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急いでは事を仕損じる 8話

「あら?なんだかんだでケイちゃんの事、気になるのね、それとも元妻が他の男とヤッたのか気になるのかしら?」 あ、しまった……この場合は美沙が他の男とを…気にしなければいけなかったのか? そんな一瞬な考えをも美沙は読んだようで、 「私的にはケイちゃんを気にして欲しいから良いんだけどね、ふふ」 含み笑いが何か怖い。 「いや、別に美沙を気にしない訳じゃないさ、ほら、離婚してるし……なんだその、うん」 何だろう俺って、こんなに日本語が不自由だったのか?上手く言えない。 「だからいいってば、ケイちゃんが誰に抱かれてるかとか気にして佐伯さんと三角関係になって、仁を独り占めしたい佐伯さんに監禁されて、毎日性的イタズラされたりとか夢みたいだし、嫉妬に狂ったケイちゃんが奪いにきて、あ、もう、いっその事3Pやっちゃおうぜ?なんて盛り上がるの期待してるわ」 美沙はハルさんの肩にポンと手を置く。 「性的イタズラなら毎晩してるぜ?さっきもラブホの風呂場でバックでパコパコやったし」 「ぎゃーハルさん」 何を言い出すんだハルさんは! 「ちょっと兄さん詳しく聞かせてちょうだいな」 美沙は仕事で使う小さい録音機をハルさんの前に出す。 「話さなくていい!ハルさん、行きますよ」 俺は逃げるようにハルさんの手を引っ張り、 ハルさんの部屋前まで逃げた。 ハルさんと美沙は何だか同じ臭いがする…… 「部屋に寄るだろ?」 ハルさんが鍵を出してドアを開けようとした時に、 「仁くん」 と、お兄さんの声。 隣のドアがいつの間にか開いていて、お兄さんがちょこんと顔を出している。 しかも、下着姿で。 お兄さんは色白でハルさんよりは筋肉はない。 って、何、見てんだよ俺は! 「おはようござ、」 います。まで言わないうちにハルさんは俺を引き寄せて、 「ソウ、遅刻すんぞっ」 と言葉をかぶせてきた。 そして、部屋の奧から、 「社長、ほら、ちゃんと服着て」 と楠木の声。 えっ?楠木? 楠木の声にハルさんも興味を示して、俺と一緒にお兄さんの部屋の中をチラ見した。 そこには、 下着姿の楠木が…… 「楠木……」 お兄さんの部屋に何故居る? 何故にお兄さんは下着姿でしかも楠木が服を着せようとしているのだろう? 「先輩」 楠木は俺を見た。 何しているんだ?って聞く前に、 「あ~、悪いなソウ、邪魔して」 ハルさんがニヤニヤしながらそんな事を言う。 そして、俺の手を引っ張り部屋の中へ。 「あれがソウの男か」 「へ?」 ニヤニヤ笑うハルさんが言っている意味が分からない。 「アイツだろ?昨日、ソウとヤッてた奴。それでムラムラして俺をラブホに連れ込んだ」 きょとん。 何だソレ? 昨日は……、楠木に無理やりっ……。 あっ、 ああっ、やばい! 記憶無かったんだ! 無理やり突っ込まれてる感触が蘇り悶えだす俺。 「なんだなんだ?思い出したのかソウとアイツのヤッてる所。ムラムラしてきたなら処理してやるよ」 悶える俺を後ろから抱きしめてきたハルさん。 やばい! 楠木に聞かないと……… ******* 妄想特急お兄さんside 仁くん……朝から可愛いなあ。 何たって俺は仁くんの気配を感じて着替え途中に玄関へと急いだ。 案の定……仁くんは居た。 おはよう……なんて言葉まで聞けた。 バカハルに邪魔されたけど。 仁くんの腰に手まで回してさ、 本当、バカハルだ! でも、いいんだ。 きっと、仁くんは俺を選ぶから。 イヤだけど、一秒たりとも触らせたくないけど、我慢してやるよハル。 なんせ俺はお兄ちゃんだからな。 ふふっ。 「社長、今のが社長の弟ですか?」 俺の楽しい想像を邪魔する楠木。 コイツも油断ならない。 襲われなかったけどさ、まだ用心しなきゃな。 「そうだけど?」 「ふーん、社長と正反対っぽいですね。男くさい感じ……先輩のタイプってあんな感じなのか」 腕を組、考える楠木。 ああ、訂正したいなあ。 仁くんの本当のタイプは俺だって。

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