返事をした。 「良かった。おれ……あ、私、向井仁でお電話いただいた探偵事務所の者です」 俺は名刺を出して丁寧に頭を下げる。 「へえ、可愛い顔してるんだね。まだ若いのに探偵してるんだ」 佐々木さんはフレンドリー。 いや、フレンドリーというか、なんだろう?この一瞬にして君年下だよね?お前仕事出来んの感は……。 「あはは、若く見えます?三十路いってるんですけどね」 と愛想笑い。 あー、もう童顔って初対面では不利なんだよなあ。 「え?ウソ、すみません!俺より下くらいだと……22~3くらいかと思いました。どうもすみません」 佐々木さんは深々と頭を下げた。 「あ~、いえいえ気にしないで頭上げて下さいね」 必死に謝る佐々木さんは何だか可愛く見えた。 気を取り直して仕事再開。 「あの、依頼はどのような」 佐々木さんの正面に座り質問。 佐々木さん沈黙。 …………………………………5分経過。 あれあれ? 佐々木さん肩震えてるよ? 笑いこらえてるんかな? 肩が震え出して俺、困惑。 「あの、佐々木さん?」 声をかけてみる。 ぐすっ……ひっく、 おおっとおーっ、 笑ってるんじゃなく泣いてるじゃないか佐々木さん! 「ううっ……ま……よっ」 ううっ、ま、よ? うまよ?馬よ? ん?何かな? 「さ、佐々木さん?」 もう一度呼ぶ。 「真世ぉぉ」 佐々木さん号泣。 「さ、佐々木さん、佐々木さんどうしたんですか!」 顔を伏せて号泣な佐々木さんと俺に店内客の視線が降り注ぐ。 ああ、何かさ、 ゲイカップルが別れ話しているような視線が痛い。 特に斜め前の女子2人は目キラキラしてるんだぜ? ヒソヒソと何か言ってはキャーって興奮。 ああ、なんか美沙と同じ匂いプンプン。 絶対に彼女達は腐女子だ。 でも、確かにこの状況じゃ誤解されるよ! やっぱり事務所来て貰えば良かった。 「佐々木さん、泣き止んで下さい」 佐々木さんの肩に手を置いた瞬間、 佐々木さんは俺の腕にしがみつき、 「忘れられないんだよ、俺は……もう、捨てられたら生きていけないんだ」 と爆弾発言。 ええっ!ちょっとお! 腐女子2人をチラリと見るとめっちゃ見てる! しかも、おい!動画とか撮り出してるよ! やばい、何? 店内皆して俺が佐々木さん振ってるみたいな?状況ってやつ? ううっ、逃げたい! 誰か助けて! 視線が痛いよハルさーん! 「仁くん大丈夫?」 ハルさん? 名前を心で叫んだらハルさんの声。 振り向くとお兄さん。 あ、お兄さんかあ。 ハルさんと声同じなんだもん~ちょっと期待した。 でも、同時にホッとした俺が居る。 お兄さん帰ったんじゃなかったのか。 あ、もしかして待っててくれてた? 「こら、こんな所で泣くと店の迷惑だろ?大人なんだから」 お兄さんは佐々木さんの腕を取り俺から離した。 「これじゃあ人目につきまくりだろ?ひとまず俺の車に」 お兄さんは俺を見て微笑む。 ああ、お兄さんって天使?神様? 「助かります」 俺はとにかく、この場から逃げたい! やだやだ! お兄さんは佐々木さんを立たせ連れ出してくれた。 後を追う俺の耳に届いたのは、 「や~ん三角関係ね。きっと、あの男の子が爽やかイケメンスーツとデキちゃっての修羅場ね。萌えるー」 と腐女子2人の会話。 ああ、もう腐女子って妄想好きばっかやんけ! チラリと見ると、 「頑張って」と応援された。 何を頑張るんだよ俺は!

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