139 / 163

さて軍資金の調達ですが。(結婚編)エルマー×ナナシ *

「ひっ、んぁ、…!」 ぎしりと悲鳴を上げるベッドのスプリング。白いシーツの上に縫いつけられた手のひらに絡まるようにしてエルマーの無骨な手が拘束する。 感じ入って啜り泣くナナシの体を隠すように覆い被さりながら、白い足を揺らすように律動を繰り返す。 「ふぁ、も…ほし…ゃだあ…」 「ん、やめろ。ぎりぎり堪えてんだからよ…」 愚図るナナシの蠱惑的な囁きに乗ってしまいそうになる。自分で外に出すと約束した手前、いくらナナシのオネダリでも発言を覆すのはだめだと思ったのだ。 ナナシにとっては、いつも腹の奥で散らされる熱が嬉しいのに、意地悪をされている気がしてならない。イった直後に激しく内壁をこすられて、離すまいとしがみついてからは両手はベッドに縫い付けられた。 今は、エルマーに見下されながら、悪戯に腰を押し付けられながら背筋を痺れさせている。 「ふは、かわい。ここだろ?」 「んっ、ぁ、あ、あ、っあぁ、や…っ、」 「とけてるな。ほら、奥ひらけ。出来るだろう?」 「やだぁ、っ…や、ぅー‥!」 ひんひん泣かされながら、ナナシの大好きな声で意地悪をされる。開けと言って、待たずに入ってくるくせに。出してと言っても出してくれないくせに。そんなことを思いながら、じゅぷじゅぷと端ない音をたて、粘着質に泡立った体液がシーツを濡らす。陽はもう高く上がり、朝食のカートだって運ばれてくるだろう。 それなのにエルマーは全然辞めてくれる気配もない。 ナナシは腹の奥で、きゅうきゅうと性器にしゃぶりつくように内壁を収縮させながら、胸で荒い呼吸を繰り返す。 エルマーが屈むように近づいて、その胸の頂きを唇で挟んだ。 「きゃ、んっ…ぅあ、や、なんでぇ…っ…」 「少し膨れてきた。やーらし。」  「ぁや、っ!す、すぅ、のやー‥!ふぁ、あっ!」 両手の拘束が外れたのに、今度は大きな手のひらで脇から胸を覆うように掴まれた。エルマーのその整った顔が胸元に近づき、その赤く色付く胸の突起を唇に挟む。 孕んでいても。まだ母乳なんて出ないのに。ナナシは胸から走る疼痛がエルマーによって甘噛みされているからだと理解すると、全身の神経が過敏になってしまったような気がした。 「ひゃ、ぁっあ、あんっや、やら、ぁ、ま、まっへぇ…っ…」 エルマーの性器を締め付け、腰を震わしながらぷしゃりと吹く。精を出し尽くしたナナシの粗相を、エルマーは気に入っていた。   額に伝う汗を、ナナシの手のひらが髪をかき上げるようにして拭う。形のいい額と、傷が残る左目をそっと撫でると、エルマーがくすぐったそうな顔をした。 「ん、ふぁ…かぁいい…」 「余裕じゃねえか。」 「ひぅ、っン!」 突起を摘みながら、あぐりと小さな喉仏に齒を立てた。戯れるようなそれにナナシが小さく反応すると、エルマーを引き寄せるようにして抱きしめる。 「ぅ、ちゅうしてほし…」 「えろ。」 「ん、むー‥!」 エルマーの余裕がなさそうな腰遣いと舌を絡めた口付けに、ナナシの腹はきゅうきゅうと性器を締め付ける。荒い呼吸の合間、エルマーの眉間に皺がよる。イきそうな予感に性器を引き抜こうとした瞬間、あぐりとナナシの小さな犬歯が唇を甘く噛み、腰に足を絡めた。 「ちょ、まっ」 「やぅ、」 「っあ、ばっーーーー、」 びくんと身を震わし、引き抜くのが間に合わずにナナシの腹の奥にびゅくびゅくと吐き出す。、我慢していたその奔流は確実に妊ませると言わんばかりの量である。 その内壁に叩きつけるかのような熱い精液を腹の奥に感じると、ナナシの顔はうっとりとした表情で見上げてくる。 尻のあわいからぶぴゅりと漏れ出たエルマーの残滓、ナナシの胸元に顔を埋めるかのように腰を震わせたエルマーは、熱い吐息を漏らすと顔を上げた。 「ばかやろ、」 「んぅ、」 ぺしょりとエルマーの唇を舐める。大変に可愛らしくエルマーのご機嫌とりをすると、シーツを擦るようにして尾を揺らす。 「悪阻になんねえようにしてんのに…」 「えるの、ぜんぶナナシの。」 「ん、知ってる。」 赤い舌を舐めあげるように絡めると、そっと髪を梳く。 ゆっくりと性器を引き抜くと、こぷりとそこから漏れ出る精液がじんわりとシーツを濡らす。 「なあ、まだシてえ。付き合って、」 「へぁ…」 「ナナシの腹落ち着くまでいれねえから。な?」 耳元に舌を這わされ、抱き込まれる。色々なことがおわってから、エルマーはずっと我慢してたんだよと言わんばかりにナナシのすべてを丸呑みにするかの如く貪る。 一回のセックスが長く、そしてこうして服を着ないで過ごす時間のほうが長い。 労るように甘やかしてくれるから、ついついこちらも答えてしまう。 あの蜂蜜のようなとろめく瞳でお伺いを立ててくるのが、ナナシの大切な雄なのだ。断るという選択肢はない。甘んじて腹を上に向け、どうぞ召し上がってくださいとばかりに柔らかな体を差し出す。 エルマーだってそれをわかってる。だからナナシの舌が己の唇に這わされるのを待っている。それがいいよの合図だからだ。 「える、」 白い手がそっとエルマーの顔を包み込む。鼻先を擦り合わせ、そっと瞼が閉じられた。頬を染めたナナシの艷やかな舌がぺろりと唇を舐めたのを合図に、エルマーの手の動きが再び欲を孕んだ。 「最っ高だったあ。」 「そ、れはよかった。」 昨日の回想を、とくとくとレイガンにきかせていたエルマーは、ナナシの痴態を思い出したのか堂々とそこを張り詰めさせるものだから、レイガンは思わず二度見をした。 昨日は日がな一日、まあ明け方からナナシとセックスをし、念願の顔面騎乗もしてもらい、ペッティング。そしてエルマーがナナシを甘やかしながら度重なるラウンドを繰り返し、最終的には目の前でわざと漏らさせた。 恥じらうナナシの痴態が大変にいやらしくてよろしかった。日がな一日爛れた行為に耽って耽って、そして本日。絶好調のエルマーとは裏腹に、文字通り抱き潰したナナシを宿からユミルの家までおぶりながら来たエルマーは、泣きはらした顔でぼんやりとしている事後の余韻垂れ流しのナナシを見たユミルによって、助走をつけて殴られた。 「お前は猿か。そしてまたたっている。頼むから俺にそんなものを見せないでくれ。」 「おっとやべえ。つい勃起した。」 「ついで勃起される方のみにもなってくれ…」 現在エルマーは、顔面にユミルに殴られた痣を拵えながら、レイガンとともに結婚資金の調達に着ていた。 因みにレイガンも昨日はお楽しみだったらしい。ユミルの首筋についていた赤い痕を指摘すると、堂々とヤったからなと言って、こちらも殴られていたからお揃いの痣を頂いた。 顔のいい男が二人、ギルドのカウンター近くに併設されているカフェで男前をさらしている。 どうやらランクの高い依頼はまだ張り出されてないらしく、朝からの依頼はランクの低いものが受理できるものしか張り出されていない。その為受付は駆け出しのものや、年嵩の低い若者たちで埋まっていたのだ。 だからレイガンとエルマーは受付に並ぶ若い新芽たちを眺めながら、微笑ましいような面持ちで茶をしばいていた。 「というか、お前Fだろう。いい加減更新しないと受けられるものが限られるんじゃないのか?」 「おー、俺は大丈夫なんだあ。赤毛のFランクでギルド内で要注意人物になってっから。依頼受けたらランク上げろって言われるだけでふつうにSまでは受けられるからな。」 「お前、それ誇らしげに言うことじゃないぞ…」 人様に迷惑を掛けるなとレイガンは言うが、特例すぎてギルドのほうがエルマーに合わせた形だ。Sを受けられるものは限られている。しかも、Fランクのまま更新しないエルマーのメリットとしては、実力は折り紙付きなので指名依頼で金額を上乗せすれば、そのまま近場の依頼までこなしてくれるというフットワークの軽さが売りだ。 Fランクのゴブリン討伐を仮押さえして、その隣の森に巣食うハイオーガをついでに討伐してもらえる。若手しか増えないどん詰まりギルドからしてみれば、そのへん一帯の危険を露払いしてくれるエルマーは重宝していた。 しかし自身で依頼を受けぬまま討伐して、その証明部位を近場のギルドに持っていったりするせいで、突然張り出された危険度の高いランク任務が、Fのエルマーが気づけば依頼を満了していた。というパターンもある。 これは大変に面倒くさい。通常の危険度の高いランクのものは、張り出されたときが一番報酬が高い。日数が立つに連れて、周りの被害が出るために支払える報酬は低くなっていく。 だからこそ緊急任務として張り出すのだが、ギルドが依頼者から金を預かるのは、任務が受理されてから報告をし、討伐完了の報告が来るまでの間に金を用意してもらう。 依頼を受理し、張り出す前にエマージェンシースポット登録をし、ランク外のものが行かないように注意喚起をするのだが、その前にエルマーが仕留めて持ってくると、そのすべてが時間の無駄だったということになる。出せる報酬の準備も大いに遅れ、ギルド職員が駆けずり回る羽目になるので厭われる。 だからこそ伝達されているのだ。赤毛で金眼の長髪軽装の男が来たら、注意しろと。 「あの、Fランクのエルマーさんですか?」 若そうな新人であろうギルド職員が、レイガンと話していたエルマーに声をかける。メガネの痩せぎすの男はバインダー片手にお辞儀をすると、少しだけ興奮したような顔で言う。 「ぼ、ぼく採用されたばかりなんですが、まさか規格外のFの人がこちらのギルドに来られるだなんて思いませんでした!採用時にあなたのことは言われてるんです、受理してもらいたい依頼リストは用意してますので、こちらにどうぞ!」 「エルマー‥」 「な?」 採用時に、ギルド研修の項目にイレギュラー枠としてエルマーへの対応の授業があったらしい。さすがにそれを聞いたときはエルマーとて思うところはあったのだが、それよりもレイガンがドン引きしていた顔が失礼過ぎて思わず突っかける方が先だった。 それを見た職員が、今は子連れではなく、本人自体はプライドが高く短気。などとメモを残したせいで、よりギルド内でのエルマーの対応が悪質なクレーマーのように精緻に共有されていく。 バインダーを受け取ったエルマーは、レイガンとともにペラペラとまくりながら、オーガ討伐と書かれた書類の備考欄に、その森の東でヒュドラが産まれたので新規へは注意喚起必須と書かれたそれを選んだ。 新人が見るのが依頼内容だとしたら、エルマーが見るのは職員用の備考欄である。赤い文字で書かれたものがSランクと同等の報酬を与えるものだとわかっているので、それを受けることにした。 「オーガ討伐ですね、かしこまりました!東の森に向かうにはオーガ出没区域近くにある湿地帯を抜けて、赤い実のなる木を目印に辿っていくとすぐにつくので行かないように気をつけてくださいね!」 「オーケーご丁寧にありがとうな。」 「あと、できれば夕刻までは長引かせてもらえると助かります!業務的なの意味で!これは独り言です。」 「業務的な意味でね。わかった、呑んでからくるわ。」 とても丁寧に道の順路まで教えてくれる職員に、レイガンはもはや諦めたような顔をする。流れるような説明は、恐らく対エルマー用に作られたマニュアル通りなのだろう。諦観の表情を浮かべながら、依頼主から渡せと言われた解毒薬のポーションを二人分受け取る。 これも、危険度の高い依頼をする場合に依頼主から好意でもらえる場合があるサポート薬だ。 こんなのを受け取る低ランク任務なんて聞いたことがない。そもそもオーガだってDからEランクなのだが、手負いのオーガということになってるらしい。オーガの文字の隣に括弧で無理くり付け足された感あるソレが嫌味のようである。実際エルマーに対する嫌味なのだが、本人は丁寧な仕事だなあと感心している。馬鹿なのだろうか。 こうして、エルマーとレイガンは新人ギルド職員による珍しい生き物を見るかのような瞳で見送られ、エルマーは結婚資金を。レイガンも同じくドレス代を稼ぐ為に、久方ぶりの魔獣討伐へと繰り出したわけである。

ともだちにシェアしよう!