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幸せの3文字(結婚編)エルマー×ナナシ

あの大騒動が終幕してから、もう3日が経った。三日間何をしていたかというと、シュマギナール城の与えられたひと部屋で寝倒して寝倒して、途中に起きてセックスをして、寝具に包まれたまま無精に飯を喰らい、またセックスをしてねこけると言う怠惰を地で行くような生活をしていたのだが、サジとアロンダートだってそうだろう。 レイガンはというと、すまんが先に行くとか言ってさっさとカストールに向かっていった。エルマーからしてみれば元気すぎるだろうあいつ。であるが、やはりユミルの元に帰るのに時間が惜しかったらしい。三日立ったので今頃ついているかもしれないなあ。そんなことを思いながら、少し膨らんだナナシの腹に納めたままの性器を悪戯に動かし、反応を楽しむなどの意地悪をする。 「える、やー!」 「うっ」 ぺちんと音を立てて、ナナシの手の平がエルマーの顔に張り付いた。 真っ赤な顔をして、涙目の番の可愛らしい抗議が愛おしい。張り付いた手を剥がし、あぐあぐと指先からふざけて甘噛みをすれば、へにょりとお耳を下げて涙目で見上げられる。 「やだよう、もうおなかいっぱい…」 「あー、まさか自分の出玉がこんなにあるだなんて思わなかったわ。」 「またきもちわるくなったら、やだ。」 「うっ。」 うる、と涙目でむすくれられて、ようやっと思い出す。そういえば魔力譲渡のし過ぎでナナシが悪阻で苦しんだことを思い出したのだ。なんという不甲斐なさ。エルマーは渋い顔をすると、ゆっくりと、本当に名残惜しそうにしながら性器を引き抜く。 こぽ、と、音を立てて熟れたそこからとぷりと漏れ出す精液は、ナナシの尻の下のシーツを濡らすほどである。 尻尾の付け根までびしょりと濡らしたナナシが、腰が抜けたまま犬の降参のように腹を向けてエルマーを見つめるものだから、ついかわいくてぱくりと性器を咥えてしまった。 「ひぅ、っ!」 「あ、わり、つい。」 「ふぅ、あー‥!」 「いてえ!いてえばか!地味に尾は痛えんだって!」 ぷんすこしたナナシによる尾での物理攻撃に、慌てて体を離す。精液だけではない微かに膨れた薄い腹を隠すように枕を抱きしめると、がじがじとその端に噛みつく。 くすんと鼻を鳴らしたナナシが、不満そうにびしびしと尾で布団を叩く様子を眺めながら、この三日間で汚し倒したベッドの巣の上、エルマーはもうしねえからと手招きをした。 「おいで、お前とやりてえ事があるんだ。」 「う?」 ぴくんと耳を揺らす。なんだろうとクッションを抱きしめたままのそのそと近づくと、その腰を引き寄せて寝転がる。 仰向けのエルマーの上に裸のナナシを乗っけると、ナナシの持っていたクッションを拝借して背もたれをつくった。 「もうちっとしたら、シャワー浴びて街に出よう。んで、お前の着る服選びに行くぞ。」 「ふく、もってるよう?」 「ちげーよ。お嫁さんが着る服。」 「およめさん…よめご…?」 クッションにもたれかかったエルマーが、もにりとナナシの尻を揉みながら言う。服で隠せばわからないが、腹が膨れたことに伴って腰回りの肉付きも少し良くなったように思う。 全体的に柔らかくなったのだが、なによりもホッとしたのは太腿周りの不安な隙間がようやく性器を挟めるくらいまで埋まってきたのだ。まったくもって大変にいやらしくてよろしい。 エルマーは素股と言っても尻肉やら袋に擦り付けるか、ナナシの足をクロスさせて腰を打ち付けるかくらいしかしなかったので、この魅惑の肉付きは離し難いものがある。 閑話休題、兆した愚息に再戦を察したナナシが逃げようとするので、慌てて話を戻した。 「俺の嫁御になんのに、式がいるっていったろ。まあ、しなくてもいいんだけどさ。俺が見てえっつーかなんてーか…」 なんとなく、面映ゆくなって頬を掻く。ナナシの様子をちろりと見つめると、尾を振り回しながら目を輝かせる。ウッ。俺の嫁が今日もこんなに愛おしい。ナナシの金色の瞳は蜂蜜のようにとろけ、嬉しそうにはにかんだ。 「およめさんにしてくれるのう、たのしみ」 「まずはドレスだな。トッドんとこで頼もうぜ。デザインは、そうだなあ。ナナシの着たいのにしような。」 「えるがえらぶですよ?」 「俺がえらんでいいのか?」 ぱたぱたと、先程とは打って変わってごきげんに尾を振り回すものだから、エルマーが吐き出して尻から漏れた精液が部屋の調度品を汚す。 いくらかもわからないような謎の壺に入っていったのを見て引きつり笑みを浮かべると、慌てて振り回すナナシの尾を手で止めた。 「調度品孕ます趣味はねえから先ずは掃除からだな…」 「おてつだいするよう!」 「割りかねねえからナナシはベッドな。」 「えー‥やだあ!」 「ヤられたくなければ大人しくしてな。」 「あい…」 謎のやる気を見せたナナシを窘め、まあまずはシャワーだろうと細い体を抱き上げる。 ぺしょぺしょとエルマーの頬を悪戯に舐めるものだから、浴室につく頃には再び兆してしまう。 結局自身で火をつけてしまったエルマーに、中出しこそされなかったものの抱き潰されたナナシが目を覚ましたのは、さらに翌日の昼過ぎであった。 「この日をアタシがどれだけ待っていたことか!!!」 神よ!!と両手を広げてトッドが大袈裟に叫ぶ。エルマーとナナシがたっぷりと休養して、そしてようやくゆっくりとデートとあいなった今日。エルマーがナナシとともに来たのはトッドの店だった。 「アタシもね、暇じゃないのよ?でもお得意様二人からせびられちゃあ、優先順位なんてきまってるわ。」 「二人?」 「あら、あの騒動のあとレイガンがきったない格好してウエディングドレス注文していったのよ。とりあえず寸法は出向かなきゃ測れないわっていったから、カストールに行かなきゃだけど。」 「ああ…あいつフットワーク軽過ぎだろう…」 「あんた達どこで式上げんのよ、ここはしばらく神前式は無理そうよ。」 ナナシが興味深そうにカラフルな糸が巻き付けられたボビンを見てはパタパタと尾を揺らす。エルマーはユミルに聞く前にウエディングドレスを注文していったレイガンの鬼気迫る顔を想像して、少しだけ呆れた。 「ちなみにレイガンが注文していったのはこのドレス。とりあえず生地の発注は済んでるから大丈夫なんだけど。」 「ふりっふりじゃねえか…あいつ意外とロリータ趣味なのか…」 「ナナシもみる!」 ひょこりとエルマーの腕に挟まるように顔を出したナナシが、レイガンがたのんだというドレスを見る。白を基調としたそれはフィッシュテールになっており、前が短いデザインである。成程あいつは絶対にこのガーターを履かせたかったのだろうなと思うくらい、可愛さの中に少しのセクシーさを織り交ぜたような男心を擽るデザインである。ちらりと見えるショートパンツからつながるそれは、たしかにユミルには似合いそうだった。 「なんでおひもでてるのう?」 「これはガーターベルトっていって、ストッキングを止めるためのものなのよ。」 「ふうん、ゆみるにあいそ」 ふにゅふにゅ言いながらまじまじと見つめる。これから自身も選ぶはずなのに、全く持って本人が他人事である。エルマーはとりあえずデザインを見せてくれというと、シルエットのサンプルは出来ていると言われたので、二人して別室に向かうことになった。 「うわ眩し…」 「ふわあ…かみさまのふくみたい…」 「うふふ、よしなさいよ。そんなに褒めたって何も出ないわ。」 トッドご自慢のドレス達は、皆誇らしげにトルソーに飾られている。バッスルスタイルのもあれば、トレーンの長いプリンセスラインのもの、そしてマーメイドラインは細身のシルエットで、ナナシのスラリとした体型に合いそうだ。いやしかしプリンセスラインもいい。あのスカートの中にお邪魔したい気もしないでもない。 エルマーの真剣な表情の裏側で、とんでもなくけったいなことを考えているなどとは終ぞ思わず、ナナシはセフィーみたいなドレスがあるなあと、セフィラストスが聞いたら悲鳴を上げそうなことを思いながら、スレンダーラインのドレスを見つめていた。 「まあ、とりあえず片っ端から試着してみましょうか。ナナシちゃん、こっちきなさい。」 「う?」 「おー、決め切らんねえから着てみ?」 「はあい。」 トッドに手招きされながら試着室に連れて行かれる。カチャカチャというハンガーとラックの擦れ合う音がカーテンの奥から聞こえてくる。 エルマーはプリンセスラインのトルソーの前で、一体したは何がどうなってんだとバサリとまくったりしながら待っていた。 シャッ、という音がして引かれたカーテン。 トッドがむすくれた顔でエルマーを睨みつける。 「あんたね、お盛んすぎよ。せっかくのドレスがキスマークで気が散らされて、全然吟味できないじゃない!」 「あー、そういやあそうだ。どれ、ナナシみしてみ。」 「うー‥」 トッドの大きな体の影から、髪を緩くまとめたナナシが気恥ずかしそうに顔を出す。 ロングトレーンのマーメイドラインに身を包んだナナシの細い足が、スリットからちらりと覗く。 エルマーの頭の中からプリンセスラインのドレスのイメージが遠く彼方へと消えていく。 男性なので細身のパンツは履くとか言っているが、そんな野暮な布でナナシの御御足を隠そうだなんて無粋な真似をしたら、サラマンダーの魔石で燃やしてやる。 口を開けたまま固まっているエルマーを見ながら、トッドはニヤリと笑った。 「気に入ったようでなによりね?」 「俺の嫁が世界一可愛い!!」 「うわうるさ。」 顔を両手で隠すようにして崩れ落ちたエルマーに、トッドは引き、ナナシは躓きそうになりながらよたよたと近づく。ヒールを履いたのだが、まあ驚くほどあるき辛い。まるでぬいぐるみが歩くようなぎこちない歩みでエルマーのもとに向かうと、耳をしょんもりさせながら大きな尾を抱きしめる。 「あのね、しっぽきゅうきゅうやだなの。」 「なら尾まできれいに出せるように背中はスリットとレースでなんとかしましょうね。」 「んなエロい格好誰が許すと思ってんだあいいぞもっとやれ!!」 「あんたさっきから喧しいわよ。」 もふもふと尾を弄りながら、ナナシがいつもより目線の高い自分にソワソワする。エルマーとの距離が10センチは縮まったのだ、ちょっと顔を上げるだけですぐ唇が触れ合うだろう。 すごい、このお靴つおい。そんなことを思いながら、少しだけ大人になったような気分になってしまい、もにょりと口をむず痒くさせる。 うにゅうにゅと唇を動かすナナシが照れているのだと悟ると、エルマーは真顔でトッドに向き直った。 「これにする。全部くれ。」 「やった!毎度ありー!全部で金貨7枚、高額だけど払える?」 「俺を誰だと思ってやがる。すぐに換金してくらあ!!」 「手持ち足りなかったのね、ダッサ」 「うるせえ!ナナシ、お前そのまま待ってろよ!俺ちょっとギルド行ってくっから!」 えー!というナナシの声をバックに、エルマーはインベントリ片手に物凄い勢いでトッドの店を出る。出掛けにトッドから、ベールも作るならプシュケーバタフライの繭は必須よー!と言われて、エルマーの足が止まる。 「獲りに行ってくらあ。」 「バカ。さきに金貨7枚耳揃えて払ってからよ。まけてあげるから。」 「まじで!!!」 うおおおおおといいながら走り去る旦那予定のエルマーを、トッドの脇からヒョコリと顔を出して見送る。 ナナシはムスくれたままじっと見つめていたのだが、ぎゅうっとトッドの腰に抱きつくとぱたぱたと尾を振る。 「ナナシ、トッドとおるすらん?」 「そーよお、いっしょにお留守番しましょうねえ。ナナシちゃんの旦那のタキシードもみる?」 「たきしーどってなに?」 「男が着る白いお洋服よ。ナナシちゃんのドレスみたいなの。」 はわ、と頬を染めると、わくわくしたらしい。こくりとうなずくと、急かすようにトッドの手を握る。 「えるの、かこいいやつにする!おうじさまのやつ、あれがいい!」 「えー、あいつ王子様というよりも海賊の頭みたいになりそうねえ。」 「かいぞく、それもいい。おててにふっくつける」 「あら、確かに似合いそうね。」 ナナシがヒールを脱いでぺたりと素足でフローリングに立つと、トッドが簡単な室内履きを貸してくれた。これが一番楽である。細い足で大きな室内履きをぱたぱたさせながら、長いトレーンを尻尾ごと抱えるナナシは、ご機嫌なのか調子っぱずれの鼻歌を漏らす。 トッドはおかしそうに笑うと、ナナシの大きなお耳ごと頭を撫でてやった。 「結婚式、アタシも混ざっちゃおうかしら。」 「おいでー」 「あっはは!どこで覚えてきたのそんなお誘い!」 「えるがよくいうよう。」 ナナシによく言う、えるのおいでは幸せの3文字だ。 くふくふ楽しそうに口元を隠して笑うのは相変わらずの癖だけど、こうして周りを気にせず自分を出せるようになったのは、全部エルマーのおかげだった。 ずっと一緒にいれたらいいなあ。そんな小さな夢が叶うのだ。神の御使いは今度こそ幸せになる。人の夢を叶える喜びと、自分の夢が叶う喜び。どちらもかけがえのない幸せは、今度は3人で作ってく。 少し膨れたお腹を撫でる。早く帰ってこないかなあ。 ナナシの思いが通じて、エルマーが勢い余ってトッドの店の扉を壊すまであと5分。

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