108 / 326

弱り目に祟り目

リア充な弟と、 そうじゃない俺。 目の前の可愛らしい男はハルが大好きだと全身で語っているし。 「高い酒ジャンジャン持って来て下さい」 「やだあ、中身までイケメンねソウちゃんは」 アンズママはニコニコ。 「なあ、どうしたんだよ?」 「何が?」 「お前、あまり酒飲まないやろ?」 「まあ……やけ酒たい」 俺は注がれた酒を一気に飲む。 「まあ、いい飲みっぷり」 アンズママが手を叩いて喜んでいる。 「ママも飲んで」 アンズママに酒を注ぎ、ハルや仁にも、 ガンガン飲みだす俺に、 「もう、やめとけ。お前飲み過ぎばい」 ハルが止める。 「せからしか!なんね?オイは九州男児ぞ!酒なんかに負けん」 「はいはい。すでに酔ってるやろ?もうやめとけ」 酒を奪うハル。 「なーんや!リア充!こげん可愛いか恋人のおってさ、貧乏でも良か男でもなくても好いとう、言われてるけんってさ、何や、こっちは終わったっていうとにさ」 「何語かしら?」 アンズママがキョトン。ついでに仁も。 「博多くさ!」 「はいはい。すみませんね。通訳するなら、リア充な俺が羨ましいとさ、何故なら彼女と別れたから」 「まあ、そんな意味が込められてたのね。かわいそう。別れちゃったの?原因は?」 ハルの説明で理解したアンズママが優しく語りかけてくる。 「勃起しなくなったから」 俺の発言に3人はシンッとなる。 「彼女からさ、役立たずとか言われたったい!」 俺はそう言ってテーブルに顔を伏せる。 「なんか、お気の毒」 アンズママがデカい手で俺の頭をワシワシ撫でてくれた。 「何で起たなくなったん?」 とハル。 「そいは……………………………ここでは言わん」 言えるわけがない。 「言えよ。力になれるかも知れないし、知り合いに医者も居るし、弁護士もいるし、それに俺と仁は探偵だ」 とハル。 そう、ハルには助けてもらいたくてここに来たんだもんなあ。 「俺さ、部下と一緒にここら辺りでちょっと前に飲んでたんだ。その時に遊び半分で風俗店に入ったんだ。その時の……………その、えっと、」 俺はちょっと躊躇してしまう。 何故なら人生初体験をしてしまったから。 「あ~、もしかして、風俗嬢に惚れちゃった?」 アンズママ、惜しい。 「SMプレイの店だったんだ。目隠しされて縛られたんだ。でも、縛られた後から違う人が来てその人のプレイに………………俺、感じまくって、それ以来、彼女では起たなくなってさ」 「あーね」 3人は頷く。 「じゃあ、SMに目覚めちゃったわけね。」 アンズママの問い掛けに俺は黙る。 「いやーん、可愛い。照れちゃって」 つんつんとアンズママがつついてくるけど、 「分からんったい」 「なんがね?」 ハルの問い掛け、 「SM嬢じゃなくって、男だったわけよ。」 「はい?」 トリプルでハモられた。 「初めは女の子だったのに途中で男に代わったったいね。そいで、そいつにメチャクチャ………………その、後ろから…………つか、つかっ……………やー無理!言えん」 俺はその時の事を思い出して顔が火照った。 初めてだった。 そう、俺はその男にケツを掘られたのだ。 凄いテクニックで、何回イッたか分からない。 「まあ、初体験したのね。お赤飯出してあげるわね」 アンズママがイソイソと消えて行った。 あー、 そうやね。雰囲気でその後は想像つくよね? 「へえ、ソウも男体験したわけだ。で、あれか?男にしか反応しなくなったって?」 ハルの言葉にガツンと頭を殴られた。 今まで、考えたくなかった事。 俺はSMに目覚めちゃったんだと思いたかった! 男に目覚めちゃった……………んじゃないよね? 「ソウはそのSM野郎んとこに通ってたりすんの?」 俺は首を振る。 「あの後、行ってみたんだ。そしたら、その日だけの臨時だったって」 何故かしょんぼりとしてしまう俺。 「名前とか聞いてみたのかよ?」 「どんなに聞いてもプライベートは教えられないって」 「そっか。まあ、風俗ってそうだよな。客に持っていかれたら損害になるからさ」 ハルの言葉に更にしょんぼり。 もう会えないのかなあ。 せめて、顔とか見たかったなあ。

ともだちにシェアしよう!