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宵越しの金は持たぬ 3話

いやいやいや、 どう考えても無理だろう! だって、昼間だよ? 駐車場だよ? 「ケイ、落ち着こう!なっ?」 なるべく刺激しないように声を掛ける。 でも、ケイは俺に抱きついて、しかも気付いたら押し倒されていた。 俺の上に馬乗りになり、 「僕だって、佐伯さんに負けません」 そう言って俺に唇を重ねてきた。 やわらかい、フニャッとした感触。 ケイの舌が入ってきた。 佐伯さんとは違うぎこちないキス。 ケイの手は俺の股間に……………。 ちょっと待ったーっ! ケイの身体ごと、起き上がって、唇を俺から離す。 「や、仁さん抵抗しないで下さい」 俺に抱っこされたまま涙目で訴える。 「冷静になろう!ここ駐車場!後ろ見ろ」 俺の言葉にケイは振り向く。 「きゃーっ」 ケイが悲鳴を上げたのは窓ガラスに孫七じいちゃんが張り付いていたから。 なんか、視線感じたんだよねえ。 「なっ?ダメだって言っただろ?」 俺がそう言うとケイは渋々諦めてくれた。 「もうイチャイチャは終わりか?」 後部座席から出た俺に孫七じいちゃんは残念そうに言う。 「もう終わりですから、病院戻って」 病院へと追い払うと、孫七じいちゃんは、 「病室のベッド貸してやってもいいぞ」 と言った。 「本当ですか?」 そう言ったのは俺じゃないからな! ケイが身を乗り出して言った言葉。 「ケイやめなさい」 冷静に突っ込みを入れる俺。 「嫌です!だってアパート戻ったら佐伯さん居るじゃないですか!そしたら邪魔されます」 お前………… アパートでやるつもりだったのかよ。 「酔ったら抱くくせに、酔ってないと抱かないのはどうしてですか?」 ケイはちょい感情的にそう言って泣き出した。 「仁よ、やっぱ病室一個貸したる。落ち着かせてやった方がええよ」 孫七じいちゃんがいつになく真顔で言うから仕方なく、ケイを連れて病院へ戻った。 病室でケイと2人。 なかなか泣き止んでくれないケイ。 なんだか犬のおまわりさんの歌を思い出す。 泣いてばかりいる子猫ちゃんがケイ。 困ってしまった犬のおまわりさんが俺。 でも、実際にケイは迷子の子猫ちゃんだもんなあ。 23歳と言い張るくせに言動や言い分は子供。 もちろん見た目も。 どう見ても真世と同世代。 「ケイ、お前さ……本名は本当にケイなのか?」 俺の質問にちょっと反応するが返事はない。 「どこに住んでたとかさ………色々気になるんだよね」 その質問にも反応なし。 困ったよなあ。 ケイには内緒で色々調べてるんだけど、何も分からないし。 もちろんハルさんにも頼んでいる。 もしかしたら家出少年かも知れないしさ。 「……………くれます?」 か細い声でケイが何かを言ったので、 「ケイ、聞こえないからもうちょっと大きな声で」 と言ってみると、顔を上げて俺を見た。 「チンコ舐めさせてくれたら本名言います。」 ……………………………………えっーーと? 今なんて? 「えっ?」 もう一度聞いてみる。 「仁さんのおちんちん舐めさせてくれたら本名教えます」 ええっと、 いま、聞き間違いじゃなかったら、おちんちん舐めさせてくれたらとか言ったよね? んっ?俺の耳、正常だよね? 「僕、ちゃんと上手くやりますから」 ケイはそう言うと俺の目の前にひざまずいた。 「ケイ、お前何言って」 「仁さん足開いて」 俺を見上げるケイ。 「待て、落ち着こう!」 「本名知りたいんでしょ?」 ケイは俺の太ももに手を置く。 「知りたいけどさ!チンコはだめ!なっ、他の事なら、えっーーと?チュウは?チュウとか」 ケイを落ち着かせるつもりなのに自分が一番落ち着かない。 「キスしてくれるんですか?」 ケイは目を輝かせた。 うっ、しまったあ!俺はなんて事を! ひざまずいたケイが立ち上がり俺に抱きついてきた。 ほっぺとかじゃダメかな? なんて考えるけど、抱き付いたケイを抱えたままベッドに倒れる。

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