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急いでは事を仕損じる。 10話

「何やってんの?」 「別に」 素っ気なく返事をすると先生は抱き付いている僕の手をぎゅっと握り、自分の腰から離す。 そして、僕の手を握ったままにくるりと体勢を変えた。 向かい合う先生と僕。 「何かあった?」 「別に」 「じゃあ、誘ってるとか?」 誘ってるわけじゃない。ケイナの事を考えていたら人恋しくなってしまった。 だって先生はケイナに少し似ているし、 それに……ケイナにイタズラとかしていたんじゃないかって疑っている僕は何とか聞き出したい。 色仕掛けに乗るかは分からないけど。 先生は黙っている僕をお姫様抱っこをして歩き出す。 そして、 ドサッとベッドに降ろされた。 顔を上げた瞬間に、 唇が重なってきた。 ………っ、 直ぐに侵入してきた先生の舌。 ぐちゅり、 くちゅ、くちゅ、 先生は僕の上に体重をかけてきて、 舌を入れては出すを繰り返し、角度を変えながら何度も、何度も深いキスをしてくる。 僕は無抵抗。 ただ、絡まる舌に応えるように自分も先生の舌に絡ませる。 昨日より激しい気がする。 先生の手は僕の身体を弄ってきて、 シャツをたくしあげると、先生は唇を離し、 チュッと僕の胸に唇を何度も押し付けてきた。 乳首を吸われる。 んっ、 僕の息はとっくに荒くなっていて、愛撫される度に声が漏れる。 先生の唇はへそまで降りていて、 先生が下を脱がす覚悟をしている僕の期待を裏切るように、 「はい、ここまで……何かあったんだろ?」 と先生は行為を止めた。 「ないよ。続きしてよ」 「言ったら続きしてやる」 「ケチ」 僕はそう言って起き上がると、 着ている服を自分で脱ぎ出す。 「マヨ、お前なあ」 呆れたように服を脱ぐ僕の手を止める。 「いいじゃん、僕、欲求不満なんだもん、しようよ。先生が挿れていいからさ」 上目使いで先生を見る。 僕の誘いに乗らなかった奴はいない。 「好きな奴に振られたか?」 ズキンときた。 「図星か」 その言葉に僕は答えない。 「やけを起こしたってわけか」 「違う……」 告白さえしてないのに。 ううん、告白しても答えは分かっている。 やっぱり、振られた事になるのかな? 「違わないんじゃない?」 先生は僕の頭を撫でた。 「でも、違う……告白しても振られるって知ってるから言わないだけ」 「現実が怖い?」 怖い………うん。 怖い。 認めるのが怖い。 ケイナが仁さんを好きだって知っているけど、どこかでは僕を見てくれるんじゃないかって、 ほんのわずかな期待が無くなるのが怖い。 「話してごらん、聞いてあげるから」 優しく微笑む先生に僕はポツリ、ポツリと話し始める。 もちろんケイナの名前は言わない。 でも、ケイナにイタズラしてたかも知れない人に、どうして話をしているのだろう? ああ、そっか……僕にはセフレや金づるはいるけれど、相談を出来る友達が居ないんだ。 要らないって思っていたから。 誰かを今みたいに好きになるなんて思わなかったから。 だから、先生にこんな話をしているのかな? 「なるほどね……エッチの練習だったのが本気で惚れたわけか」 頷く僕。 「全く、最近のガキは身体から入りやがって」 先生は呆れながらも僕の頭を撫でる。 「でも、無理やり相手を抱かなかったのは凄いな」 「……だって、泣くもん」 「マヨも泣きそうだぞ?」 先生は僕を抱き寄せてくれた。 温かい腕。 ケイナはどうして家出したのかな? 先生がイタズラしてたかもって思ったけど、何か違うような?

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