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エルマーの大きくて熱いものが、内壁を押し広げるようにして侵入してくる。
ナナシはその甘やかな感覚が好きだった。
お腹が嬉しい。ずりずりと擦り付けながら、それは優しくナナシの中を虐めるのだ。
きゅう、と素直に締め付けると、耳元でエルマーが息を詰める。ああ、ナナシの中で気持ちくなってくれるのだなあと思うと、腰に力が入らないくせに、もっと締め付けたくなってしまう。
いつのまにか滲んだ涙を、エルマーが唇で受け止めた。
「はぅ…、…」
はあ、と熱い吐息を漏らすエルマーが、ぐる、と喉を鳴らす。とろとろと甘やかされるように尾の付け根を揉まれて、そこも気持ちよくてとけてしまう。ナナシはだらしなくよだれを垂らしながら、かぷかぷと甘えるように肩口に噛みつく。
「ん…ここ、きもちいか…」
「あ、ぁー‥」
こつ、と先端が奥深くまで入り込む。ここは、ナナシの大切なお部屋だ。
ひくんと薄い腹が痙攣して、はやくと急かすようにエルマーの先端を内壁が舐めしゃぶる。先から滲む先走りから得られる魔力を、逃してなるものかとちゅうちゅうと吸いつくのだ。
「…ここも、いいこだなあ。」
「ぁふ…っ、…んあ、すき…」
「ふ、…」
蕩けたナナシがぺしょりとエルマーの唇を舐める。腹の内側、ナナシの気持ちがいいところをこすこすと刺激してくれるエルマーの性器が、どんどんナナシを素直にさせる。
きゅぅ、と入口を収縮させ、エルマーがその締め付けに息を詰める。ナナシは自分がエルマーを感じさせているのが嬉しくて、ゆるゆると腰を揺らめかせた。
「ン…、積極的ぃ…ほら、自分でいいトコあててみな。」
「は、ぁ…あぅ…っ、んぅ、あ、あ、あー‥」
「あ…すげ…っ…」
ぞわぞわと背筋を甘く痺れさせる。ちゅぽ、とナナシのお部屋の狭いところを探るように擦りつけるから、麻薬のような刺激が全身に走る。
ナナシはだらし無く唾液をこぼし、その強い性感に顔を歪めたエルマーが、腕力だけでナナシの尻を持ち上げると、ガクガクと揺さぶった。
「ひぁ、ァあっあ、や、やぅ、っ!える、ぁ…っ、やぁ、あー‥!」
「はァ…あ、な、なし…ん、もっと…鳴いて…」
「う、…あァ、あっい、いぐ…え、るま…あ、あ、あっいく、ぅ、ううっ…でひゃぅ、うっ!」
「出せ、全部…っ、あ、…く…みせ、ろ…」
ぶるぶると内股を震わし、強い熱源を押し当てられるかのような鋭い感覚に、力が抜けて我慢ができない。ナナシは力が抜けたまま抱きかかえられるようにして揺さぶられながら、エルマーの割れた腹筋にマーキングするかのようにぶしゃぶしゃと潮を吹く。
「ひぁ、あん、や、ゃら…あ、ぁあ、んっふぇ、えっイ、たぁ…!も、イっ、たぁ、あっでな、いぃ…っ、」
「ん、っ…俺、も…イく…」
「ひぃ、ぁ、あっ!あ、ああっあや、やあ、あっ!は、ゃぃ、や、やあ、ぁっ!」
強い刺激に仰け反るナナシの腰を抱きしめながら、がつがつと乱暴に性器を打ち付ける。揺さぶられるまま、ぷらぷらと空をきる脚に力が入らない。
上手に力を抜いているから、エルマーは奥の狭いところに甘やかされながら、ぐるると獣のように喉を鳴らして激しく求めた。
ごちんと奥深くまで飲み込ませると、びくびくと背を反らせたまま、強い刺激にナナシの細い足がはねあがった。
「ぁ、う…っ…あ、ああ、あ…」
「はあ、く…っ…」
じゅわりと熱く、粘度の高いエルマーの魔力を帯びた精液がごぽごぽとナナシの腹の内側を満たしていく。腰を震わせ、一滴も漏らさずに腹の収縮だけで受け止めたナナシは、びくびくと刺激に痙攣すると、かふりと詰めていた息を吐きだしてガクンと意識を手放した。
エルマーは荒い呼吸を繰り返しながら、がぶがぶとナナシの首に歯型をつけると、腹の中側に塗りつけるかのように腰を揺らめかせた。
「ん…ナナシ…」
「ぅ……、ン…」
「ナナシ…」
細い体を、まるで宝物を抱く子どものようにぎゅうと抱きしめる。意識を飛ばしたナナシに匂い付けするようにぺろりと頬を舐めると、髪を優しく撫でながらきつく抱きしめた。
誰にも渡さない、ナナシは、エルマーのものだ。
肩口にナナシをもたれさせながら、満足いくまで何度も愛した。
ナナシが目を輝かせたオアシスのような風呂に入ることはなく、エルマーはシャワーだけで簡単に体の汚れを取り除くと、ゆっくりと性器を腹から引き抜いた。
「…愛してる、ぞ」
恥ずかしいから、寝てるときにしか言ってやらん。ずるいかもしれないけれど、かっこつけて言える程、エルマーはその言葉を言い慣れてはいなかった。
さりさりとした衣擦れの音がする。ナナシはもにゅもにゅと口を動かしながら、くんくんと鼻をひくつかせ温かい人肌に顔を埋める。ぐい、と引き寄せられると、頭を抱き込まれた。少し苦しいけど、これは幸せの心地よさだった。
もぞ、と顔を動かして呼吸がしやすいようにする。頭を撫でられるのが気持ちいい。たしたしと音がする。なにかに擦れているのか耳がくすぐったくて、ぴるぴると動かしたら、ぶしょっと妙な音がしたので目が覚めた。
「へっ…くしょっ!ぶしっ!」
「んんむ、ふわぁ…」
「あ、わり。」
ずびっとエルマーが鼻を啜る。ナナシのお耳に擽られたようで、こしこしと鼻を擦ってはくしゃみをしていた。
「んん、える…?」
「おう、…あ?」
ぎゅうと抱きしめられ、妙な声を出される。もこもことした何かが二人の間に挟まっていたのだ。
ナナシは自分の尻尾だろうかと確認するように、寝具からぴょこりと尾を出した。フリフリ揺れているそれは、実に今朝もご機嫌であった。
エルマーが布団の中に手を突っ込んだ。がしりとそれを鷲掴かんで引き寄せると、エルマーとナナシの間に挟まっていたのはギンイロだった。
「フニャ…ンンン…クワァ…」
がぱりとギザ齒を晒しながら、大口を開けて欠伸をする。二人の間で暖を取っていたらしく、もにゃ…と口を動かしたのち、べろんとエルマーの顔を舐め上げた。
「くっせぇ!!」
「ンン…オエーー!!エルマーナメタ!!オエェ!!」
「おま、こっちのセリフだコラァ!!」
パチリとまあるい目をあけたギンイロは、おげっと顔を歪めて舌を震わすと、よだれで顔を汚したエルマーによってペイッと放り投げられた。
しかし腐っても精霊である。ふよふよとちいさな羽をパタつかせると、何事もなかったかのように両手を広げたナナシの腕の中に収まった。
「ンン。ナナシ…メスノニオイスル。」
「う?」
「エルマートハンショクシタ?オナカノタマゴソダッテル。」
「はわ…はずかしい…」
ぽっと顔を赤らめながら照れるナナシの横で、顔を洗ってきたエルマーがギンイロをつまみ上げる。ムスッとした顔で同じ目線まで持ち上げると、ふりふりと尾を振ったギンイロがヘッヘッヘと笑うかのような息遣いでキュルンと見上げた。
「ハンショク。エルマーノスケべ。」
「やかましい。嫁抱いてなにがわりいんだっての。」
「タンセイセイショクカトオモッテタ。」
「あ?」
「ヒトリデオスクサイトキアッ」
「おおおおおまえそういうこというなっての!!!」
いつぞやか耐えかねて抜いたときのことをギンイロにバレたらしい。別に恥ずかしいことではないのだが、そんなことはナナシの前で言うことではない。
「…?」
そんなエルマーとギンイロの朝からのやりとりを遮るかのように、なんだか騒がしい足音が近づいてくるのを、ナナシの大きな耳が感知した。
「エルマー!!」
「うわあ!!!」
「ウヒャアアア!!」
バァン!と大きな音を立てながら、レイガンが駆け込んできた。エルマーというと、昨日はそのまま寝てしまったので見事に裸だった。慌てて掴んでいたギンイロで股間を隠すと、モザイク代わりに使われたギンイロはなんとも情けない悲鳴を上げた。
「っ、とすまない…君は寝るときは裸…っ、」
「レイガン、おはよぉ…」
「す、すまない…」
裸のエルマーと、毛並みを逆立ててゲンナリしているギンイロの様子にぎょっとした。鍛え抜かれた体を横目に、声のする方を見たレイガンは、自分が朝から無粋なことをしたのだと悟る。
こしこしと目を擦るナナシが、白い体を晒していたからだ。首に赤い痕を散らし、鷲掴かまれたらしい、腰に手形をつけた事後の身体を惜しげもなく晒していた。呆気にとられた一瞬、慌てて後ろを向くと、腰にシーツを巻き付けたエルマーがレイガンの背を押して通路に出た。
「悪い…配慮にかけていた…」
「まあ、次からノックしてくれや。んで、なに?」
背中で押して扉を閉める。ナナシにインペントリを渡したので着替えはするだろう。
エルマーは冷静なレイガンが慌てた理由に、なんとなく予想はついていた。
「国王が崩御した。皇后も、もう瀬戸際らしい。」
「出どころは?」
「ジクボルトが城に呼ばれた。国葬の為にな。」
「ああ、成程…そりゃ確かな筋だぁな。」
レイガンは難しい顔をすると、頭を抱えた。
「ジルガスタントに来てほしい。だけど、国葬を執り行う中移動となると違和感しかないな…」
「あー‥、てか国葬するのか?つけこまれたりしねえ?」
「しめやかに行う。他国への通知は国王の意向でとかで行わないそうだ。唯一のメリットとしては、ジルガスタントへの進行はしばらくは抑えられるということか。」
「…ジルバか。」
兄弟が仕事をしたと言っていたことを思い出す。拔かるんだ国政を立て直すには、早く次代を据えるのは違和感はない。しかし、崩御をした国王に続くように皇后までもが倒れたとなると、陰謀説が浮かび上がるのではないか。
エルマーは、腑に落ちぬという顔だ。
「一度ジルバにあいてえ。あいつもジルガスタントに行けと言ってたからな。なんか知ってっかも。」
「影の魔女か、そういえば皇国に巣を張り巡らしていたな…」
「今は城にいる。まあ、アロンダートの家から道は繋がってっから、そっから中にはいるのは容易いけどよ。」
「まて、国葬をするんだ。そうもほいほいと侵入は出来まい。警備は硬いぞ。」
難しい顔をするレイガンに、エルマーはにやりと笑う。
「変装するなら、頼りになるやつが市井にいる。そこらへんは任せとけ。」
レイガンは怪訝そうな顔をエルマーに向けた。そんな相手まで懐に取り込んでいるとは、全くもって底のしれない男である。
なんだかよくは分からないが、味方ならこれ以上心強いことはないだろう。
レイガンは小さく頷くと、まかせる。と真っ直ぐに見つめた。
「あら!!!あらあらあらあああ!!」
レイガンは、任せるといったことを後悔し始めていた。
「トッドぉ…わああん!あいたかったよう!」
びゃっと大泣きして大柄な女性…まあ、女装をしている男性なのだが。その人に抱きついたナナシは、わんわんと泣いた。なんでかって、まさかオカマが協力者だなんて誰が思うのか。
「あらぁ…いやだわ、ちょっと…そんなに泣かれたらアタシだって泣いちゃうわよお…」
「ふえぇ…」
野太い声が、猫を撫でるように甘ったるい声のトーンでよしよしとナナシの頭を撫でる。この姿になってから、トッドにあったのは初めてだ。ナナシはどう見られるのか心配をしていたが、実際に顔を出してみると、驚かれはしたもののすんなりと受け入れてくれたのだ。
仕事で城に向かったジクボルトを除き、四人で向かったのは市井に店を構えたトッドのところだ。サジはというと、5人は多いと言って消えていた。トッドに簡単にレイガンのことを説明をすると、どうやらダラスに襲いかかった刺客だと言うことを思い出したらしい。理由はどうであれ、ものすごい眼力で見つめられて居心地が悪かった。
そんなレイガンの様子など気にもせず、エルマーはというと店に入るなり、人目がないことを確認すると、サジを呼んだ。
「サジィ!もう出てきていいぞ!」
呼声とともにひょこりとエルマーの後ろから現れたサジに、トッドとレイガンは腰を抜かして驚いた。ふらっと出ていったのは見たことはあるが、エルマーと重なるようにして出てくるところは初めて見たのだ。
「なんだ。サジをお化けみたいに見て。当たり前だろう、使役されているのだから。」
「ああ、登録名が元気なゴーストだからじゃね?」
「今更だが、それ変えられぬか。なんかダサい気がししてきた。」
アロンダートはにこにこしながらサジの腰を抱く。想い人が他の男に使役されているという複雑な状況に、未だ納得できかねているらしい。エルマーからしてみたら、だまし討のような方法だったので不本意なのだが。
「っと、まあお前に頼みてえんだわ。」
「ああ、中にはいる話かしら。それなら安心して、ジルバ様から承っているから。」
「あ?」
ニッコリと笑うと、トッドは色とりどりの生地の束をひと抱え持ってきた。
それをドサリとテーブルの上に置くと、それはもう満面の笑みで言った。
「葬式の後は戴冠式よ。そうすれば必要になるのはお召し物。潜入するなら、お針子として中にはいるのが一番。ということで今回の犠牲者は二人。」
エルマーとレイガンはぞわわっと身を震わせた。トッドはきょとんとしていたナナシの頭をワシワシと撫でると、指輪で飾った太ましい指でレイガンとエルマーを順々に指を指して、目を輝かせた。
「今回の犠牲者は、エルマーとレイガンね!!」
「はああああああ!?!?!?」
けたたましいエルマーの絶叫に、レイガンはなにか己の身に恐ろしいことが起こるということだけは理解した。
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