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逢いたいが情、見たいが病 6話

「何、キョトンとした顔してんですか?ほーんと、どうしようもないくらいに無防備ですね」 そんな、 そんな事言われても、全く気づいていなかった。 「俺が先回りしてボコッてたんです。まあ、女生徒は流石にボコれないから脅しましたけどね」 ニコッと笑う楠木。 「なあ、マジで?」 「マジです!先輩守る為に俺は格闘技頑張ったんですよ。褒めて欲しいくらいです」 マジかぁ……、 「な、何かマジでごめん」 「何がごめんなんですか?」 「いや、その知らなかったし、…格闘技って趣味でやってんのかと」 俺は急にシュンとなってしまった。 「男なら好きな人守りたいじゃないですか?」 「いや、俺も男だけど?」 その言葉に楠木は笑い出す。 「そんな、笑うなよ。ごめん、そしてありがとう」 男に守られてたのはちょい恥ずかしいけど、楠木はガキだったくせに、変な所で男だったんだと知った。 「先輩」 じっーっと楠木に見つめられる。 「はい?」 「可愛いです」 楠木は俺を抱きしめてきた。 「おわっ、ばか!」 そう、コーヒーごと。 いきなりだったから、俺はコーヒーをかぶる羽目に。 「あ~すみませんっ、早くこっちに」 楠木は俺の腕を引っ張り、水場がある部屋に連れて来た。 楠木は凄く焦った顔。 まあ、わざとじゃないし、怒らないでおく。 「先輩、上脱いで下さいシミになるし、火傷してないですか?」 シミ? あ、それはヤバい! 俺はあまり服を買わない(本当は美沙に趣味じゃない服を買われて困っている) 慌てて脱いだ。 「じゃあ、火傷…」 楠木は俺の身体を見つめて黙った。 えっ?火傷、してんの? 自分の身体を見ると、 あっ……、 やばい~ハルさんが付けたキスマークが。 楠木が見ていたのはキスマーク。 俺の身体にたくさんあるハルさんのキスマーク。 思わず脱いだシャツで隠そうとするが、楠木に奪われた。 「洗います」 楠木はそう言って服を水につけて洗い出す。 楠木、急に黙っちゃったよ。 続く沈黙。 いや、そんな長くはないんだけど、楠木はお喋りだったから、沈黙なんて経験が無かったからかも知れない。 「……楠木、何か喋らない?」 「……」 無言な楠木。 えーーっ、俺、何かした? 「くしゅんっ」 そんな緊迫した空気の中、くしゃみしちゃう俺って…何なん? つーか、何か着る物が欲しい。 なんて思っていると、フワリと上着をかけられた。 「楠木…」 楠木が上着を脱いでかけてくれた。 「風邪引くと彼氏に看病されちゃうのは妬けちゃうんで」 なんて言う楠木に軽く頭を下げる。 でも、くしゃみのお陰で楠木が喋ってくれた。 「あ~あ、」 そして、ため息も吐く楠木。 「ちぇ、彼氏とセックスした証拠を見せられると思わなかったです」 「ぶはっ」 思わず吹き出す俺。 そして顔が一気に熱くなる。 「あ~何すか、その真っ赤になってテレる仕草は?襲って欲しいんですか?」 「ば、ばか、何言って」 「テンパってる姿も可愛いけど、俺以外の男との情事を思い出しての事でしょ?」 「情事とか言うなあーっ」 俺はハルさんとの激しい行為を思い出して更に顔を熱くする。 「彼氏さんはセックス上手いですか?」 突然の質問に俺はアタフタ、 「満足させてくれます?」 「楠木、違う話しよう!なっ?」 真顔で聞いてくる楠木に必死で頼む俺。 「先輩が何か話しようって言ったんですけど?」 「いや、エロトークじゃなくてさ、ほら、高校ぶりに会ったから何してた?とかあんじゃん?」 慌てて話をそらしてみても、 「じゃあ、先輩はいつから男と寝るようになったんですか?」 なんて返ってくるし、 「俺の話は良いから楠木はいつからこの会社に?」 って話をまたそらしても、 「先輩と彼氏さんの話を聞きたいです。それだけキスマークつけてるんだから激しいんでしょ?先輩がもちろん受けですよね?あ、攻めでも羨ましいだけですけど、」 「あー、もう、俺向こうに行ってるから」 質問攻めに逃げる俺。 言えるわけないじゃん! ハルさんと俺のセックスとか……それに俺、途中で記憶無くなるしさ。

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