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あの日の代償(結婚編) エルマー×ナナシ **
一眠りして、起きたら早朝である。
窓から差し込む朝の空気は薄青掛かっており、日が出始めて間もないということを教える。
下着姿で寝ていたエルマーはというと、暖を取るように腹巻きにタンクトップだけのナナシを抱き込みながら、今何時だと寝ぼけた顔であたりを見回す。
部屋全体が大きな窓から取り込んだ光に当てられて、なんとも心地よい静かさだ。
隣から聞こえる、静かなナナシの寝息がかわいい。
時折ぷうぷうと鼻を鳴らしては、くちゅんとくしゃみをしてモゾモゾと顔を潜り込ませる。
エルマーはゆっくりとナナシを起こさないように起き上がると、備え付けのキッチンでコーヒーを作る。さすが高級宿、サービスのコーヒーひとつをとってもなかなかに上質なものをおいていた。
「……、」
思えばこうしてゆっくりとコーヒーだって飲んでいなかった。根無し草過ぎて家もない。本当に今更すぎるが、子供が生まれるのに家がないのは不味いと思い至った。
カストールは海辺で、しかも地元だ。住むには申し分ないのだが、子育てをする環境かというと国柄的に奔放がすぎる。
物心つく前から隷属者を連れる貴族なんて見せてしまったら、それが当たり前だと思ってしまうかも知れない。
だとしたらやはりシュマギナールか、いや。今は治安が良くないから、少し離れた場所がいい。そうしたらやはりドリアズか。
あそこならロンの子供もいる。子育てに迷っても相談できる相手がいるのはありがたいことだ。
なら、場所は…とかんがえていたら、ベッドルームから情けない声が聴こえた。
「ひぅ、えるぅー‥?」
どうやらナナシが起きたらしい。広いベッドの上で、エルマーがいないことが嫌だったらしい。
「おー、ここにいるぜ。まだはえーよ。寝ててもいいんだぜ?」
「んう、…える、いなくなったかとおもた。」
若干の涙目で尾を抱きしめる。ふんふんとエルマーの持っているコーヒーの香りに興味を示すので、試しに一口のませてやると、恐る恐る赤い舌をチロリとみせながらぺしょりとひと舐めする。
「んべっ…にがぁい…」
「まあ、大人の味だな。」
「…のむ」
大人の…と難しい顔をして挑戦しようとするナナシの頭を撫でると、エルマーは残りのコーヒーを飲み干した。妊娠しているのであまり飲ませないほうがいいかと思ったからである。
「あう…」
「二度寝するか?」
「ん、」
こくんと頷いたナナシの頭を撫でると、サイドテーブルにコップを置く。そのままナナシの横に潜り込むと、いそいそと腕の中が居場所だと言わんばかりに潜り込む。
エルマーをちろりと見上げると、ぱたぱたと尾を揺らす。こういうときはだいたいキスを待っているのだ。
「ん、」
「んう、…もっかいして」
「いーぜ、ならまたがんな」
「うん、」
ちゅ、とバードキスを送るだけじゃ足りなかったらしい。ナナシがもぞりとうごいてエルマーの上に乗っかると、再びふにりと唇をくっつける。ぺしょぺしょと唇を舐めるナナシに、なるほどもしかしたら誘っているのかもしれんと理解した。
「シてえの?」
「うー‥、」
ナナシの足の間膝をもぐりこませれば、小さな尻は持ち上がる。確かに足に当たるそこは熱を帯びており、なるほどナナシも朝勃ちをすることがあるのだなあと変に感動した。
はむはむとエルマーの下唇を甘噛みするナナシの尻尾が、寝具をまくりあげてぴんと立つ。エルマーはその柔らかな尻を覆うように手で触れると、そっと下着の中に侵入した。
「抱いていいか?」
「ひぅ、…ぅん…」
「ふふ、」
顔を赤らめながら小さく頷いたナナシの唇を、割り開くようにしながら舌を侵入させる。縮こまっていた薄い舌をそっと舐めあげると、エルマーの足に当たるナナシの性器が固くなった気がした。
「ん、んふ、ぁ、」
はふはふと吐息を漏らしながら素直に答えるナナシに、エルマーの手は尻を揉みながら、片手でそっと縦に割れたナナシの蕾をなぞるかのように指先でくすぐる。睫を震わしながら、吐息混じりに感じ入るナナシが可愛くて、エルマーの性器は張り詰める。
「な、あのときの約束覚えてるか?」
「ふぁ、なにぃ…?」
「何でも言うこと聞くっていったやつ。」
「ひぁ、っあ、や…んっ、」
「なあ、ナナシ…だめか?」
「はぁ、あっ、え、えるぅ…」
あぐ、と耳を甘噛みされ、ナナシの大好きな少しかすれた声でおねだりをされる。これはずるい、そんなふうに言われたら、いいよしか言えなくなってしまう。耳の内側を舌で舐められると、気持ちよくて腰が跳ねる。思わず小さく頷くと、エルマーはとんでもないことを言った。
「な、そこのベッドフレームに手ェついて、尻こっちよこせ。」
「う?」
嬉しそうな顔してナナシの頬に口づけたかと思うと、その手をベッドのフレームへと誘導させる。
エルマーによって引き下げられた下着を片足に引っ掛けたまま、ナナシは頭に疑問符を散りばめながら膝立ちになる。
「これ、やだよぅ…」
「おねだり聞いてくんねえの?」
「うぅ、…はずかし…あっ、」
「ほら、腰落としな。」
容赦なくエルマーによって細い腰を捕まれ、ナナシは跨がされた顔の上、こぶりな尻を押し付けるかのようにしてエルマーの顔の上に腰を下ろす。
ぴんと立った尾の根本を擦られ、ゆるゆると足が開いてしまう。
「ひゃ、んっ…あ、え、える…これ、ゃだあ…!」
「約束したろ、ほら、感じてな。」
「んぁ、っ…あ、はぅ、う…」
エルマーの声色が、楽しげな色を含む。太腿でエルマーの顔を挟むようにすると、大きな手が尻肉を割り開いてその蕾にねとりと舌を這わせた。
ナナシの記憶にあのときの言葉が蘇る。もしや、これが顔面騎乗というやつか。
「ぇる、こ、これ…ぁ、あっ!」
「やめねー、シていいって言ったのナナシだかんな。」
「ひゃ、んぅうっ、やー‥!」
尻のあわいを舐められたかととおもえば、中を開くようにして指を差し込まれる。恥ずかしい水音をたてながらぬるりと差し込まれた舌と指に、ナナシの背筋は痺れる。
安請け合いしてしまったことを後悔してももう遅い。ナナシは細腕でベッドフレームに縋り付くようにして腰がへたらないようにしているのに、エルマーは楽しそうに腕を回して太腿を掴み下げてくるものだから、エルマーの顔の上にぺたりと座り込んでしまう。恥ずかしい、えらいことである。
ナナシは、ひんっ…と、泣きながら尾をピンと立たせて、楽しそうに弄るエルマーの顔を恨めしげに見下ろす。
「ふふ、」
「ぅ、やだあー‥!」
ふふ、じゃない!
整った顔で楽しげに目を細めているのは最高にカッコいいのだが、ナナシのこぶりな袋に鼻先を埋めるのも辞めて欲しい。垂れた先走りで顔を濡らし、ご機嫌に水音を立てながらぬとぬとと舌先で内壁を舐られる。
なんだか尻に力が入らなくて、太腿も震えてしまう。内壁を舐められるリアルな感覚と、エルマーの息遣い。
気づけばナナシの性器はふしゅりと精をちらし、エルマーの顔にピシャリとかかった。
「ひっ、ぁ…」
「ん、もう無理そうか?」
「ぇ、る…も、やらぁ…ひぅ、うー‥」
「ありゃ、泣いちまった。」
エルマーの整った顔にとろりと垂れたナナシの精を見て、居た堪れないやら恥ずかしいやら、そして何よりも蕾が甘く痺れてしまって腰が抜けた。
顔についた精を舐めとり、へなへなの状態になってしまったナナシの体をエルマーが腰を持つことで支えると、そのふるりと濡れたナナシの性器を赤い舌で舐め上げた。
「やぁ、ぅ…!」
「ン、ほら、腰降ってみ。」
「あ、あぁ、ゃ、やだあ…」
かぽ、と開いた口へ勃起したナナシの性器を招き入れる。腰が抜けるほど気持ちがいい。
濡れたエルマーの舌が裏筋を舐め上げ、舌に精液を絡めながら甘く吸う。
腰が痺れて、うまく動かせない。それなのにエルマーが意地悪に性器に吸い付くから、ナナシの尾は気持ちよさそうに震えながら、下手くそに腰を揺らめかせる。
ベッドのフレームをきつく握りしめ、はふはふと荒い呼吸をしながら、めそめそと泣きながら喘ぐ。
きもちいい、どうしよう。お口の中で、ナナシのそこが溶けてなくなってしまいそう。ぐつぐつとゆだつ思考の中、エルマーによって飲み込まれるようにして奥深くまで咥内に招き入れられ、遂にこらえきれずに二度目の精をエルマーの口の中に流してしまう。
「ふぁ、あっ…あ、ぁー‥」
「ん、」
甘露のようなそれを、喉を鳴らして呑み込む。ナナシのとろけた顔がエルマーに向けられて、こくんと喉を鳴らして飲み込まれた己の精液に顔を赤らめる。
「ふは、ごっそさん。」
「ひ、ん…っ…も、ほし…っ、」
「おう、ちっと俺もやべえわ。」
ナナシの体を下げさせると、腹筋を使って起き上がる。膝に跨るナナシと向かい合うようにして唇を重ねると、細い腕が我慢ならぬと絡まってきた。
かつりと、ナナシの犬歯が当たるほど余裕がないらしい。こんなにも求められては、エルマーとて断るつもりもない。
ナナシの蕾に指を滑らせ、中指と人差し指をゆっくりと含ませだ。口付けの合間に微かに漏れたか細い悲鳴に、エルマーの興奮はわかりやすく煽られる。
指を開くことで広がった入口に、そっと先端をあてようとしてはたと思い出した。
「あ、ゴム。」
「ふあ…?」
睫を濡らしたナナシが、なにそれと言う顔でエルマーを見る。わたわたと身体をひねり、ベッドの横に落とした己のボトムスからレイガンに貰った避妊具を取り出すと、ぴっとフィルムを切りとる。
「える、それなにい…」
「避妊具。この吹き溜まりんとこに俺の出すんだわ。魔力酔い起こさねえようにさ。」
「にんしん、する?」
「ゴムは妊娠しねえから安心しな。」
眉を下げながらそんなことを言うナナシの額に口付ける。どうやら避妊具の色がピンクだった為に勘違いしたらしい。割と一般的な色なのだが、エルマーが避妊し無さすぎてナナシにとっては初見だったのだ。
「…俺が育てた。」
「う?」
「わり、なんでもねえよ。」
きょとんとしたナナシの唇に吸い付くと、脚を抱えたまま開かせる。足の間に身を滑らせ、腰を落ち着けたエルマーが、その柔らかにとろめく蕾に性器をあてがうと、ゆっくりと腰を勧めた。
「ひっ、ん…う、ぅゃ、ぁ、あ?」
「ん、…」
被膜をまとった性器に、いつもとは少し違う感覚がする。ナナシの頭は疑問符を散りばめながら、きゅんと締め付ける。なにか物足りなさを感じる。
エルマーも同じなようで、ナナシの額に口付けるとゆっくりと腰を揺らめかす。
ぷちゅ、という粘液が弾ける音がしたのを皮切りに、腰を密着させたエルマーが奥深くまで腰を打ち付けると、内壁をこそげ取るような強い刺激にナナシの背中が反らされた。
「きゃぅ、あ、あっ!ひ、ひんっ…ぇ、えるぅ、ア、あっや、やぁ、あらぇ、っゅ、くり…っ!」
「うーん…」
「ふぁ、あっあ、あ、あ、っ!ゃ、やあ、っま、っへぇ…っ」
「ここ?」
「ぁ、あっき、きもひ、っんゃ、ら、っイっ、ちゃ…ぁあ、んっ、」
エルマーの首に縋り付きながら、火傷するのではないかと思うくらいの強い快感に喘ぐ。
ナナシの性器は律動にあわせぺちぺちと互いの腹の合間で跳ね回り、エルマーは腰を強く打ち付けながら、ナナシの首筋に甘く歯を立てる。
えぐえぐと泣きながら縋り付くナナシの頭を撫でながら、エルマーはやはり被膜を隔てることでの違和感が拭いきれぬまま、がつがつと貪る。気持ちいい、気持ちいいのだが物足りない。
ナナシはいつまでも吐精をせずに攻めたてるエルマーのせいで前後不覚になりながら、まるで探るように腰を揺らすいつもとは違うエルマーを、性器を締め付けながら仰ぎ見た。
「ぇ、える、っ…へ、へん…っ、や、ぉわ、ってぇ…っ、」
「ん、もーちょい、っ」
「ふぁ、ゃ、な、なが、いぃ…うぁ、あー‥っ、」
気持ちいいのと辛いのがない混ぜになってナナシの涙腺を叩く。エルマーはようやく何時もよりも執拗だったことに気が付いたらしい。じんわりと包むように締め付けるナナシのそこが痙攣していることに気がつくと、固く張り詰めたそれをゆっくりと引き抜く。
指で内壁を探ると、中で何度も達していたらしい。とろみのあるそれがエルマーの指に絡み付く。引く付きながら閉じることを忘れたように収縮するそこに、エルマーの喉が鳴る。
「なあ、生でしていいか。」
「なま…?」
「ゴム、とっていいか?外に出すからよ。」
「んぅ、…うん…いーよぅ…」
骨抜きになったナナシの頬に口づけおねだりをする。甘えてきたエルマーの髪を撫でると、ナナシの手がエルマーの性器に絡みつき、根本まで覆う薄い被膜を引っ張った。
「やらし。待てねえの?」
「ぬいたら、おなかさびし…」
「えろくなったなぁ…」
「えろ、えるだよう」
頭がぼんやりしている中、とりあえずエルマーの持久力がいつもよりも長いのはこれのせいだろうと理解したナナシの手によって、はめられていた避妊具が外される。するりと白魚のような嫋やかな手が、血管の走るエルマーのそれに触れると、ゆるゆると握りしめてひとこすりした。
「あー、やっぱゴムはいけねえ。色んな意味で。」
「うー‥、っぁ、あっ!」
片足を担がれ、ナナシの手の上から握りしめると数度扱う。滲んだ先走りを塗りつけるかのようにして蕾に押し付けると、まるで待っていたかのようにチュクリと音をたてて先端が含まれた。
腰がトロめきそうなほどきもちがいい。エルマーの呼気が震えたのを耳が拾うと、もっと気持ちよくなってほしくて思わず締め付けた。
「っぁ、ばかやろ…、」
「んぅ、ふ…かぁ、い…」
ぱたぱたと尾を振りながら可愛いというナナシに、エルマーの理性の糸が張り詰める。
すべて性器を腹に飲み込ませると、ナナシの腰をつかんでゆっくりと奥の弁を開く。
「はぁ、あ、らめ、ぁっ、い、イっひゃぅ…っ…」
「いくらでもイけ、まだ朝だぜ?今日はベッドから出さねえから覚悟しな。」
「ひぅ、…ぁあ、っ!」
ゆっくりと押し広げられるようにしてそこに侵入を許す。熱く弾力がありながら固く脈打つ性器を、喰むように味わう奥の部屋。
ナナシの雌になってしまう部分を犯され、そしてエルマーの恐ろしい一言に目を丸くすると、小さな声で悲鳴を上げる。
ナナシの真上に覆い被さるエルマーは、正しく捕食者の顔である。
赤く長い髪が檻のようにナナシを閉じ込め、きつく抱き込んだ。
そうだ、まだ朝なんだった。
明日はきっと動けないかもしれない。ナナシはそんなことを思いながら、ゆるゆるとエルマーの背に腕を回して抱きついた。
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