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第5話

 ミネットの古い記憶は口汚く罵る大人と、汚いゴミ捨て場から眺めたきれいな星空だった。  ウリモノニナラナイ。  冬の寒い夜。そう大人たちが言いながら幼い痩せ細った褐色の肌の子どもをごみ捨て場に置き去りにした。  お腹が空いて動けない。ごみ捨て場にひとり置き去りにされた子どもは辺りの様子を伺う。夜空に輝くきれいな星空とは真逆の辺りに広がる冷えきった空気があまりに寂しくて、近くに捨てられていた薄汚れたネコのぬいぐるみを拾い上げ、暖を取るように抱きしめた。  寂しい。暗い。怖い。周りのゴミから漂う臭気も恐怖を煽る一因だ。鼻がツンと痺れたかと思うと気がつけば泣いていた。  少しでも寂しさを紛らわせようと星空を見上げると、落ちてきそうなほどにきれいな星空に気がつけば涙は止まっていた。  座り込んだままぼんやりと星空を見上げていると視界に赤色が入ってきた。 「かわいいぬいぐるみを持っているね。……キミ、名前は?」  視界に入った赤色がそう尋ねてきた。よく見るとその赤色は赤い髪をした大人の男だった。  名前。そんなものが自分にあるなんて知らない。今まで『これ』だの『お前』だのと呼ばれていたはずだ。ふるふると子どもが首を振ると、手に持っていたネコのぬいぐるみを見て赤い髪の男は「じゃあ、今日からキミの名前はミネットだ。おいで、ミネット」と言ってミネットの体を抱きかかえてごみ捨て場から連れていった。  赤い髪の男はスーナという男で娼夫をしている。らしい。ミネットにはまだ娼夫という仕事が分からなかった。  スーナは痩せて薄汚れたミネットをシャワーできれいに洗い着替えさせるとパンとスープを食べさせてくれた。味はよくわからなかったが、空腹の体にその温かなスープは美味しいような気がした。 「ミネットはどうしてあのごみ捨て場にいたの?」 「ウリモノニナラナイって言われたから」  ミネットがそう答えると、スーナはじっとミネットの顔を見つめた。 「褐色の肌に金色の髪。瞳はありふれたヘーゼルブラウン。それは育て方次第かなあ……まあいいや。そろそろ寝よう。さあおいで」  ミネットはまたスーナに抱きかかえられベッドへ連れて行かれた。  その日はスーナと一緒のベッドで寝た。固いベッドは寝心地はよくないけれど、隣で眠るスーナが温かくて気持ちよく寝られた。  スーナに与えられるものを食べて、寝て。そうしているうちにガリガリだったミネットは日に日にふっくらとし、体つきもしっかりとしてきた。 「やっぱり、ミネットはきれいな顔をしているね」  これはミネットを見つめるスーナの口癖だった。 「きれい?」 「ああ。ミネットも、もう仕事ができるかなあ」 「しごと?」 「そう、仕事。仕事はね、生きていくために必要なことだよ」  スーナは笑って言った。 「俺が仕事したら、スーナは嬉しい?」 「うん、嬉しいよ。このあとイドリーさんが来るから、仕事ができるかみてもらおうか」 「うん!」  ミネットはまだスーナの言う『仕事』を理解していなかった。仕事をすればスーナが嬉しい。それなら仕事がしたい。そう思いミネットはイドリーという人物を待った。  ゴンゴンとドアをノックする鈍い音が響く。スーナは顔を輝かせて玄関へ向かう。 「で? お前のペット、食っていいのか?」 「うん。仕事できそうならミネットにも働いてもらおうと思って」  スーナは大柄な男の腕にしなだれかかりながらミネットの待つ部屋に戻ってきた。 「イドリーさんどう? 見た目はきれいでしょ?」 「ちょっとガキ過ぎる気もするが……まあ、俺のを一度咥え込めば十分仕事はできるだろうさ」  そう言って男の、イドリーの手がミネットに伸びる。  気がついた時には小さなミネットの体はベッドに押し付けられていた。服を破り捨てられた途端に恐怖がミネットの体を包み込む。 「や、いやだ! スーナ、助けて……怖いよ!」 「はは、助けてだってさ。おい、スーナ。こいつの腕、押さえ込んどけ」  助けを求めたはずのスーナが抵抗する腕を抑え込む絶望。割り開かれた脚の間でうごめくイドリーのぬめった太い指。自分の尻の穴からぐちょぐちょと鳴る濡れた音が恐怖を助長させる。  しばらくそうしているとイドリーが自身のボトムスの前を寛がせ、勃起した凶悪な大きさのそれを引きずり出した。それを自分の尻の穴にあてがわれ、ミネットはイドリーがしようとしていることを察した。ひゅ、と恐怖に喉が引きつった音が鳴る。 「こ、わい……っ、うぅ~ッ!」  震える声はスーナの手で塞がれた。そしてスーナはシィーっと黙るようにミネットに促す。 「大丈夫、大丈夫……」  そう言ってスーナがミネットに囁く。それでも逃げようともがくミネットの腰をイドリーが引き寄せ小さな尻の穴を貫いた。 「チッ、半分も入らねえな。おいスーナ、俺のブランデー持ってこい」  痛みで震えるミネットはもう暴れる力もない。スーナはミネットから離れるとイドリーのジャケットのポケットに入っているスキットルを取り出しキャップを開けてイドリーへ渡した。  イドリーはスキットルの中のブランデーを口に含むとはくはくと浅い呼吸を繰り返すミネットに口づけ、ミネットの口内へ流し込んだ。  口に流し込まれた液体を飲み下すと喉が焼けるように熱い。それが二回。はじめて飲むブランデーに頭がぐらりと揺れた。体に力が入らない。そのままうつ伏せにされ尻の穴に指を入れられ掻き回されるとまた太く硬いものが押し入っていた。 「おいスーナ、こいつのナカ、いい具合だ。こいつは稼げるぜ」  枕に顔を押し付けている状態で揺さぶられ息が苦しい。真っ暗な中、イドリーのそんな笑い声が聞こえた。  自分の体がどうなっているのかもう分からない。ただ泣きながらその身に与えられる痛みを受け入れるしかなかった。  しばらくそうしていると体の揺れがおさまり、尻の穴がどろりと濡れて圧迫感がなくなったことに気がついた。 「ふう、ミネットちゃん、今度から稼がせてやるよ」  枕に押し付けていた顔を横に向けるとさっさと着替え始めたイドリーにスーナがしがみついていた。 「ちょっとイドリーさん、帰るの? 俺とは遊んでいかないの?」 「ああ、久しぶりに満足したからな」 「もう!」  そんなスーナとイドリーのやり取りはイドリーが着替え終え玄関へ向かうまで続いている。それをミネットは静かに泣きながら見ていた。 大好きなスーナがミネットに酷いことをした男に媚びている。それがたまらなく嫌だった。 「い、たい……う、うぅ、スーナ、痛いよう」  ひとり戻ってきたスーナにイドリーに犯されたお尻が痛いと訴えた。 「慣れるよ、すぐに。お前、もう泣くなよ。こんなことで泣いていたら疲れるだけだろ?」 「だって、あいつ……やだ」 「なに? イドリーさんが嫌だったの? じゃあ慣れるまで俺が抱いてあげるよ」  そう言ってスーナは服を脱ぎはじめた。イドリーと同じことをするつもりだと察したミネットは逃げようとベッドから降りようとしたが、スーナはその体をベッドに引きずり戻した。ミネットの体を押さえつけながらスーナは自身のそこを手で扱く。しばらくするとイドリーのものよりは細身だが、それでも硬く勃ち上がったイドリーと似たそれにミネットは顔を青くした。 「や、やだ……スーナ、やだ、やめてよ……いッ!」 「ほら、ちゃんと息して」  スーナに言われるがまま浅く呼吸を繰り返すと、それに合わせるようにぐぐ、とスーナのそれがミネットのナカに入ってくる。 「や、あ……い、たい」 「あ、ホントだ。ミネットのナカ、きゅうきゅう締め付けてきて気持ちいい」  揺さぶられながらスーナの肩越しに夜空が見えた。月のない真っ黒な夜空はまるでミネットの心の中のようだった。

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