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「エルマー!子ができた!アロンダートはサジの子にする!いいだろう?」 「俺は構わねえけど、勝手に第二王子を養子にしていいんか。」 ぎゅむりと気絶した王子の頭を抱きしめてご機嫌なサジの様子に、エルマーが至極真っ当なことを言う。やはりこの男に期待をするだけ無駄だった。 サジは美しい王子の顔にそっと唇を滑らせると、目尻についた涙を舐めとる。 その光景とサジの言葉に、悲鳴を上げたのはトッドたちだった。 「い、良いわけないでしょう!?そんな、突然王族を辞めるだなんて!」 「そ、そ、そうですよ!暗殺されたならまだしも、無茶がすぎる!」 「何を言う。方法ならある。まあお前らはひとまずサジに任せておけ。アロンダートはサジが治す。」 訝しげなトッドとアランにエルマーが苦笑いをする。なんとなくだが、サジが何をするのかわかってしまったのだ。 「ちょっと出てけお前ら。見たくねえだろ他人の性交なんて。」 「おや、やはり話がわかるなエルマー。うふふ、魔力を分け与えるにはこれしかないからなあ。」 所謂匂い付け、マーキングだ。 サジのものと言うことをわからせる為に、これからサジは気絶しているアロンダートにいやらしいことをする。 「ま、まって!!殿下はまだ閨教育だってされてないのよ!?」 「おやまあ、初物か。うふふ、それは都合がいい。美丈夫の童貞はさぞ甘美だろうよ。」 「ったく、早く済ませろよ。隣りにいるから防音張っとけ。」 「エルマー!?何肯定してくれちゃってんのよ!!許されるわけ無いじゃな、ちょ、押さないでよ!」 エルマーはアランとトッドをぐいぐいと押しやりながら、続き間になっている隣の部屋へと消えていく。 否定はしない。それが必要だからやるのだろう。サジはたしかにクソビッチだが、あの王子の様子を見て適切に現状を理解して対処したのだ。 サジのあの時の手腕は見事だった。やはり伊達に名前持ちとして生きていたわけではなかったらしい。 それに、サジの、魔力は豊かだ。エルマーから見てもわかる、転化して暴走した王子の身はぎりぎりだ。治癒も素肌を通せばよりよく効く。 「死なねえようにすんだ。お前らは俺とここで留守番な。」 エルマーがチラリとサジをみる。そっとベッドにアロンダートを横たえたサジの表情は、長い髪に隠れて見えなかった。 アロンダートは、まるで水の上に揺蕩うような心地のいい感覚に身を任せていた。 なんだかとても、疲れてしまったのだ。 ある日、いつのまにか部屋のテーブルの上に置かれていたオルゴールのような形をしたジュエリーケース。 寝覚めに水でも飲もうかとして振り向くと、それはあった。 華美なものはない。第二王子という肩書きはあったが、今まで与えられた献上品は仕分けされ、危なくないもののみアランが運んできていた。 だからその天鵞絨の箱を見たときに、寝ている間にアランが置いたのかと思っていたのだ。 触れようとして、かすかに魔力を帯びていたことに気づいた。なんだか開けないほうが良い気がして、アランが戻ってきたら返すようにと伝えよう。そう決めて、目を逸らしたときだった。 ふしゅ、と間抜けな空気の抜ける音がして、なんだと思った瞬間。寒気と生ぬるい風、そして不躾に身体にまとわりつく不快な感覚に、アロンダートは目を見開いた。 そこからはもう、お察しだ。 ぶっ倒れて三日三晩魘された。流石にもうどうにかせねばと思ったのだが、生命の危機に身体が反応したらしい。自分の内側に押し込めていた魔力が爆発し呪いは弾かれ消えたものの、今度はどうやって戻ればいいのかわからない。 アランもトッドも魔女探しに二人して飛び出していったので、この醜い姿がアロンダートだとは思わないだろう。 痛みにのたうち回って大きな音を立てたのに、誰も駆けつけてはくれない。もうだめだと思ったとき、情けなく声を上げて泣いた。 「アロンダート」 そうだ、この声だ。 この声が助けてくれたのだ。 「アロンダートよ。」 耳心地のよい、アルトで少し掠れた声。 あのときの不快な感覚とは違う、なんだか心地よいような気分だ。腹の中側から優しく広がる波紋のように、柔らかな何かが包み込んでくる。 手のひらに細い指が絡まって、指先へと口付けられる。ぴくりと手が反応すると、そっと唇に柔らかいものが触れた。 これは、なんだ。 「……、」 ゆっくりと瞼を開く。夢を、まだ見ているのだろうか。 アロンダートを抱きしめてくれた人が、柔らかな色合いの髪の毛でかこう様にして見下ろしてくる。 まるで唇が触れてしまいそうな距離だなと、うっとりとその美しい顔を見つめていると、聖母のようにきれいに微笑まれた。 「アロンダートよ、おきておくれ。」 「…ラブラドライトの、瞳…」 灰色の不思議な虹彩を放つ2つの宝石に、ぽろりと素直な言葉がこぼれる。 美しい人は未だ寝惚けているアロンダートの言葉に目を丸くすると、小さく吹き出す。肩口に顔を埋められ、クスクスと楽しそうに笑う様子に、アロンダートもそのサラサラの髪の質感を楽しむかのように擦り寄った。 「ラブラドライトか、ふふ、そんなこと初めて言われたぞ。サジの瞳は死者の目と言われているのに、まったく愉快な男である。」 「そんなことはない、…貴方の瞳は、美しい…」 そっと髪に触れて、頭を撫でる。この美しい人が死者の瞳など、ありえない。ラブラドライトの瞳が細まる。長いまつ毛に縁取られた宝石は、惹かれるものがある。 「アロンダートよ、サジの愛しい子。」 「サジ、様」 「お前はサジのものだ。そうだろう?」 鼻先が触れ合う。少し顎を上げれば、唇の柔らかさを確かめることができるだろう。 アロンダートの意識は徐々に覚醒をする。サジのその花のような香りと、その細い体が裸のアロンダートの上に跨っている状況に、ごくりとその男らしい喉仏が上下した。 「っ、サジ様…!」 「ふふ、目が冷めたか。寝ぼけたアロンダートは可愛いなあ。」 「いけません、こんな…こんな状況はいけない!」 じわりと顔を赤らめる。アロンダートは慌てて顔を背けなければいけなかった。なぜならサジは、その身に何もまとってはいなかったのだ。 アロンダートの胸板に、サジの白い胸がかさなる。ツンと立った粒が何かとは考えたくなかった。己の胸板に、まさかサジのそれが重なるなど。 足の間に細い足が絡まる。楽しそうに微笑むサジの様子が追い詰めてくる。いけない、兆してはいけない。そう頭ではわかっているのに、アロンダートの素直な雄の身体は目の前のサジの柔らかな肢体に反応してしまう。 「おや、」 「く、…いけません、っ…」 「ふふ、よい。そのほうが都合がいい。」 「サジ様!」 柔らかな太ももに、はしたなく立ち上がってしまったアロンダートの性器を挟む。びくんと腰をはねさせ、あわてて止めようとサジを見上げると、そっとその唇を塞がれた 「ふ、…!」 「ン、ふふ…アロンダート。これは治療だ。枯渇した魔力の譲渡。ついでに閨教育も済ましてしまおうか。」 「ね、閨…など、と…っ、もっとご自身の身体を大切に、っ」 再び唇が重なる。アロンダートの琥珀の瞳と、ラブラドライトの瞳が交わる。 薄く暖かな舌を差し込まれ、サジを引き剥がそうとしていた腕がビクリと跳ねる。 ちゅぷ、と水音がたつと、びきりと血流が下肢に巡る。完全に立ち上がった性器が触れたのは、サジの柔らかな尻だった。 「さ、ジ様…っ!このままでは、僕は…っ」 「アロンダート、可愛いサジの子。おまえのすべてをサジにおくれ。」 「いけませ、ん…っ…もっと、段階を…踏まね、ば…っ…」 ちゅ、ちゅ、と甘く唇を啄まれる。顔を背けなくては、答えてはいけないと頭ではわかって居るはずなのに、その柔らかな唇に応えてしまう。 「キスをして、こうして手も繋いでいる。お前を胸に抱き込むこともしたぞ。ならば次の段階とやらは、こうではないのか?」 「ぐ、っ…い、けませ…っ」 「イカしてやろうと言っておるのに、まったく頭の硬い子だなあ。アロンダート。」 柔らかな尻に挟まれた性器を擦られる。違う、そうじゃないと叫びたかったが、息を詰めなくては本当にイってしまう。 アロンダートは美しい顔を歪めながら、これは淫らな夢に違いないときつく目を瞑る。 「デートだって、お前がここから出ない限りは出来ぬだろうよ。うふふ、ならばこうして仲を深めなくては、」 「っ、貴方、は…!」 ぶちりとアロンダートの血管が切れる。人が必死で気をそらそうとしているのに、こんなにも理性を揺さぶる悪い人だ。 カッとした頭でサジの背に手を回すと、そのまま向きを入れ替えた。 「おお、やっとやる気になったのか。」 「本当に、貴方は悪い人だ。僕をこうして罠にかける…どうしてやりましょう。こんなに乱暴な気持ちになったのは初めてだ…!!」 「いい男の怒りに震えた眼というのは、胎にくるものがあるよ、アロンダート。」 「く、っ…」 うっとりと見上げられ、頬を撫でられる。アロンダートはその嫋やかな手を自分の大きな手で掴むと、指を絡めて顔の横に縫い付けた。 「ならば、ご教授願えますか?サジ様。」 琥珀色の瞳が怪しく輝く。虹彩の奥で揺らめく金の炎は、そのままアロンダートの理性の揺らぎである。サジは嫣然と微笑むと、その繋がれた手に擦り寄った。 「いいぞ、アロンダート。お前の望むままに。」 繋がれたアロンダートの手に走る血管に舌を這わすと、その細い足を腰に絡める。 ぎり、と聞こえたのは歯ぎしりだ。 穏やかで温厚な第二王子を捨てた音とも、言えるかもしれない。 「っあ、は…っ!」 びくんと腰を震わせ、サジの白い肢体が跳ねる。褐色の美丈夫に組み敷かれ、シーツを乱しながら荒い呼吸を繰り返す。 初めてといったではないか。サジは眉根を寄せながら、矜持を保つために涙目で睨みつけた。 「あ、アロンダート…っ、も、う…よい!」 「いいえ。あなたが教えてくださったのですよ。きちんと復習しなくては。」 「んぁ、あ、あっ!も、いらぬ…っ」 ぬちゅ、といやらしい音が下肢から聞こえる。今まで数多くの男と関係を持ってきたが、前戯からここまで丁寧にされたことはなかった。 サジははしたなく足を開かされながら、王子でもあるアロンダートの手と舌によってその蕾を蹂躪されていた。 内壁がビクビクと波打つ。ぎゅるりと巡る血流によって、より鋭敏な刺激がサジを襲う。 このまま、中がどろどろに溶けてしまいそうだった。 もう、そこははくはくと物欲しげに疼いているのに、まるでそこにも口付けるようにして舐める。そのたびにサジはアロンダートの舌と指を締め付けては、薄い腹をビクビクと震わせてぷしゅりと吹く。 「サジ様、気持良くはありませんか。」 「なぜ、そんなっ…こと、聞く…っ、」 「…精液が、」 ぬるりと濡れたサジの腹は、先程から精液混じりの潮しか出ていなかった。もともと子種も無いので色味もあまり無いのだが、精液がでるのだけが気持ちいいと思っているアロンダートは、潮を知らなかった。 「やはり、足りないのでは?」 「ひ、っ!んぁ、あ、あっや、やめ、ぁ、あんっそ、そこぉ!いや、ァ、アッ!」 ぐにぐにと激しく痼をイジメられる。がくがくと膝を震わせ、びくんと腰を突き出すようにしてサジが跳ねる。ぶしゃぶしゃと吹き上げる潮をみて、アロンダートは悩ましげな表情で言う。 「サジ様は優しい。僕の不慣れな前戯もこうして許してくださる。」 「ひ、ぁ…も、やぁ…め、」 「僕は貴方に、気持ちよくなってもらいたい。」 にゅる、と指を抜かれる。サジの蕾は深呼吸をするかのようにひくつくと、目の前の光の明滅を眺めながら、サジは答える余裕もなくぐったりとしていた。 「ここを、舐めるのはお好きですか?」 「ぁ、んっ」 「…よかった、良いのですね、」 「ひぁ、っ!つ、よい…っ!す、すっちゃ…ひぅ、っ」 ぢゅ、とサジの胸の突起にアロンダートが吸い付く。突起に甘く歯をたてられ、ときおり吸われると、アロンダートの腹筋に擦り付けるようにしてサジの性器が腹に触れた。 「ぁ、アロン、っ…イく、イくっ」 「どうぞ、」 「んぁ、っなま、いきな…っ、イ、ぁー‥っ、」 ひくんと性器が揺れて、とろとろと零す。呼吸を整えているサジを覗き込むと、その垂れた唾液を舐めあげるかのようにして唇を舌でなぞる。 「サジ様。」 「んぁ、…しばし、まて…」 「はい、」 はふはふと胸を上下させながら、首筋に鼻先を擦り寄せるアロンダートの髪を梳くように撫でた。 茹だったサジの頭は、この先の刺激を期待していた。しかしだめだ、今插入を許してしまえば、気をやってしまう。 サジは再び、こいつは本当に童貞なのかと疑ってしまうくらいには手指だけで乱れてしまった。 それ程アロンダートは探究心が強く、新しいおもちゃを発見した子供のように無邪気に、サジの体を上手に開いていったのだ。

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