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38.探偵と刑事と交換・一△
ホテルにたどりついたウィルクスは、ベルジュラックが泊まる客室の扉をノックした。扉が開き、中からベルジュラックが顔を覗かせる。笑顔は見せず、むしろウィルクスの顔を見て表情を固くした。
「ウィルクスさん、大丈夫ですか? 真っ青ですよ」
大丈夫です、とウィルクスは答えた。室内に入ると、ベルジュラックは扉を閉めた。鍵はかけなかった。
部屋はスイート・ルームだった。ウィルクスが通された部屋は客間で、革張りのゆったりしたソファやアンティークの大きなテーブルが悠々と配置されている。落ち着いて、くつろげる空間を計算してつくられていた。そのうえ、さりげないのに上質で、贅沢だった。
たしか、会社の金ではなく自分の金で泊まっていると言っていたな。ウィルクスは広い客間を見回して思いだす。ベルジュラックは金持ちだ。ただ、ウィルクスにとってはもうどうでもいいことだった。
ソファを勧められ、腰を下ろす。ベルジュラックもテーブルを挟んで向かいに腰を下ろした。ウィルクスが見ると、ハイネックの薄手のセーターにコットンパンツを履いている。くつろいでいたらしい。
おれがロビーで追いだされなかったのは奇跡だ、とパーカーのウィルクスは思った。
彼はすぐに言った。
「写真を返してください」
ベルジュラックはまじまじとウィルクスを見る。
「写真?」
「言ったでしょう、写真のことで話しあわないかって。ラルフがおれを撮った写真ですよね。返してください」
「あの写真か」
ベルジュラックは微笑んだ。
「いい写真でした。あなたの淫乱さが花開いていて。発情したペニスと、涙と涎れでぐちゃぐちゃになった顔。あの顔を見たら、きっとみんな忘れられなくなる」
ウィルクスの胸で心臓がどくんと音を立てる。耳に血がのぼる。反対に、顔は真っ青になった。
「返してください」
もう一度強く訴えると、ベルジュラックは言った。
「いいですよ。ただし、今から言う三つのことをクリアできたらね」
ウィルクスはぽかんとした顔になる。言えば返してくれると思っていたのか? 可愛い人だ。ベルジュラックは目でウィルクスを犯した。ウィルクスはぷるっと震え、すぐにその、やや強面の美しい顔が引き締まる。
「わかりました。なんでもします」
なんでも、とベルジュラックは唇の端でつぶやいた。自らのパンツのジッパーに手を掛ける。ゆっくり下ろすと、ウィルクスの目は釘付けになっていた。ベルジュラックは笑った。
「じゃあ、フェラしてください。丁寧にね」
ウィルクスは自分の頬を平手で叩いた。目が泳ぐ。泣くかな、とベルジュラックは思ったが、ウィルクスは泣かなかった。こくりとうなずき、震える声で「はい」とつぶやいた。
彼がどれくらい覚悟してここまで来たのか、ベルジュラックは知らなかった。ただ、なんでもするという言葉に嘘はないと感じる。ベルジュラックはわかっていた。ウィルクスが、どれだけハイドとの日常を大切に思っているのか。彼に愛されていることを、拾われた犬のように恩義に思っている。だから……それを壊せると思うと、ベルジュラックは昂ぶった。
ウィルクスはゆっくり歩いてくると、ベルジュラックの脚のあいだにぺたんと座りこんだ。彼がパンツを膝まで下ろし、下着をずらすと、半ば勃ちあがったペニスが外に飛び出てくる。ウィルクスはちらりと見下ろした。その目にはなんの感情も浮かんでいない。
「風呂は入っておきました」
ベルジュラックがそう言うと、ウィルクスは「ありがとう」と答えた。
ウィルクスが口を近づけ、咥えようとしたとき、ベルジュラックが言った。
「ウィルクスさんは、むりやり犯されるほうが感じるんですよね?」
ウィルクスは虚ろな目でベルジュラックを見上げた。
「え?」
呆けた声でつぶやく彼の頬を、ベルジュラックは指の背で撫でる。ウィルクスはぷるっと震えた。だめだ、と震える声でつぶやく。
「そ、その撫で方、や、やめてください……」
「ハイドさんを思いだすから?」
ベルジュラックはそう言いながら、手を止めない。ウィルクスは振り払うそぶりを見せたが、しかし反抗したら写真を返してくれないのではないかと不安になり、結局撫でられたままでいる。ハイドの顔がちらつき、背骨がぞくぞくした。ウィルクスは自分の肉体の反応に気がついて、必死で正気を保とうとする。腹に力を込め、睨みつけるようにベルジュラックを見上げた。
「お、おれは……そ、そんなことありません。むりやりなんて、い、嫌だ」
ベルジュラックは無視した。ウィルクスの目の中を覗きこむ。
「フェラするときも、むりやり頭をつかまれて、動かされて、こっちのやりたいように犯されるほうが感じるんですよね」
「ち、ちがう」ウィルクスの声は裏返っていた。「嫌だ、ちがう、そ、そんなことない……」
「じゃあ、試してみましょうか。咥えて」
ウィルクスはもがくように上体を震わせたが、ベルジュラックにしっかりと顎をつかまれて逃げられない。
「写真」と言われて、抵抗していた体から力が抜ける。ウィルクスはむりやり顎をつかまれて、顔を近づけられ、勃起したベルジュラックの男根にキスをした。
「口を開けて」
ささやかれ、口を開ける。
自分を殺すんだ。ウィルクスは必死で己に言い聞かせていた。我慢するんだ。今、いいなりになれば、これから先はそんなことをしなくてもよくなるかもしれない。
男根を口に咥え、舌を這わせる。ベルジュラックの両手がウィルクスの頭をつかんだ。
前後に動かされ、ウィルクスの口から「んぶっ」という苦しげな声が漏れる。亀頭が喉を刺して、戻しそうになる。それでも、これまでの条件反射で喉を締めていた。
「あなたの喉は最高だ」
ベルジュラックが頭を動かしながら低い声でささやく。
「アナルみたいだ。狭くて熱くて、吸いついてきて。……気持ちいいでしょう?」
よくない、とウィルクスはぼろぼろ涙を流す。口の端からとめどなく涎れとカウパーが溢れ出てくる。鼻からも鼻水とカウパーが逆流している。醜い、とウィルクスは思った。男の股間に貪りついてどろどろになっている自分。自分への憎悪でいっぱいになる。
しかし、ベルジュラックはそんなウィルクスを見て、さらに昂ぶった。
反りかえった怒張に喉を抉られ、ウィルクスはむせるが、ベルジュラックは容赦しない。口の中に、舌に、喉に自分の破裂しそうな怒張を擦りつけている。ウィルクスは涙と涎れと鼻水でどろどろになりながら、なんとか貪りついていた。意識が朦朧とする。あまりの苦しさで失神しそうだ。ふと、噛んでやろうかと思った。
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