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「ユミル…お前、恨むぜ。」 「なんでよ!?13の時からいなくなったから、うっわ!もう13年ぶりだよエルマー!!僕らもいい年になったなあ!あっはっは!」 「あああ…」 独り暗雲を背に背負ってうなだれているエルマーの横に腰掛けたユミルは、相変わらず快活に笑いながらばしばしと背を叩く。 エルマーはその赤髪を乱すように頭を抱えると、ご機嫌とりはどうしようかと、ない頭を悩ませる。 ユミルは、エルマーの連れをちらりと見つめた。おそらく主様であろう、恐ろしく容貌の整った青年がもうひとりの隷属者の手を引いて道端にしゃがみこんでは何かをしている。 まるで小さい子のような行動に、妙な主様についたなあと思った。 「なあエルマー、お前の主様ってあの人?獣人の。」 「ああ、そうだ。連れはレイガンだ。俺らはまあ、雇われ護衛みてえなもんかなあ。」 「ほーん、ちょっとだけ頭弱そうだけどめっちゃ美人だな。」 「頭弱そうとかいうなっつの。」 二人は牛車の荷台に腰掛けながら、しゃがむナナシを見下ろすようにレイガンが中腰になっている。 いま二人の目線の先には、大きな餌を巣穴に持ち込もうとしている蟻の集団がいるのだが、そんなことは知る由もない。 相変わらずナナシはマイペースだった。 「なあ、枷切りされてるってことは自由を許されてるんだろ?なら今晩飲みに行かないか?」 「ああ、主の兄貴の嫁が体壊しててな。だから出れねんだわ。」 「えー、だってレイガンってやつだっているだろ?それともあの白い主にだめって言われんの?」 「俺が離れたくねえんだあ。」 ユミルは、エルマーが牛車の荷台に肘を付き、頬杖で顔を支えながら真っ直ぐとナナシの方を見つめいる姿に、なんとなくそわりとした。 せっかくこうして会えたのに、なんでエルマーは頭の悪そうな美人といるのか。しかも、どうやらエルマーが望んで側にいるらしい。 ユミルはつまらなさそうにフウンと言うと、不貞腐れるように少しだけ声色が暗くなる。 だって、ユミルはエルマーが好きだったのだ。 エルマーが突然13でいなくなるまで、ずっとエルマーが好きだった。寝ているエルマーに口付けた事だってある。それは、本人には言ってないが。 「なんか窮屈だなー、隷属者って。それになんでお前もレイガンも枷が縄?今の隷属者はもっと洒落たブレスレットとかつけてんべ。」 「俺らはこんくらいで丁度いいんだよ。はあ、もういいか?俺主のご機嫌とりしねえと。」 そういうと、エルマーはもう話は終わりと言わんばかりに牛車の荷台から立ち上がる。ユミルも配達がここで最後だった為、そろそろ戻らなくてはいけない。 なんだかものすごく名残惜しい。ユミルは昔なじみにあった勢いでエルマーの主様に挨拶をしてしまっ たが、もしかして高貴な出なのだろうか。だとしたら、貧民ではないが不躾だっただろうか。 なんとなくエルマーがナナシの元へ行く様子を目で追う。久しぶりに会ったエルマーに、昔の恋心が微かに騒ぐ。 「話はいいのか?」 「おう、もう充分だあ。何してたんだ二人で。」 レイガンとエルマーが、2、3会話する。隣のレイガンという男も不思議な魅力のある男だというのに、やはり目で追ってしまうのはエルマーだった。 あーあ、つれないでやんの。 ユミルは心のなかで小さくつぶやく。あの硬派なエルマーが、本気の恋愛なんてするわけないというのは、なんとなくわかっていた。 エルマーは昔からそうだった。孤児院の時から、年上の女の子に告白をされても相手にしない。 かといって、男の子に告白をされても、それは同じだったのだが。 「あのね、ありみてたの。おっきいおかしいれようとしてたよう」 「へえ、小せえ穴にでけえのいれんなら慣らさねえと無理だぁな。」 「エルマー。」 「何がとは言ってねえ。」 くだらないやり取りをする三人を見ながら、そんな取り留めもないことを思っていたから、余計にユミルはびっくりした。 「える、だっこしてえ」 「もちろん。」 美しい獣人の青年が、その華奢な腕をエルマーに向けて広げる。拙い口調はわざとなのだろうかと思ってしまうくらいには、ユミルの中でのナナシは嫌なやつになってしまった。 だって、ユミルがずっと望んでいたエルマーの腕の中を、顔がいいだけの獣人が奪ってしまったのだ。 エルマーはまるでお姫様を扱うように青年を抱き上げると、エルマーの肩口にすりすりと甘えるようにすり寄ったのだ! ゆらゆらと嬉しそうに尾を振る。横にレイガンという上等な男がいるのに、よりにもよってエルマーである。 ユミルがきつく拳を握る。紛れもない嫉妬だった。 ずっとユミルがエルマーに会えなかったのは、この顔の良い青年が独占していたからに違いない。そうおもってしまったのだ。 「ユミル、じゃあな。」 「おう、」 抱き上げた青年が、エルマーの肩口から顔をのぞかせる。ぺこりと頭を下げたレイガンとは違い、きょと、とまあるい目でユミルを見た。 まるで子供のような純粋な瞳。ユミルが大人になってから、そういう目で人や物を見ることがなくなっていた。 抱き上げられた青年が、ゆるゆるとユミルに手をふる。 なんだかそれが、余計に馬鹿にされているような気になってしまった。 「あのね、えるのことしってたひと…んとー、」 「ユミル?」 「ゆみ、ゆ、ゆみる…そう、ゆみるからちのにおいしたよう、でもちょっとこかっただけ。」 「土持ってんわけじゃねえんかな…あー、飲み誘われてたのいっときゃよかったかあ?」 「ああ、そういえばなんか言われてたな。行けばよかったんじゃないか?ナナシも連れて。」 ナナシがちうちうとエルマーに買ってもらったジュースを飲みながら、気にしないようにぼけっとしている。しかし、その耳はしっかりとエルマーの方に向けられており、少し不自然だ。 レイガンは小さく吹き出すと、慌てて笑いを噛み殺す。 「う?」 「すまん、何でもない…ふふ、」 「あいつなあ…」 エルマーは渋い顔をしながら空を見上げた。 どうやら、ユミルという青年に対して思うところがあるらしい。  レイガンは、片眉をあげておや?という顔をすると、いよいよ我慢できなくなったらしいナナシが、ちょこっとだけエルマーのほうに身を寄せる。 「ナナシ、昔なじみってだけだ。だからそんな嫉妬する必要ねーって。な?」 「しっと?」 「…レイガン。」 「嫉妬とは、好きな相手が別の相手に取られそうになったときの、悔しいという感情の名称だ。ナナシがさっき、エルマーに抱きついてきたユミルをみて抱いた感情がそれだ。」 「はわあ…ナナシ、ゆみるにしっとしたのう…あう…」 ぽ、と頬を染めゆらゆらと尾を揺らめかせる。自分の感情にしっかりと名前があることを知ると、途端に恥ずかしくなった。そうか、たしかにユミルがエルマーを取ってしまうのではないかとソワソワしたのだ。これがしっと。 「ナナシのえるなのに、やだなあってなったよう。わがままかと、おもた。」 「どうしよう俺の嫁がこんなにも可愛い。勃起したわ。」 「わかったわかった。頼むからその足を組み直さないでくれよエルマー。」 レイガンはもう慣れたらしい。適当に相槌は打つが、こんな往来で勃起したとか宣う馬鹿者に睨むことだけは忘れない。 エルマーは涼し気な顔をして足を組んでいるものだから、周りから見たら顔のいい男が休憩しているだけのように見えているだろう。 大通り、腰掛けているベンチの向かいのカフェに座っている御婦人方が、エルマーとレイガンを見つめて手を振ってアピールをする。 それに気づいたナナシが、むっとするとエルマーの腕にぎゅうと抱きついた。 「だから勃つってえ!」 「やかましい!!」 レイガンは苛立った声で窘めた。マジでいい加減にしろという気持ちを込めて。 宿に戻ったあと、アロンダートとサジに今日あった事の顛末を話すと、やはりユミルからしたナナシの血の匂いというのは見過ごせないということになった。 「やっぱもっかい会うしかねえか…」 そこでやはりユミルと一度あって確認するべきという話になり、その時が来た際には何があってもすぐに対応できるようにと、姿を消したサジが潜むことになった。そして、その話を唇を突き出して聞いていたナナシはというと。 「っ、…」 ひくんとエルマーの内腿が震える。腰が無意識に揺れてしまうのを理性でなんとか抑えると、足の間に顔を埋めたナナシの薄い唇と舌が、エルマーの性器を追い詰めるかのように、ちゅぷ、と水音を立てて弄ぶ。 「ナナシ、も…俺がさわりてえ…」 「やら」 「やら、って…」 たしんと尾で床を叩く。余程ご機嫌が宜しくないらしい。その薄紅色をした唇が、己の性器に這わされるだけで視覚的な刺激も含めて達してしまいそうになる。 エルマーは額に手を添えるようにして顔を隠すと、熱い吐息を震わせる。 気持ちがいい。 あの話し合いのあと、むすくれたナナシがエルマーの手を引っ張るようにして、二人が使う奥の寝室へと連れ込んだ。 てっきりふて寝するのかとのんきに考えていたエルマーは、ご機嫌ななめの可愛い嫁に「ナナシ、きょうはわるいこだから、えるにいじわるしてもいいんだよう」などと言われたかと思うと、「んー、んとー、ここ!ここをいまからいじめるですね?」などと下手くそな敬語で言葉攻めかどうかも困るようなことを言うと、ぱたぱたと尾を振りながらごきげんに性器をぱくんと咥えたのである。 「ん、なに…腹すかしてんの…」 「ンん、っ…ぅ、ん…ちゅ、ふ…」 「はぁ…、っ…くそ、…すげ、いいよ。」 「ふぁ、っ…」 ナナシの柔らかな口の中は、まるでエルマーの性器の形を覚えるかのようにして柔らかく包み込む。 ふにりとした唇で擦るように、裏筋の血管もぺしょ、と舐めると傘の張った部分をパクンと咥え、ちぅちぅと吸う。エルマーは眉間にシワを寄せながら、ぴくんと腰が震えるたびに掠れた声を漏らすので、ナナシはその反応がもっと見たくてぱたぱたと尾を振る。 「ぁ、な、ナナシ…っ…」 「ん…える、かぁいい…」 きゅう、とエルマーの袋が漲る。膨らんだ性器がぱつぱつに張る。もうすぐ、ナナシの征服欲が満たされるのだとおもうと、だらしなく口から唾液を垂らしながら歓喜に震えた。 ナナシで気持ちよくなってくれるのは、それだけで嬉しい。 エルマーは小さく息を詰めると、ゆるく足を開いてナナシの頬に両手を添えた。 その顕になったエルマーの赤らんだ顔に、ナナシはしびびびっと背筋を甘やかにふるわせると、ピンッと尾を立てて腰を震わせた。 エルマーのナナシを見つめる感じ入った顔で、優しく微笑まれたのだ。 「きゅ、ぅ…ンっ…」 「ふは、…っ、も…イく…っ…」 「ンン、ん…んくっ…」 「っぁ、…は…」 びゅ、びゅ、びゅくんっ、と数度に分けて、ナナシの口の中に甘やかな糖蜜のような魔力とともに、精液が溢れる。 その小さな頭に腰を押し付けるようにして、エルマーが射精をするから少しだけ苦しい。苦しいけど、嬉しくて思わず途中に甘えたな声が出てしまった。 エルマーの性器を含んだまま、んくんくとそれを数度に分けて飲み込んだ。脳がとろけて、ふわふわで、なんだか幸せが過ぎてぼうっとしてしまう。 「んゅ、ふ…ぁー‥」 「いいこ…ふは、」 ぺしょ、と手についた先走りをうっとりした顔で舐めとるナナシが可愛いが、仕舞わせないぞと言わんばかりに出したばかりの性器を握りしめられればエルマーだって否やはない。 両脇に手を差し込んで抱き上げ膝に跨がらせると、ナナシがぶんぶんと尾を振りながらが唇をぺしょぺしょと舐める。 「ん、抱いていいか?」 「うん」 頬を染めながらすりすり甘えるナナシをあやしながら、エルマーはそのいいこな回答ににっこりである。 しばらく抱いてなさすぎて、エルマーだって限界が近かった。どうやら腹の子も飢えているようで、ナナシが積極的なのも非常によろしい。 エルマーはするりと長いチュニックを尻の下から引き抜くと、その服をスポンと脱がせた。 「は!?」 「う?」 「お、おま、おおお、お、おまえこれ、」 「んと、さじがくれたのう」 キョトンとした顔で見上げたナナシが、ようやくエルマーの言いたいことがわかったらしい、にへらと嬉しそうに笑う。 エルマーは、呆気に取られたように鼠径部から後ろに回る紐のような下着をみると、ガシリと尻を掴む。どうやら足の付根と鼠径部からの紐で支えるものらしく、ナナシの尾が隔たりなく揺れている。 「あのね、ぱんつね、しっぽでずれちゃうようっていったらね、サジがくれたんだよう」 「なるほど…ああ、たしかにそうだな…」 「ひぅ、ぁ…」 尾の付け根を絞るようにゆるく握られ、擦られる。それだけでナナシは太ももが震えるほど気持ちがいい。それでも、足の上にまたがるナナシの性器を包み込む小さな布は、ゆるく立ち上がったことで薄い腹と布地の隙間を広げている。 エルマーは思った。たまにはいいのをくれるじゃないかと。 もにもにと尻の軟肉を手で翫びながら、心のなかで理性がどうか持ちますようにと合掌をすると、いただきます!と元気よく言った。

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