83 / 326
鬼に金棒 6話
「美沙ちゃんが居るじゃん」
なんとママと佐伯さんの声がかぶった。
「あら?珍しく意見合ったわね」
ママは佐伯さんに握手を求める。
佐伯さん……同意してくれると思ったのにぃ!
「美沙ちゃんケイは襲わないから大丈夫。」
佐伯さんはヒソヒソとそう言って来た。
耳に佐伯さんの息がかかり、くすぐったい。
「ちょ、近い……」
ゾクゾクと身体が震えてしまったじゃないか!
「何、感じてんだよ。お前本当、耳弱いな」
わざと息をかけられ、
「やっ、佐伯さん」
と身体を縮こまらせる。
「私の前でイチャイチャしてんじゃないわよ」
ママは俺の胸ぐらを掴み立たせると、 フンッと鼻で息を吐き、次の瞬間腹に衝撃が来た。
ドスッと鈍い音、目の前が真っ暗になった。
*******
うーん、お腹いたいよう!
ズキズキと痛む腹。
何で痛いんだっけ?
「あ、起きたか?」
佐伯さんの声に目を開けた。
覗き込まれているようで、しかも………俺、どこに居るんだ?
知らない場所に居た。
ソファーに寝ていたみたいで起き上がると下腹部に激痛。
思わず、顔が歪む。
「ノブ、それでも手加減したらしいぜ?」
佐伯さんの言葉に、意識途切れる前にママから腹を殴られた事を思い出した。
ママめ!
「お前があまり愚図るから強制拉致したんだよ」
「は、犯罪じゃないすか?佐伯さん元刑事のくせに犯罪を見逃すんですか?佐伯さんに正義はないんですか!」
腹の痛みに顔を歪ませながら言う俺。
「熱血刑事ドラマみたいな台詞を突如はいても、逃げられんぞ。元刑事でも目の前の犯罪よりも、自分のツケが大事。」
「この外道!」
くそう、逃げれない。
「あ、目覚めました?すみませんパパが」
目を覚ました俺を見つけ、真世は心配そうに側に来た。
「でも、ストーカーは本当なんです」
「うん、本当だったみたいだぜ」
真世の言葉に同意する佐伯さん。
「えっ?」
「マンションの郵便受け荒らされてたんだよな。ノブの所だけ。しかもゴミも漁られててた」
えっ………っ本当だったの?
俺は驚いてしまった。
「でも、もう漁られた後なら今日はもう犯人来ないよね?じゃあ、帰れる」
俺は立ち上がる。
「お前どんだけココに居たくないんだよ」
「襲われるフラグ出てるのに居る意味がわかりません」
佐伯さんを睨む。
「帰るんですか?人が沢山居てくれる方が怖くなくて良いんですけど」
真世がなんだか寂しそうな顔をして俺を見ている。
「パパも帰り遅いし」
そう続けて黙り込んだ。
「真世はお母さんとことか戻れば怖くないんじゃないの?」
俺がそう言うともっと寂しそうな顔をして、
「ママンが再婚して……………居場所ないんです」
ポツリと呟く。
「えっ?新しいお父さんに何かされるの?」
「殴られたりはしないけど、今年に入って赤ちゃんが生まれたから、血の繋がりない僕は除け者なんです。ママンも赤ちゃんが可愛いし、新しいお父さんの親戚も」
涙目になる真世。
彼はまだ中学生だもんなあー、ママンって呼ぶのはいただけないけど。
「パパにその話したら、ここにずっと居なさいって」
「真世はノブに偏見ないんか?まあ、変な言い方で悪いけど」
佐伯さん、アンタはなんでそう直球なんですかーっ!
「ないです。パパはパパです。」
ニコッと笑う真世は本当に可愛くて、なんか良いなあと思った。
「じゃあ、帰ってくるまで居てあげるよ」
つい、そう言ってしまった。
「本当ですか?嬉しい。あの、じゃあ…ご飯食べましょう。僕作ったんで」
そう言ってダイニングに真世は俺達を連れて行ってくれた。
真世は料理が得意みたいで美味そうな料理が並べられている。
「食べて下さい」と促され、俺は遠慮なく料理を食べる!だって、腹減ってるし~
でも佐伯さんは俺が食べているのに「うんこしてくる」とか言い出すし~
もう!
佐伯さんがトイレで頑張っている最中、
「2人が来てくれて凄く嬉しいです」
真世はニコニコして俺に話掛けてくる。
「あの、佐伯さんと仁さん付き合っているんですよね?」
その言葉に俺は飲んでたお茶を吹き出そうになり耐えた。
「お2人がイチャついているの見ましたし」
そして次に咳き込む俺。
ともだちにシェアしよう!