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第13話
「…実はね、私、ストーカーされているのよ」
ヒソヒソ声で言うママは最近ギャグが上手い。
前はオヤジギャグばかりだったのに!
「あはははっ」
とりあえず笑わないと失礼だよな。
「ちょっと、笑い事じゃないのよ!こっちは怖くて怖くて眠れないのよ」
俺より二周りデカい手のひらを逞しい胸襟の前でクロスさせ、さらに俺より数倍デカい二の腕を掴み震えているのか威嚇しているのか分からないママ。
「………………………………………ギャグ?だよね?」
そうだよね?
「はあ?ギャグなんかじゃないわよ!私、芸人じゃないし」
ぎゃーー、怒り狂うママは、なまはげより怖い。
「ママがストーカーしてる……」
「わけないでしょ!ギャグでも作り話でもないわ!クソガキ、今すぐバックでハアハア言わせるわよ」
ママのド迫力に、
「すみません」
と頭を下げる。
「分かれば良いのよ」
ママはウフフと笑い落ち着きを取り戻す。
「でも、ストーカーなら警察に」
「ダメよ!」
ドカッ
ママが力強く壁を叩き穴をあけた。
ひーーっ
「あらやだ、またやっちゃったわ」
マ、ママ、またって………。
「警察はダメよ、頼りにならないじゃない!ストーカー犯罪で死んじゃった女の子たくさん居るじゃない!かわいそうに……」
確かに警察よりもアナタ本人が誰よりも頼りになりますよ。
そう言いたかった。
「だから仁、私を守ってくれない?」
「…はっ?」
アナタ、アルソッ〇より生きる最強セキュリティーじゃないですか!
なんて口に出来たらなあ。
「はっ?って何よ。」
「いえ、俺より佐伯さんに頼んで下さい。佐伯さん、元警官ですから」
「いや!アイツ、野獣だもん、襲われちゃう」
あああっー誰か助けに来てくれないかなあ~
そう思いながら水を一気に飲んだ。
んっ…………………………………?
「なんじゃ、こりゃーっ」
「あら、良い飲みっぷり」
ママは拍手している。
良い飲みっぷり。
そう、俺が飲んだのは日本酒だった。
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