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逢いたいが情、見たいが病 4話

「覚えててくれたんですか?」 ニコニコした表情を崩さない楠木。 コイツはどんな時も今みたいにニコニコしていた。 良く見ればあの頃の面影が残っていて、茶髪で人懐っこくてチビだったくせに、黒髪で身長はハルさんくらいかな? 高校の時、散々コイツに悩やませられた。 なんとなく真世と同じ匂いがする! めちゃめちゃ危険やないかい! 「向井先輩って三十路いってるくせに肌とか綺麗で10歳は下に見えますよ」 楠木は俺の顔から首筋までを軽く撫でていく。 ぞわぞわと悪寒が走ってしまうやんけ! 「さわんな!」 キッと睨む俺を余裕で見下ろす楠木は、 「先輩って後ろまだ処女?」 とか聞いてくるし、 この変態! 「んな事聞いてどーすんだよ」 「社長より先に食べちゃおうかな?って、もし初めてなら痛くしたら可哀想だし、経験済みなら多少激しくても良いかなあ?って」 「はあぁ?何言ってんだよ!俺の意志は無視か!それにソウさんとはそんなんじゃねーし!」 「社長は先輩を好きですよ。あの人、ノンケかと思ってたけど違うんだな」 はあぁ?コイツは何を言ってんだよ。 ソウさんが俺を好き? そんなわけない! 俺に優しいからそんな風に見られているんだな、誤解を解かなきゃ、 「ソウさんは俺が弟のハルさんの恋人だから優しくしてくれてるだけだよ」 ソウさんの誤解を解きたくて発した言葉に直ぐに後悔した。 「なんだあ~つまんない経験済みかあ。先輩の処女奪いたかったなあ。やっぱ、保健室で無理やり奪えば良かった」 ニコニコ顔を崩さないコイツに昔の事を思い出させられたよ。 そーだよ、コイツに保健室で襲われかけたんだ。 先生が来たから助かったけどさ。 クソッ、コイツはあの頃と全く変わってねえ! 「ざけんな楠木!お前とはしねーからな!俺はハルさんとしかしない、楠木も恋人とか居るだろ!」 ビシッと言ってやったぜ! でも、押し倒されてるからなんとも情けないけど。 「恋人居ますよ。」 「だったらこんな事止めておけよ」 「でも、バレなきゃ良いんですよ」 楠木は服の上から身体を弄り始めた。 バレなきゃ良いとか意味分からんーっ! そんなんダメだろ! 「お前、ふざけんなっ!」 そんな怒る言葉さえも楠木には通じないみたいで、服の上から乳首を触ってくる。 親指で押さえつけたり、指先2本でつまんだり、 「さわんなってば」 俺はジタバタしながら楠木から逃れようとするが、体重をかけられ、しかも俺の足の間に膝を入れて股間をグリグリとおしてくるやんけ! 「やっあぁん」 やめろ! 今のはやめろ!って言いたかったのだ。 決して感じたりはしていない! 「先輩ーっやばい、可愛い」 楠木は俺が出した声に興奮してきやがった。 「はなせっ、股間グリグリすんなっ」 「どうして?気持ち良さそうなのに?」 楠木はそう言って俺の耳朶を軽く噛んだり、吸ったりを繰り返す。 「んんっ、やあっ……」 断じて感じてないし、気持ち良くもない! 俺は身体をくねらせて楠木のエロエロ攻撃を交わそうとする。 「先輩感じてて可愛い。腰……エロく動いていますよ」 「んな、わけあるかい!いい加減にしろボケッ」 楠木は怒る俺を無視して耳朶やら首筋やら舐めてくるんだよ、コイツ止める気ねえな! 股間は相変わらずグリグリ攻められて、乳首も弄られて………俺、何やってんだ? 「もっと気持ち良くしてあげますね。先輩ってMでしたよね?乱暴にされるの好きでしょ?」 好きでしょ?って聞かれてウンって言うわけもなく、 「大声出すぞ!ソウさん来たらお前クビになるぞ」 子供みたいな脅し。 「社長も参加しちゃうんじゃないですか?3Pとか、どうです?」 楠木は力を込めて俺の手首を握り直す。 くそっ! 脅しきかないーっ! 「あー、もう!何でこんな事してんだよ、バレなきゃ良いとかそんなレベルじゃないだろ、恋人がかわいそうだろーがっ」 俺は身体全部で抵抗中! でも、コイツって空手だか柔道だかやってたんだよな。 俺もスポーツやってたけど、格闘技やっているヤツとは力の差が有りすぎ! 「俺はかわいそうじゃないんですか?」 「はい?」 ニコニコした顔から真面目顔の楠木。 「ずっと先輩に片思いしていた俺はかわいそうじゃないんですか?」 真顔から泣きそうな顔になる楠木。

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