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7話

「本当です!」 ケイ少年が興奮したようにバンッと手をついた拍子に近くのグラスが振動でバランスを崩し、俺があっ、と声を上げると同時に派手な音がしてグラスが割れた。 「すみません」 ケイ少年は慌てて破片を拾おうとするが、 「危ないから座ってて」 ともちろん止めに入ると俺は掃除機を取りに行く。 「動くなよ」 そう言いながら俺は客用のスリッパを履いて掃除機をかける。 「僕も手伝います」 と動いたケイ少年は次の瞬間、 「痛っ」 短く声を上げた。 彼が座る椅子近くに破片があったみたいで俺が振り向くと床にケイ少年の血が流れているじゃないか! やべえ! 俺はケイ少年の傷口を見た。 結構深く切れているようで血がポタポタと彼の足の裏から落ちている。 タオルでぎゅっと縛るとケイ少年を抱き上げた。 ビックリしたように俺を見るケイ少年に、 「病院連れて行ってやるから」 と掃除そっちのけで玄関に向かう。 「おわっ」 玄関のドアがいきなり開いて俺は情けない声を出してしまった。 「何やってんだよお姫様抱っこなんかして」 佐伯さんが袋を2~3個下げて立っていた。 「佐伯さん、丁度良かった車出して!ケイが硝子の破片で怪我して」 ケイ少年の足のタオルはすでに真っ赤に染まっていて、佐伯さんは、 「おう、病院だな」 と俺と一緒に走り出してくれた。 ***** 「ちょ、佐伯さんこの病院止めましょうよ」 佐伯さんが連れて来てくれた病院を見て俺は猛反対する。 「近いし、安いし、早いし、いいだろ?」 「そんなクリーニングか何かの基準みたいなので選ぶの止めて下さい」 「保険なしでも安くしてくれんだぜ、こいよ」 佐伯さんは渋る俺からケイ少年を奪うとサッサと中へ入っていく。 「佐伯さん~」 俺は仕方なく病院へと入った。 シーンと静まる病院内、 「おい!患者だぞ!」 佐伯さんがバカデカい声で叫ぶ。 「ふあ~~い」 力が抜けるような返事と共に爺の医師が顔を出した。 推定年齢100以上じゃね?って感じの爺さんの名前は孫七さん。 7番目の孫だったからの命名。 昔の人ってマジ適当。

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