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窮鼠、猫を噛む 18話

えっ?えっ? どうして泣く? 泣きたいのは俺の方だけど…………… 「仁さん、僕の全てを仁さんに捧げたいんです!それじゃなきゃ、恩を返せない」 「ケイ、恩とか言われても分からないし、俺に分かるように説明して」 と、とにかく時間を稼ごう。 マヨとハルさんが戻ってきたら、ケイだって止めてくれるはず。 「仁さん」 ケイは涙をゴシゴシ拭くと、俺から降りた。 よ、 良かった……………ホッとする俺。 ケイは降りた後に寝室から消えた。 あれ? どこに?トイレ? そんな事を考えている俺自身の姿は何とも情けない。 ベッドで縛られてシャツだけで、チンコ丸出し。 縄、解けないかなあ? ゴソゴソと腕を動かしてみるも、解けない。 そうこうしている間にケイが戻ってきた。 「仁さん」 ニコッと微笑むケイ。 そして、また、馬乗りになると、 「思い出して………ください。仁さん、10年前に誘拐された子供を助けたでしょ?」 「えっ?」 ケイに言われた言葉は第三者の事を言っているみたいで、俺はきょとんとなる。 「あの時の仁さんは酔ってましたもんね。凄く強くて、凄く格好良かった。…僕はあの時、仁さんがヒーローに見えました。当時大好きだった、仮面ライダーみたいに」 酔ってた? 10年前? 10年は確かまだ大学生で、飲みに行く度に補導されて嫌だった時期。 あ………ひとつ、思い当たる事が。 酷く酔った次の日、 「お前のおかげで誘拐犯捕まえれたんだぜ」 目を開けた俺にそう言って嬉しそうな顔をした奴がいた。 前に補導されて、それから何となくたまに飲みに行ったり、一時期、世話になってた男性。 「誘拐犯?」 きょとんとする俺に、 「今から仕事行ってくるから、ちゃんと大学行けよ」 そう言って俺の質問を無視して、ソイツは急いだように部屋を出て行った。 そんな事あったような? 「仁さん…思い出せませんよね?でも、僕はあの時からずっと仁さんの事ばかり……10年経ったら抱いてやるって、だから、今……僕は嬉しいんです」 ケイは何かを口に含み、そのまま、口の中のモノをキスで俺の口内へと移してきた。

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