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第一章・3
早紀はメニューを開き、ざっと目を通すとがっかりした声を上げた。
「なに、これ。飲み物ばっかり」
そしてすぐに、ウエイターの青年を呼びつけた。
「ねぇ。フルーツパフェとか、置いてないの?」
「和菓子セットなら、ございますが」
他には、甘いものは置いていない、と言う。
早紀は、唇を尖らせた。
「ちぇっ。和菓子なんて、おじいちゃんみたい」
「どうする、早紀」
「店、替える?」
しかし、カウンターからは、香ばしいコーヒーの匂いが漂ってくる。
おいしいよ、と誘ってくるような、魅惑的な香りだ。
そこで早紀は、声を潜めた。
「ね。ここで一番高いコーヒー、飲んでみよっか?」
「メニュー、見る?」
確かめてみると、一番高価なブルーマウンテンで1,500円。
少年たちは額を突き合わせて、溜息をついた。
「高い」
「やっぱ、大人向きのカフェだな」
だが早紀は、それをいとも簡単に覆す。
「安いよ、ブルマンなんて。なんか、もっと高いコーヒーあるよ」
「どのくらい?」
「一杯、3,000円くらい」
少年たちは、どよめいた。
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