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「げ、せぬ…アロンダート、おまえはほんとうに初めてか…」
「お恥ずかしいながら。…褒め言葉として受け取っても?」
「うぬぅ…、それは少しだけ腹が立つな。言わぬ。」
ケッ、とおもわず顔を背ける。こういった事に慣れていない分、つぎはどうしてやろうかという好奇心がそうさせるのか。実にアロンダートは飲み込みが早く、そしてまた巧みだった。
そのサジのささやかな反抗心に口元を緩める、可愛い人だなと素直に思った。
こうして誘ってくるほど、経験はあるのだろう。そこはたしかに悔しかったが、アロンダートはそれでも良かった。
今だけはこの人は自分のものなのだとわかっていたからだ。
「ん、いいぞ…」
鼻先を擦り合わせ、サジがアロンダートの唇を舐める。
ウル、と喉を鳴らすと、アロンダートはその細くしなやかな足を抱え上げるために膝裏を持ち上げた。
足の間に腰を進めると、片方を肩にかけて膝に口付ける。何をやっても様になる様子がなんだか癪である。
サジはその性器の逞しさにこくりと喉を鳴らすと、そっとその先端を蕾に押し付けた。
「っ、ゆっくりだ…できるな?」
「はい、…ですが、少しばかし緊張します。」
じわ、と顔を赤らめる様子に、サジは小さく吹き出した。これから童貞を捨てるというのに、気持ちが急くのではなく緊張をするというとは。
どんな場面でも冷静に努めようとする気概は王族だが、押し付けた先端に蕾が甘く吸い付くだけでびくりと怖気づくのは少しばかし面白い。
「食い千切ったりはせん。ほら、アロンダート。」
「…はい、っ…ぁ、…」
「ふ、…っ…」
にゅぷ、と先端を飲み込む。まるで、溶けてしまいそうな強い快感に腰を震わせる。
は、とアロンダートは眉間にシワを寄せながら。なんとか射精してしまいそうなところを堪える。
そのくらい、サジの胎は極上だった。
「あ、ぁ…っ、ンン、ん…ぁ、っ…」
「サ、ジ…さま、っ…これ、は…っ、」
「ン…ふふ、っ…ぁ、きも、ちい…だろう、っ…」
ざわ、と全身に甘いしびれが駆け抜ける。アロンダートの琥珀の瞳がきゅる、と猛禽の瞳に変わった。理性が千切れそうなくらいに興奮している証を、サジだけに見せつける。
「ふふ、っ…アロンダートよ、…本性が滲んでいる、ぞ…」
「あ、あ、っ…く、すみま、せ…」
クルル、と喉奥から小鳥が親鳥に甘えるような声を漏らす。
そっとサジがアロンダートの背に手をまわすと、甘やかす様にして唇を何度も啄む。
まるでそれに促されるようにゆるゆると腰を揺らめかせると、サジの媚肉はきゅうきゅうと吸い付いてくる。
「すみ、ません…」
「堪え性のないやつだ。」
ぶわりとアロンダートの豊かな黒髪に、漆黒の羽が交じる。きゅ、と細待った瞳孔と、微かに伸びた八重歯を見せつけると、ハッハッ、と荒く呼吸を繰り返す。
「サジ、様…もう、抗えない…!!」
「ん、っ…!」
獣混じりになりながら、がっつくように深く口付けたアロンダートは、サジの腕が首に回った瞬間を待ち、ひと息に插入した。
室内に、濡れた音が響く。いくら防音代わりに空間遮蔽の術をかけているからといっても、もし聞こえていたら少し恥ずかしい。そうおもうくらいには、サジは大いに乱れた。
「あ、あっ!ぁ、や、やだぁッや、めっ、」
「やめない、っ…あなた、が…求めたのだから…。」
「んっ、ふァ、あろ、ん…ひぅ、っ!そ、そこいやだ、ぁ、あっおかじ、ぐなるっ…!」
「なりませぬ、っ…どうぞ、すきな…ように…!」
「あーっ、ぁア、あ、あ、あっ、い、やだ、ぁっ!じぬ、っ…おなか、っ…も、ぎもち、ぃ…のや、ぁあっ!」
がじがじと首筋や肩口の柔らかい部分にアロンダートの噛み跡を残しながら、大きな体で組み敷いて腕の中にサジという雌を閉じ込める。
胎の中を幾度となく往復するその逞しい性器によって、サジの余裕はすでになくなっていた。
「ぁ、ろん…だぁ、と…っ…も、ばか、に…なっひゃ、ぅ…」
「ここはまだ、精を出してはくださらぬのですね…」
「や、ちが…っ、これは、っ…」
気持ち良すぎるから出るんだよ!そう叫びたいのに、アロンダートが潮を撒き散らしたサジの性器を握りしめて擦るから、再びサジは中と外の激しい刺激に泣かされるはめになる。
「んやぁ、あー!!やめ、っも…でひゃ、たから、ぁっ、ん、ん、ふっ…ぅあ、あー‥」
「構いません、粗相をされても…愛くるしい…」
「こ、の…ばかぁ、ぁっ、ゃ、やら、もぅしぬ、っ…イぐの、ゃだ、ぁ、あっ!」
サジの腰回りのシーツはすでに使い物にならないくらいに濡れていた。ぱちゃ、と水音を立てながらガツガツと貪られる。
アロンダートは余程興奮しているらしい、気づけば両手でサジを押さえつけながら、脇腹から現れた獣の腕で細腰を鷲掴みながらガツガツと揺さぶる。
引きちぎった枕の羽毛なのかわからないが、室内はふわふわした羽が舞っていた。
腹の奥深く、入れてはいけないであろう所まで深く性器を押し込みながら、頭のおかしいサジがやめてと懇願する位に激しく交わった。
「んぁ、あも、もう、やめ…アロンダート、っ…」
「なりません、貴方が達するまでは離したくはない。」
「イ、ったぁ…から、あっ…こ、れは…しお…っ!」
「しお?すみません、あまり良くわからない…精液とは違うのですか?」
「ひぅ、うー‥ッ、や、やめぇ、そ、そこはぁ、ぁ、あ!」
「サジ様、教えて下さい。」
「いや、だ…っ、いやぁ、あ、ばか、ものぉ、おっ!」
まさかあの侍従共はこういった知識すら教えてこなかったのか。快感に溺れる中、心のなかで悪態を吐く。アロンダートの性器はぴたりとサジの中に収まり、緩い緩いと言われてきた自身のそこで飲み込むことに苦労するほどの大きさだ。
胸の突起は散々に弄られ、他人の性器を握る機会もなかったためか、興味深いと言われて散々に攻められた。こんなに出し尽くして、小便も漏らし、もう身を投げだして天井を見上げているだけのサジを前にしてもまだ射精をしない。
散々に腹の中で膨らませているのにだ。
「アロン、ダート…イけ、も…頼むから、っ…」
「ですが、…まだ乱れる貴方を見ていたい…」
「絶倫め、サジは…も、つかれた…っ、」
ウル、クルル、と喉奥を鳴らしながら甘えてこられるとサジだってたまらない。だけどこれ以上は身体がもたない。
サジは震える手でアロンダートの頭をよしよしと撫でてやると、そっと口付けていった。
「だせ、サジの中に…すべてよこすがいい。」
「っ、しかし…」
「男、の交わりでは…っ、子は孕まぬ。…安心するが良い…。」
「…そんなことは、わかっておりますとも。」
ぎゅ、と眉間にシワをよせて気恥ずかしいのか顔を赤らめる。その表情がなんだか可愛くて、サジはその背に腕を回して足を越しに絡ませた。
耳を舌で舐めあげる。飾羽まで出るほど興奮しているのに、今更我慢などするなと思った。
「う、あ…!」
ずち、と先端が奥に押し当てられる。もうこれ以上入らないというのに、ぐいぐいと中のいいところをすべて擦られながら押し上げられて、サジはアロンダートの腹を汚す。
気持ちいい、死ぬ、死んでしまう。うつろな目でがくがくと揺さぶられる。アロンダートのふとももに乗せられた自身の脚が律動に合わせてぷらぷらと揺れていた。
「ぁ、あっい、イぐ、っ!あ、ああっ、イっちゃ、ぁ、あろん、だぁ…どっ…も、いぐ…あ゛、ァ!」
「ぐ、ッ…サジ、…さ、ァ…っ、ーーっ、」
ぎち、と取りすがるように背に爪をたてた。アロンダートはすべてを包み込むように抱き込みながら腰を振り下ろし、やがてサジの奥深くで噴き出すようにして射精をした。
「ふぁ、っ…あ、あ…っ、」
こぷ、と、入り切らなかった精液が蕾から溢れる。
白い肌のサジは薔薇色に染まり、薄い胸は上下する度にアロンダートは組み敷いた美しい人が悩ましげに快感を追いかける様子を見つめた。
ぽたりと一粒汗が落ちる。そのかすかな刺激でさえ、余韻に浸るサジには毒だ。
「サジ、さま…」
「ひぁ、っ…え、もう…や、ら…はいら、ぬ…ゆらすな、ぁんっ…」
にちゅ、ぶぷっ、と耳を塞ぎたくなるようなはしたない音を立てながら、アロンダートは熱に侵された頭で必死に吸い付くサジの内壁を、味わうかのように腰を揺らす。
「貴方は、寝ているだけで結構。」
「へ、あ…う、うそだろう…」
「実地指導なのでしょう。ならば、確認が必要かと。」
「よ、よい…も、必要な…っ」
その先の言葉を言わせるつもりも無いとばかりに、アロンダートはサジの唇を塞ぐ。
サジはその頭を甘やかすように撫でられながら、あんなに嫌だった恋人のような甘やかな戯れも、目の前の男に対しては嫌悪感すらない事に戸惑う。
きゅんきゅんと腹の奥を疼かせながら、獣の腕がサジの足を持ち上げる。部分的に本性がでているのに、気づいているのだろうか。サジはそんなことを思いながら、答えるかのようにアロンダートの羽混じりの黒髪を無でる。
「ん、んふ…ぁ、…っ!」
「口付けも、…こんなにも心地よい物なのですね…」
口の中を歯列をなぞりながら侵す舌も、すべて気持ちいい。サジは唾液を伝わせながら強請るように唇を追いかけた。
「ん、っ…もっとだ、アロンダート…サジが欲張りだということを、教えてやる。」
「…貴方は可愛らしい。こうして僕を溺れさせて、本当に悪い人だ。」
サジの様子に、ギリッと歯噛みする。アロンダートはウルルと甘えるような音を喉奥から零しながら、その小柄な体を再び腕の中に閉じ込めた。
「まだ、足りませぬ。」
琥珀色の瞳が、完全に金色へと変わる。寄越せといったのは唇なのに。
サジは自分が煽ったせいで火がついたアロンダートに、今更そうじゃないとは言えなかった。
サジの今まで性に奔放だった自分でさえついていけない位の激しい抱かれ方に、今更屈服させられたくはなかったからだ。
「の、のぞむところだ…」
声が震えたし唇も引きつる。サジは、産まれて初めて抱かれ殺されたらどうしようと思うくらいには、童貞を捨てたばかりのアロンダートの性欲に怯えた。
夜はまだ長い、労るような口付けも、サジにとっては食われる前の戯れにしか見えなかった。
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