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弱り目に祟り目
リア充な弟と、 そうじゃない俺。
目の前の可愛らしい男はハルが大好きだと全身で語っているし。
「高い酒ジャンジャン持って来て下さい」
「やだあ、中身までイケメンねソウちゃんは」
アンズママはニコニコ。
「なあ、どうしたんだよ?」
「何が?」
「お前、あまり酒飲まないやろ?」
「まあ……やけ酒たい」
俺は注がれた酒を一気に飲む。
「まあ、いい飲みっぷり」
アンズママが手を叩いて喜んでいる。
「ママも飲んで」
アンズママに酒を注ぎ、ハルや仁にも、
ガンガン飲みだす俺に、
「もう、やめとけ。お前飲み過ぎばい」
ハルが止める。
「せからしか!なんね?オイは九州男児ぞ!酒なんかに負けん」
「はいはい。すでに酔ってるやろ?もうやめとけ」
酒を奪うハル。
「なーんや!リア充!こげん可愛いか恋人のおってさ、貧乏でも良か男でもなくても好いとう、言われてるけんってさ、何や、こっちは終わったっていうとにさ」
「何語かしら?」
アンズママがキョトン。ついでに仁も。
「博多くさ!」
「はいはい。すみませんね。通訳するなら、リア充な俺が羨ましいとさ、何故なら彼女と別れたから」
「まあ、そんな意味が込められてたのね。かわいそう。別れちゃったの?原因は?」
ハルの説明で理解したアンズママが優しく語りかけてくる。
「勃起しなくなったから」
俺の発言に3人はシンッとなる。
「彼女からさ、役立たずとか言われたったい!」
俺はそう言ってテーブルに顔を伏せる。
「なんか、お気の毒」
アンズママがデカい手で俺の頭をワシワシ撫でてくれた。
「何で起たなくなったん?」
とハル。
「そいは……………………………ここでは言わん」
言えるわけがない。
「言えよ。力になれるかも知れないし、知り合いに医者も居るし、弁護士もいるし、それに俺と仁は探偵だ」
とハル。
そう、ハルには助けてもらいたくてここに来たんだもんなあ。
「俺さ、部下と一緒にここら辺りでちょっと前に飲んでたんだ。その時に遊び半分で風俗店に入ったんだ。その時の……………その、えっと、」
俺はちょっと躊躇してしまう。
何故なら人生初体験をしてしまったから。
「あ~、もしかして、風俗嬢に惚れちゃった?」
アンズママ、惜しい。
「SMプレイの店だったんだ。目隠しされて縛られたんだ。でも、縛られた後から違う人が来てその人のプレイに………………俺、感じまくって、それ以来、彼女では起たなくなってさ」
「あーね」
3人は頷く。
「じゃあ、SMに目覚めちゃったわけね。」
アンズママの問い掛けに俺は黙る。
「いやーん、可愛い。照れちゃって」
つんつんとアンズママがつついてくるけど、
「分からんったい」
「なんがね?」
ハルの問い掛け、
「SM嬢じゃなくって、男だったわけよ。」
「はい?」
トリプルでハモられた。
「初めは女の子だったのに途中で男に代わったったいね。そいで、そいつにメチャクチャ………………その、後ろから…………つか、つかっ……………やー無理!言えん」
俺はその時の事を思い出して顔が火照った。
初めてだった。
そう、俺はその男にケツを掘られたのだ。
凄いテクニックで、何回イッたか分からない。
「まあ、初体験したのね。お赤飯出してあげるわね」
アンズママがイソイソと消えて行った。
あー、
そうやね。雰囲気でその後は想像つくよね?
「へえ、ソウも男体験したわけだ。で、あれか?男にしか反応しなくなったって?」
ハルの言葉にガツンと頭を殴られた。
今まで、考えたくなかった事。
俺はSMに目覚めちゃったんだと思いたかった!
男に目覚めちゃった……………んじゃないよね?
「ソウはそのSM野郎んとこに通ってたりすんの?」
俺は首を振る。
「あの後、行ってみたんだ。そしたら、その日だけの臨時だったって」
何故かしょんぼりとしてしまう俺。
「名前とか聞いてみたのかよ?」
「どんなに聞いてもプライベートは教えられないって」
「そっか。まあ、風俗ってそうだよな。客に持っていかれたら損害になるからさ」
ハルの言葉に更にしょんぼり。
もう会えないのかなあ。
せめて、顔とか見たかったなあ。
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