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両手に花 2話

「嫁って何ですか嫁って」 ちょっと聞き捨てならないと興奮気味で言う。 「はいはい、仁くんちょっと黙っていようね。おじちゃんは今、説教中だから」 佐伯さんは俺の頭をぐりぐりと撫で、 「はい、おしおきだからね真世」 と真世の身体をひょいと上げ、横抱きにすると、尻をペシンと叩いた。 「や、やだ、痛い」 真世は尻丸出しで縛られていたから生で叩かれる音が部屋に響く。 子供のおしおきの必殺技、お尻ペンペン。 でも、変態オヤジと美少年だから、なんだか妙にいやらしい。 なんかのプレイみたいだ。 佐伯さんに叩かれた尻は赤くなって、真世は涙目。 「これで勘弁してやる!後はノブに説教くらえ」 そう言うと佐伯さんは真世を縛り上げたヒモを解いてやる。 「説教?パパに言いつけるの?やだ!止めて下さい!もうしないからお願いします」 強気でエロかったガキの姿はすっかりと普通の男の子の姿に戻っている。 「やだね。お前、仁が嫌がっても止めなかっただろ?自分だけお願いを聞いて貰おうなんて甘いだろうが!」 そう突っぱねる佐伯さんに真世はすがるようにお願いをする。 「ノブとちゃんと話合え、それに会話………………ずっと聞かれてんだよね」 佐伯さんはそう言うと部屋のドアを開けた。 そこに立ちすくむママ、あっ、いやパパか………ややこしい! そして、俺も真世もムスコちゃん丸出しと気づく。 真世は慌ててパンツとジーンズを穿き、俺はまだ動けないから佐伯さんがシーツをかけた。 いや、パンツ履かせてよね。 「真世………アンタって子は」 ワナワナ震えるママ(真世パパ) ツカツカ、と真世の前に立ち、腕を振り上げた。 殴られると思った真世はギュッと目を瞑る。 勿論、俺も真世が殴られると思った。 でも、 ママ(真世パパ)はギュッと真世を抱きしめた。 「ごめんね真世。寂しい思いさせて!私がこんなになっちゃったから、だから…悪いのは私!子供をちゃんと見てなかった私の罪よ。真世ごめんね」 ママは気持ち良いくらいの泣きっぷり! 「ぱぱ………ごめんなさい。」 真世も泣きながら謝る。 抱き合いながら泣く親子。お互いに謝り合う。 佐伯さんは俺を見て、ヤレヤレとため息をつく。 そして、縛られた手を解いてくれた佐伯さん。 「まだ身体動かねえーの?」 佐伯さんの質問に頷く。 「あの、パンツとジーンズ穿かせて下さい」 恥ずかしいけど、下半身丸出しで帰る方が恥ずかしい。 「今、シーツとったらノブに襲われるぞ」 「あっ…」 確かに! でも、どうやって帰るんだよ俺。 まだ動けないし。 そんな事を考えていると、佐伯さんが俺をお姫様抱っこして持ち上げた。もちろんシーツごと。 「とりあえず帰りますか」 俺を見てニッコリする佐伯さん。 お姫様抱っことか不本意だけど、仕方ないよね。 なんて自分に言い聞かす。 「待って」 真世が俺らに呼びかける。 「佐伯さんいつから起きてたの?薬………飲んだでしょ?」 あっそーだ! それ疑問!ママもいつから居た? 「俺、薬飲んでねーもん」 「はっ?」 真世と俺の声がハモった。 「俺ね、どこに行くにもあまり親しくないヤツが出す飲み物や食べ物は食べないんだよ。まあ、職業柄?腹痛いって言った俺に出した薬も思いっきり睡眠薬だったしな、薬に刻んである記号で種類が分かるよ、まあ、真世は俺が元刑事って知らないからなあ」 その答えに真世はなる程と納得したような顔をした。 「お茶飲む振りしてスープの中入れたよ」 確かに真世が出した料理にスープがあった。 「まあ、初めから真世が怪しいって事くらい分かってたしな。動機と証拠欲しくて飲んだ振りしたんだ、ノブに連絡したのはメールでだよ。睡眠薬でソファーで寝た振りしながらずっとメールしてた。真世はターゲットの仁に夢中だし、俺は睡眠薬飲んでると思い込んでいるからノーマークだからな」 「確かに……佐伯さんはノーマークでした。薬の種類知ってるなんて……僕が知ってる大人達は疑いもなく胃薬とか頭痛薬って言えば信じて飲んでたから」 フフッと笑う真世。 「それはお前を信じてるから飲むんだよ!俺はお前を信じてない。その差だよ」 「そうですか……僕を信じてただけなんですね、バカだと思ってました」 真世はそう言って寂しく笑った。

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