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level.14
峯は床に座りながらサインの入ったポストカードをぼんやり眺め、昼間の柚莉愛とのことを思い出していた。
「あの柚莉愛ちゃんが……俺に触って、話しかけてくれた……夢だったのかな……」
本来の自分であれば、今頃最高に興奮していただろうし、いつもみたいにこの部屋に桐谷がいたのなら耳にタコが出来るほど何度も自慢したはすだったろう──。
相変わらず懲りることを知らない涙のせいでじわりと視界が滲みだし、悔しさで峯は瞼を乱暴に擦ると大切なポストカードを引き出しにしまった。
音のない部屋に突然チャイムが鳴り響き、峯は一瞬肩を揺らして反射的に玄関に視線を向けるが、扉の向こうにいる相手の心当たりが一人しかいなかったので特に立ち上がることもせず、そのまま床に座ったまま両膝を抱き寄せると、完全に玄関から視線を逸らした。
するとすぐに床に投げ出したままの携帯が鳴り、その正体は文字にしてハッキリ姿を現した──。
画面には"桐谷 虎羽"とハッキリ表示されていて、それだけで峯の胸はギリギリと締め付けるように痛む。
もう何日、あの声を聞いていないだろうか──。
この電話に出たら彼は何と話すのだろうか──。
「──男はお前とだけ? 彼女くらいいても気にすんなよ?」
勝手に悪い男を作り上げて峯は一人で小さく呟く。
──そんなはずない……。
桐谷が本当に優しいのはとっくに知っている。
駅前で自分を助けてくれたあの時から──
グスグスと鼻を啜りながら峯は重い腰を上げ、ゆっくりと玄関へと向かった。
覗き窓を見ることなくドアを小さく開けると、隙間からすぐに大好きな匂いがして、峯はそれだけで飛びつきたくなった。
それでもぐっと堪えて、峯は顔が半分見える程度の隙間から、向こう側に立つ男を睨むようにして見つめた。
「──何か……忘れ物?」
「凛人……」
「名前なんか呼ぶなっ!」
自分を呼ぶその声に心がすでに耐え切れなくなって、峯は視線を足元へと落として逃す。
「──ごめん……俺、お前にちゃんと話しておきたいことがあって……」
「──何? ゆりあって名前の彼女がいたこと?」
出来る限り峯は淡々と、ぶっきらぼうに話した。でないと今すぐにも泣き崩れてしまうからだ──。
「どこから……話せばいいのか……わかんない……けど。俺が好きなのはお前だけで──お前以外は好きじゃない──それだけは絶対嘘じゃない」
「信じない……」
「本当にごめん……あの時も黙って逃げてごめん──」
「──意気地なし……」
「うん……ごめん」
峯は口から溢れた"意気地なし"という音の響きにふと何かを思い出した──。
デジャブみたいなこの感覚──。まるで誰かにそれを教えられていたような……。
「──どうしていいか……わかんなかった、の……?」
峯はゆっくり顔をあげ、今にも泣きそうな男の顔を下から眺めた。
「──うん……完全ひよってた……。お前に、ハッキリ嫌いって言われるのが怖かった……」
「なんだよ……散々俺に色んなことしておいて……そんなこと怖がってたの? 今更過ぎるよ……虎羽ってば、馬鹿なの?」
「ごめん……」
「ばか……」
峯は自分より恋愛経験値が高くて、明らかにモテるはずの男に呆れ返りながらその胸に頭を預けた。
服越しでも体温が空気と共に伝わって、ひとつ深呼吸するだけで桐谷の香りが峯の全身を包み込む錯覚に陥り、峯は身体中の力が抜け落ちそうになる──。
──ああ、大好きな虎羽の匂い……夢じゃないんだ……。
恐る恐る桐谷は両手を広げ、ゆっくりと胸の内側にあるその身体を優しく包み込む。すぐに中から応えるようにして強く抱き付かれ、桐谷は相手と同じ強さで抱きしめ返した。
「凛人。俺……、ここにいても良い?」
「いいよ……そのかわり、次に逃げたら許さない」
そう言って峯は、桐谷に回した腕を更に強く巻き付けた。
真剣に向き合って、腰を据えて話をしに来たというのに──峯はなぜか桐谷の身体から1ミリ足りとも離れようとせず、何度も何度もキスをせがむ。
短くて浅いキスも、長くて深いキスも、何度も何度ももっとしてと止まらない。
「ね、凛……俺、このままじゃ話し……出来ない、んだけど──」
「いい、あとでいい──して、早くして。俺のこと無茶苦茶にして……抱いてよ。俺の中に挿れていっぱい擦って、中に、いっぱい……出して」
ズルズルとベッドに引き摺り込まれ、桐谷は初めての経験に半ば茫然としながらも、峯の脅威の誘惑にとてもじゃないが抵抗などできなかった──。
桐谷の上で峯は早々に自身の服をすべて脱ぎ、桐谷の上衣を乱暴に引っ張り剥がし、丸見えになった首筋に嬉しそうに噛み付くと、痕になるまで強く吸った。そしてそのまま唇と舌を這わせながら、いつも自分がされるみたいに胸にも噛み付いた。
「わっ、くすぐったいっ、そこはダメっ……ひゃはっ、凛っ」
「やぁだ」と峯はしつこく桐谷の胸の尖りを舌で弄っては指で摘んだ。
「いてぇっ、痛いってば、凛っ」
愛撫と呼ぶよりも、最早お仕置きに近いそれに桐谷の目には涙が滲んだ。赤く腫れた胸から舌を退かして峯はそのまま腹筋のラインを舐めて臍周りをなぞる。
どうもくすぐったいらしく、桐谷は何度もビクビクと腰を揺らして唇が弧を描いていた。
ジーンズを引き下げられて、直接峯は桐谷の雄に唇で触れると躊躇なく口の中に収め、少し強めに責め立てた。
峯はそれを唇だけで咥えながら何度も頭を上下させ、角度を変えては舌の先で先端を弄り、中から溢れてくる雫を口の中で受け止めながら恍惚な表情を浮かべた。
いつもよりずっと攻撃的な峯の姿に内心興奮しながらも、一方的に従い続けるのもそろそろ限界が来たらしく、桐谷はガバリと上半身を起こすと自らのジーンズと下着をベッドの下へ投げ捨て、峯の小さな尻を自分へ向けさせた。
「虎羽っ……あっ!」
反対側から峯の雄を桐谷は口に含んで、口の中で擦り上げながら完全に固くなるまで愛撫する。
更に大きな手で擦られ、久しぶりの刺激に峯の雄は痙攣しながら先走りを垂らし、いやらしく峯の太ももを濡らしてゆく──それを指にとってひくつく後ろの孔にゆっくり挿れると峯は腰を反らして嬌声をあげた。
久しぶりに触れる峯の秘部に、桐谷は夢中になって指を何度も抽送させる。峯はもう桐谷の雄を口に咥える余裕も失い、反り上がったそれを手の中に握りしめたまま動けずに延々と湿った吐息と甘い声を漏らし続けた。
「もぅ、指──やだ……虎羽の、虎羽のコレ……欲しい……挿れてぇ」
赤くひくつく場所からずるりと指を抜いて、桐谷は泣いてせがむ峯と頭を同じ向きにして身体を重ね、深く口付けた。
舌で何度もその中を味わって絡めては吸い上げると、峯はすでに音を上げる寸前まで来ていた。
やっと求めていた熱が身体の中へ入ってきて、まだ少しだけというのに峯からは恍惚のため息が漏れた。
ゆっくり、優しく中へ進むと、嬉しそうにその周りを峯の熱が放すまいと強く包む。
桐谷はそれだけで胸が熱くなり、なぜだか涙が出そうになった──。
「虎羽……全部……奥まで、いれて……」
「うん……」
キスしながらゆっくり奥まで進み届かせると、峯は涙を流して微笑んだ。
「──虎羽……だいすき……」
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