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第4話
イドリーはまだ事務所にいた。まるでこうなることが分かっていたようにニヤニヤと不快感を与える顔でミネットを見ている。
「おやミネット、どうしたんだ? 今日の仕事はおしまいだろう?」
「イドリーさん、金を、貸してくれませんか?」
「ほうほう、どうした?」
「……ジュンが、弟が、怪我させられました。入院させたいんです。でも、金がなくて、だから、金を貸してくれませんか?」
「金なあ。悪いが俺は金貸しは専門外なんだ」
簡単には貸してはくれないらしい。
なんでもするから、金がほしい。ミネットはイドリーを睨みつけながらそう言った。
「なんでも、か。お前は誰のものにもならない……そう豪語していたなあ?」
「はい。そうです、ね」
「俺のものになれ。そうすればお前のかわいい弟の入院費を全額出してやる」
「本当ですか?」
「ああ、本当だ。お前が身も心も俺に服従を誓うならな」
「……わかりました」
その返事に満足したらしいイドリーが電話で指示を出している。内容的にジュンの治療費と入院先の話をしていることにホッとしたミネットはその場に座り込み力を抜いた。
電話を終えたイドリーがするりと太い指をミネットのあご下に滑らせ撫でてくる。それに逆らおうとミネットがあごを上にやれば、そのまま唇を塞がれた。
唾液に混じりイドリーが普段好んで吸っているタバコの味が口に広がる。その苦さと臭いにミネットはイドリーの胸を押し抵抗するが、その手を取られるとそのままイドリーの股間で主張するそこに導かれた。おとなしくその昂りを手で抜いていると、シャツの襟を掴まれ近くのソファーに押し倒される。
「この感じ、懐かしいなあ」
イドリーがポケットから折りたたみナイフを取り出すと、その刃でミネットの着ていた服を引き裂いていく。次第にただの布切れになったミネットの服を床に投げ捨て、そのすべらかな褐色の肌が外気にさらされた。
イドリーはキャビネットから真っ赤な首輪を取り出すとミネットの首に着ける。
「今日からお前は俺の飼い猫だ」
真っ赤な首輪はミネットの褐色の肌に映えた。イドリーは舌舐りをしながらその首輪におもちゃのようなクサリを取り付けるとそのまま引きずりベッドへと連れていく。
「く、ッ!」
首が絞まり小さく喘ぐミネットをベッドの上に雑に寝かせ、イドリーは首輪から伸びるクサリをベッドに繋げた。
ちゃちなクサリだ。いつもであれば隙を見てすぐに逃げ出せるが、今回はジュンの命がかかっている。ジュンが治るまでは下手なことはできない。
ミネットが奥歯を噛み締めながらその屈辱に耐えていると、イドリーはアタッシュケースを取り出した。
「ほら、見てみろ」
その中を見せつけられ、ミネットは一瞬で青ざめる。
黒革のアームバインダー、本革の鞭にパドル、深紅のキャンドル。乳首用の吸引器、凶悪な大きさのディルド。その痛みや不快感はどれも一度は経験のあるものばかりだ。
「さてミネット……どれからはじめようか」
「やだ……いやだ!」
「お前のとこのガキが死んでもいいのか? 命令を撤回するなんて、命令するより簡単なんだぞ?」
ミネットが拒否すればジュンが治療を受けられず死ぬ。惨めだった。
「好きに、してください」
「そうかそうか。ふふ、お利口だ。ずっとこうしたかった。俺の好みに育ててやるよ」
ミネットをうつ伏せに寝かせ、舌なめずりをしながらイドリーは言うとパドルを手に取った。
ヒュ、と空を裂く音が聞こえた瞬間、バチンと皮膚を叩く音が響き渡る。
「……~ッ!」
あまりの痛みに声もでない。
「痛いか? 次期に痛みも全部快感になるさ。そう調教してやるんだからな」
イドリーの笑い声が薄暗くタバコの煙で曇った部屋に響きわたる。
その日からイドリーは飽きもせず毎日ミネットの体を求めた。
ささやかな大きさだった乳首もいたずらに調教を繰り返され、今では肥大した乳首になり下がりほんの少しの刺激で絶頂を迎える。
イドリーは自分が育て上げたミネットの体を大層気に入り、時には挿入はせず乳首だけで楽しむようにもなった。
その日はそういう気分だったらしいイドリーがミネットのぷっくりとした乳輪に電気パットを貼りつけ、その刺激だけでも甘く達しているのに、ツンと上向きに主張しているミネットの乳首をイドリーは嬉々として爪で押し潰す。
「イッ、も……やだ……やめろ、やめて……ひ、いく、イクッ! あ……も、とめて……また、イク、イグ!」
何度果てても止まらない刺激に堪らず子どものように泣きじゃくろうともイドリーの責めは続くのだった。
「いい体になったなあ、ミネット」
舌を突きだし口で呼吸をして、少しでもいきすぎた快楽をやり過ごそうとするミネットを嘲笑うかのようにイドリーはダメ押しと言わんばかりにミネットの乳首を捻り上げた。
「あ、あ……ぎぃッ!」
ビクビクと体を痙攣させながらベッドに倒れて黄ばんだ天井を眺めると、ミネットの眼前に大きく猛ったイドリーのソレがあらわれ、どろりとした白濁が顔にぶちまけられた。イドリーの白濁が目に入り酷く沁みる。
「ジュ、ジュン、は……?」
朦朧とする意識の中、ミネットはジュンの安否を確認しようと名前を口にする。
「さあな。今度聞いといてやるよ」
それだけ聞くとミネットの意識は刈り取られるように失せていった。
ジュン、かわいいジュン。ジュンの安否を聞いても一度だって教えてもらえない。
ミネットの朝の象徴。いつまでも恋しい朝はやってこなかった。
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