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腕に抱くナナシの体温が高くなる。酔っぱらいめと笑ってやりたいのに、首に回された腕がぎゅうっと抱き締める力を強くするのだ。
エルマーはその背を優しく撫でると、なにかいいかけて、やめた。
ここで話すよりも、どうせなら部屋の中のほうがいいと思ったのだ。
宿まではすぐそこだ。エルマーは無言になってしまったナナシの体を抱えたまま受付を済ませると、渡された鍵を持って充てがわれた部屋に入った。
「える、」
「ん?」
ナナシを下ろすと、きゅっと服を握りしめて名前を呼ばれる。見下ろすと、なんだか少しだけ泣きそうな顔で見つめてきた。
目の虹彩に、不安の色が交じる。エルマーはそのまろい頬をそっと撫でてやると、困ったように微笑む。
「だ、」
「抱きてえよ、そりゃ」
「う…、」
その目尻の涙を拭おうとして、自分の指がカサついていることに気がついた。誤魔化すように髪を流すように撫でてやると、ひっく、と涙声混じりの嗚咽が漏れた。
「や、ぁ…っ、」
「傷つけねえかさ、怖えんだよ。」
「な、ナナシ…、っ…え、えるが…ほし、っ…」
「あー‥、うん、うん。」
しがみついていたのはナナシの方だったのに、エルマーは深呼吸をしたかと思うと、床にしゃがみ込む。そのままナナシの腰を引き寄せ、その薄い腹に顔を擦り寄せた。
エルマーの頭を、そっと小さな手のひらで撫でた。腹に顔を埋めたまま動かなくなったエルマーに、ナナシは戸惑いながらもじっと見つめる。なんだかいつものエルマーとちがって、すごく悩んだり考えているような具合だ。
やっぱり、駄目なのだろうか。ナナシはきゅっと口を一文字に引き結ぶと、ごしごしと溢れる涙を拭った。
「える、」
「ここにさ、」
エルマー熱い手のひらが、ナナシの服を捲りながら服の中に侵入してくる。
晒した薄く白い腹にそっと口付けると、ベロリと舐め上げた。
「ひぅ、っ…」
「挿れたら、…もう戻れねえよ。ナナシ、」
「ぁ、っえ、える、そ、そこ…っ、」
エルマーの金眼が細まり、誘われるかのように形の良いへそを舌先で愛撫する。
後手に腰を引き寄せると、リップ音をたてながナナシのこぶりな性器を布越しに揉んだ。唇が腹部に吸い付き、ふにりとしたやわらかな感触のあと、強く吸い付かれた。ちゅ、と濡れた音を立てた後、ナナシの白いお腹にはぽちりと赤い痕が散らされる。
「う、…」
そうか、こうして赤い痕ができるのか。たくさん愛されると刻まれるそれは、所有の証だ。じわりと耳を染めながら、そのトパーズの瞳は蜂蜜のように甘くとける。
腰を撫でながら、エルマーの手がボトムスを下げた。ナナシの小さな性器へと導かれるように、エルマーがぱくりとそこを咥える。性器にからみつく舌は、腰が震えるほど気持ちが良い。
ナナシは、目が離せなかった。大好きなエルマーが、自分に触れてくれるのが嬉しくて、とくとくと跳ねる忙しない心臓を隠そうともせず、指先の震えで伝える。腰を抱えあげられるようにして抱きしめるものだから、ナナシのお尻はエルマーの腕に立ったまま腰掛けるような形になってしまう。
「ぁ、あ、あっ」
「ン、」
「ひぅ、ぁ、やっ…」
舌でこぶりな袋を舐め上げられ、時折ちゅるっと吸い付かれる。はふはふと荒い呼吸の合間にちゅぷちゅぷと恥かしい水音が下肢から響き、ナナシの頭には靄がかかったように熱に浮かされていた。
「で、でちゃ…ぇ、る…ぇるぅ…はぅ、ぁ、あっ…」
ぢゅ、と強く吸い付かれた後、ナナシは膝を震わしながらエルマーの舌の上に精液を吹き出した。
ああ、もう終わってしまう。ひくひくと腰を跳ねさせながら余韻に浸るナナシの性器から唇を離すと、エルマーはナナシを膝に跨がらせるようにして座らせた。
「っやー‥ぁ、も、もぅ…おしま、い…?」
「んー‥」
「ぁ、ふ…っ、」
ナナシの問に答えないまま、エルマーは強く抱きしめた余韻でふるふると身を震わす、腕の中の愛しい子。自分が先に見つけたからという執着が、口にするのも恥ずかしくて仕方がない感情に変わったのはいつからだろう。
この子は、流されてるんじゃないか。自分という存在しか、頼るものがいない。そんな状況で、それを恋に置き換えているのでは。
エルマーは、ずっとこう思ってきた。自分の手でとろめく素直な体を、抱いてしまったらいよいよ手放せなくなる。もしナナシの抱いている自分への感情が、洗脳だとしたら。
ナナシの頬を包み込むようにして、顔を覗き込む。もし、そうだとしたら。汚い自分は術を使ってでも離れなくしてしまうかもしれない。ああ、いつの間にこんなに情けない男になったのか。
「…ナナシ、」
「ん…っ、」
エルマーの瞳がゆるりと光を帯びた瞬間、ナナシは瞼を閉じてその薄い唇に、自分のそれを押しつけた。
「…、っ…え、ぅ…すき、すき…」
「ん…、」
まつげを濡らしながら、細い腕を首に回してエルマーの頭をふわふわと撫でる。ぺしょりと薄い舌が甘えるように唇を舐めるのを、エルマーは唇を開いて答えた。
「っ、…ナナシ、…」
「ふ、ンん…んぅ、…」
細い腰に腕を回す。自分は今、ナナシに何をしようとした。きつく抱きしめる。隙間を埋めるように深く唇を合わせると、甘えた吐息を漏らしたナナシが顔を傾け深い口付けに答える。
「ん…ちゅ、う…ふぁ、…っ、すき…える、も、もっと…あっ、」
「っ、…煽んな、バカ。」
「あ、あ、あー‥」
背中に回した腕が素肌を撫でる。猛った性器は布地を押し上げ、ナナシのこぶりな尻にごりごりとあたる。熱い、こんな熱くしているのだ。
エルマーが触れてくる場所はどこも熱いのに、まだ触れられた事のない腹がこんなにも熱い。
「える、えるぅ…!」
「くそ、…なあ、痛えよ多分…血がでっかも…」
「い、よぅ…っ、え、えるなら…いーよぅ…っ、」
涙の膜が張ったナナシの瞳が、柔らかく微笑んだ。まるですべてを包み込むような慈愛の瞳にうつったエルマーは、まるで獣のような顔をしている。
じくりと奥歯が疼く。満たされたいと思った。
「…優しくする、できるだけ。」
「ひぁ、っ…!」
ぐる、と本能のままに喉仏に舌を這わす。脱がした下肢のボトムは乱暴に放り投げられ、その華奢な身体を床に押し倒す。目の前にベッドがあるのに、移動する時間も惜しかった。
ナナシが何も言わないのをいいことに、エルマーは細い腰を鷲掴むと、己に引き寄せて下肢を密着させた。
「ナナシ、ナナシ…っ、」
「ふぁ、え、える…ぅ、すき…はぁ、ぁっ…」
唇を擦り合わせるように何度も唇を重ねる。ぬちぬちと互いの舌が粘膜の触れ合いに音を立てるたび、ナナシの体はふるふると震えながら喜んだ。
気づけばじょわりと幼い性器から尿を漏らし、腰の周りを暖かに覆っていた。我慢していたものが、性感によってタガが外れてしまったのだ。
エルマーは気にすることもなくカチャカチャとバックルを外すと、ホルスターごとベルトを放り投げてボトムスのジッパーを下げた。
「ん、んんっ、ふ…ちゅ、…はぅ、…」
「はあ、くそ、くそ…っ、かぁいいなあ、おまえ、…っ、だめだとまんね…」
「はぁ、っ…うれ、し…」
エルマーが興奮してくれるのが嬉しい。べちりとナナシの性器に重なるように、猛ったエルマーの性器が重なる。太い血管が走るそれは、ナナシの性器よりもずっと大きくて、ビクビクと震えていた。
とろりとした先走りを塗りつけるように、ナナシの臍へと先端が触れる。すべて収めたら、ここまで来るんだぞと教えこむようにだ。
ナナシの脚をかぱりと割り開く。そのまま押し上げると、ナナシは自分の性器が目の前に来るのを見つめた。
顔を赤らめ、瞳孔の開いたエルマーの雄の顔が歪み、がじりと尻の軟肉に歯を立てる。
「ぁ、っ…」
「沢山、かぁいい声きかせろ、な?」
「え、る…!っぁ、あ!」
赤い舌が蕾に張り付く。ビクンと腰を震わせると、興奮したエルマーの熱い舌がにゅくにゅくと解すように蕾を弄る。
あ、あ、と熱に浮かされて出た声は無意識だ。ナナシの慎ましい蕾を舌が押し開くようにして侵入すると、エルマーのそれが自分の胎内を舐めているという視覚情報だけでもうだめだった。
「ひゃ、んんっあ、ぁっや、やら…あ、あー‥っ!」
「ふ、んん、っ…ふは、熱…」
「あぁ、ん…だ、だめぇ…あ、あ、あっ」
「やめねえよ、もう…止まらねえ。」
にゅく、とナナシの腹にエルマーの指が侵入してくる。つぽつぽとぬめりを纏いながら探るように中をイジると、ナナシの口からはだらし無く唾液がこぼれた。
「はひ、…っ、ゆ、び、はぃ…ちゃ、っ…」
「もっとすげえのいれんだろ、」
「ぁふ、え、える…ひぁ、っ…」
舌と指が、ナナシのそこを翻弄する。身を投げ出してびくびくと腰を震わした。性器の先端からとろとろ溢れる蜜が腰を伝ってぴちゃりと漏らした水溜りに落ちる。行き場の無い手が、感度に震えながら胸の前で小さくなったときだった。
「ん、…ほら、」
「う、ぅー‥っ、」
ナナシの足を肩で担いだエルマーの片手が、そっとナナシの小さな手と絡まる。なだめるように繋いだ手の親指で人差し指の根本を撫でられると、ほっと息をついた。
鋭い快感は毒だ。気づけばエルマーの指を二本も飲み込んだ素直な腹は、内側のしこりをトントンと押されるたびに、ぷぴゅっと性器から端なく零すようになってしまった。
床にあられもなく身を投げだして、全身を赤く染め上げてとろめくナナシの幼い体は、まるでもっと奥にと誘うように、甘くエルマーの指を食む。
あと一本、入らないときつい。
「ナナシ、尻向けて。あと一本飲み込めねぇと、多分きちぃから。」
「ん、…ぁ、い…っ…」
震える膝で踏ん張りながら、のろのろと尻を向ける。上半身を持ち上げる余裕はなく、尻だけ上げる形でエルマーに差し出すと、その柔らかい尻肉にちゅっと口付けをしてから、再び舌と指でほぐしにかかる。
空いた手でにゅくにゅくと幼い性器を絞るようにして刺激してやると、よほど気持ちいいのだろう、ひゃんと可愛く鳴いて内股を濡らす。
「ふあ、あー‥、ぁん、っえ、える…き、もち…きもちぃ…える、えるぅ…」
「かぁい、い…くそ、ちんこいてえ…ああ、かぁいいなナナシ、」
「も、おしり…ゃだよう…ち、ちんち…いれ、て…えるぅ…っ、」
「お前、それはだめだろ…!」
「ひぁ、あ!」
じゅぽ、と3本目の指が入った。ぱつぱつに引き伸ばされた蕾は、エルマーの指を飲み込んでキュウキュウと締め付ける。ナナシの腹が波打ち、ぶわりと背筋に沿って甘い痺れが広がる。前立腺をぐにぐにと刺激されて我慢できなかったのか、ぴゅるぴゅるとだらしない射精をして崩折れた。
「あー‥あ、あぁ…れ、てぅ…ひゃ、ん…っ、」
「ん、すげえうねってる…はあ、っ…挿れていいか…、なあ、…おまえの、なかに…」
じゅぼ、とエルマーの指が引き抜かれる。ぽっかりとあいた蕾は、呼吸にあわせてひくひくと開閉し、その内壁から蜜をこぼして誘う。
エルマーはぬちぬちと性器を握り決めて擦りながら、許しを請うようにがじがじと尻に甘噛みをした。
「ひぅ、え、える…い、よぅ、…っ、」
とろりとした蜜が蕾から零れ、とろとろとナナシの内股を濡らす。ごくりと喉を鳴らすと、エルマーは後ろから覆いかぶさるようにしてナナシの華奢な体を包み込んだ。
「力抜け、ゆっくり入れっから…」
「ぁ、ぁん、ぅ、うー‥、っ…」
くち、と指で舌を弄られながら、蕾に押し付けられた熱源にふるりと背筋を震わす。フーッと荒い呼吸を繰り替えしながら、エルマーはその先端をゆっくりとナナシの蕾に沈み込ませる。
「かふ、っ…ひゃ、ぃ、いた、ぁ、っ…」
「痛え、よなあ…っ、ん、ゆっくり…呼吸しな、」
「は、はふ…あ、っ…は、ぁ、ぁ、」
にゅぽ、と呼吸に合わせてゆっくりと性器を飲み込ませる。先端がすべて入ると、ふるふると震えるナナシの背筋に口づけた。
「ん、上手…ちっと馴染むまでこのままな…」
「え、ぇる…も、もっと…き、きてぇ、…っ、」
「おう、ナナシが落ち着いたら、また付き合ってくれや」
「は、ァう…っ、…」
ぱつぱつに張ったそこは、ちゅうちゅうとエルマーの性器の先に媚びる。その甘やかな刺激に、エルマーの蟀谷からは汗が伝ってナナシの背筋にぽたりと落ちた。
「ひぁ、っ…!」
ゾクゾク、と、その小さな刺激に落ち着いてきた性感を乱される。突然きゅっと締まるものだから、エルマーもぐっ、と息を詰めて腰が跳ねそうになるのをこらえた。
「あ、あ…ぁー‥、は、っ…」
「ナナシ?」
へにょ、と床に突っ伏す。余程気持ちが良かったらしい。エルマーが恐る恐る腰を進めると、上手に力が抜けているせいか、にゅぷっ、と音を立てながら一番太いところまで飲み込んだ。
「ひ、ぁん、あ、あ、だ、だめ…え、えるま…ぁっ、」
「あ゛、く…すげ、…っ、」
「けふ、っ…お、おなか…く、ぅし…っ、」
口端からけぷりと唾液を零す。目の前のチカチカと点滅する光に、ナナシは目を回していた。
なんだこれ。なんだこれなんだこれ。
腹の中にエルマーがいる。それだけでなんだか気持ちよくって、蕾の縁が甘く痺れて閉じようと締め付けるのに、腹の奥ではもっとと甘えたように内壁が絡む。
なんだかわけがわからない。この甘やかで満たされる感覚に、ナナシの腰は、もっとと促すように揺らめく。それに刺激されたエルマーは、ぐるると獣のように喉を鳴らす。
「やめろ、…っ…壊しちまう…」
ぐっと後ろから押さえつけられ、耳元で我慢ならないといった具合に囁かれる。
ナナシは涙目でエルマーに擦り寄ると、その大きな手に小さな自分の手を添えて指を絡めた。
「うれ、しぃ…」
泣き顔で、ふにゃふにゃ笑う。ナナシのあどけない表情にエルマーは目を見開くと、ぎゅうっときつく抱きしめたあと、小さくごめんと呟いた。
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