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宵越しの金は持たぬ 2話

「むうっ、なんかズルい佐伯さんばっかり仁さん独り占めして!」 ケイはプクッとホッペを膨らませる。 「もうね、ケイちゃんずっとヤキモチ妬いてたのよねえ。アンタも罪よね」 美沙はニヤニヤしてやがる。 そして、ケイは俺の服の裾をぎゅっと握っていて、寂しかったのかな?なんて思った。 ケイの頭にはまだ猫耳カチューシャ。 それをツンツンとつついてみた。 「これ、酔った仁さんが似合って可愛いって言ってくれたから嬉しくて」 ニコッと笑うケイ。 確かに似合ってるんだよなあ。 ヒゲとか描いたら似合いそう。 「仁さん、今日はずっと居て下さい」 ケイはぎゅっと腕にしがみつく。 「えっ?」 「ダメですか?」 うるるっと涙目。 「あ、こら、泣くな」 「居て下さい」 ぎゅぎゅっキツくしがみつかれ、俺は頷いた。 ケイは嬉しそうに微笑む。 なんだか、小さい子供が親にいかないで!と言ってダダこねているみたいで、可愛いと思った。 まあ、今日は仕事あまりないしな。 それにケイが嬉しそうだから良いかあ。 「ねえ、ケイちゃん抜糸連れて行かないと」 美沙の言葉で思い出した! つーか、俺が寝込んでた間ケイは病院に行ってたのか? 「私が連れて行ってたわよ」 あっ、なるほど。 美沙は腐女子で金に汚いけど、面倒見が良い。 「佐伯さんに車借りてきてよ。私の車は修理に出してんのよ」 「いいよ」 方向を変えようとした瞬間。 「だめ」 とケイが腰にしがみついてきた。 「ちょ、どうした?」 「佐伯さんとこ行っちゃダメ」 ケイは力を込める。 「車借りるだけだよ。抜糸しないと」 ガシッとしがみつくケイを引き剥がそうとするが、離れない。 「病院行かない」 「なに?金の心配なら大丈夫だよ」 前にケイがお金の心配をしていたのを思い出した。 「行かないからいいの!」 なんだか、様子がおかしいケイ。 「こら、どうした?」 困った俺は美沙に助けを求める。 「仁も鈍感よねえ」 美沙は俺の首筋をつつく。 はっ、キスマーク! つつかれた場所にはキスマークがある。 「これもあるけど、ケイちゃんは足治るの嫌なんだって」 「はい?」 声がつい裏返った。 「足治るとロフトで寝なきゃいけないし、何かと仁が世話焼いてたから、それが無くなるのが嫌なのよ」 美沙にそう言われてケイを見る。 顔は見えないけど、しがみつく腕に力が入るから、そうなのか?と思った。 「ケイ、病院行くぞ」 俺はひょいっとケイを抱き上げた。 「やだやだ仁さんのバカ」 涙目で訴えるケイは抱き上げられたまま暴れる。 「あ~もう、暴れるな!それに……ロフトで寝なくてもいいから」 俺がそう言うとケイはピタリと暴れるのを止めた。 「本当?」 俺を見つめるケイは涙目から笑顔に変わった。 「だから、病院に行こう」 「はい」 ケイは素直に返事をする。 ******* ハルさんに車を借りて病院へ行った。 プルプル孫七じいちゃんに抜糸して貰ったケイは俺に抱っこをせがむ。 まあ、抜糸したばかりだからなあ。と抱っこして車まで戻る。 助手席に乗せようとしたのを何故か拒否られた。 後部座席がいい!なんて言い張るから、後ろのドアを開けて乗せた。 瞬間、中に引っ張られた。 「おわっ」 反動でケイを押し倒す形になった。 両手で俺を引き寄せたケイは首筋に吸い付く。 「こら、ケイ!」 驚いてケイを引き剥がす。 「そのキスマークつけたの佐伯さんですよね!」 ケイはジッと俺を見る。 「佐伯さんに負けませんから!僕だって仁さんを気持ち良く出来ます!」 えーーっと、 もう、どうしたら良いのだろう? 「佐伯さんが好きですか?」 言葉を詰まらせる質問。 「佐伯さんの方が大人でエッチ上手いかもしれないけど、僕だって上手になります!それに酔った仁さんは僕に俺以外のチンコ入れさせるなって言いました!だから仁さんも僕以外に入れないでください!」 めちゃめちゃ真顔のケイ。 ちょ、ちょ、お前すげえ事を病院の駐車場で言ってんの分かってる? しかも声でかい。 「ここなら佐伯さん居ませんから、ここで僕を抱いて下さい」 どひゃーーん 何言い出すんだケイーっ!

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