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第一章・4
「コーヒー一杯で、3,000円!?」
うん、と早紀はうなずいた。
「ジャコウネコにコーヒー豆食べさせて、お腹の中で発酵させるんだって」
「へえ」
さすがは早紀。
面白い話題には、事欠かない。
だが、少年の一人があることに気が付いた。
「お腹の中の豆は、どうやって取り出すんだ?」
「まさか、ネコの腹を裂いて……」
それが、さ。
早紀は、にぃっと笑って噴き出した。
「うんこになって、出てくるんだって!」
途端に店内は、賑やかな笑いの渦に包まれた。
「汚い!」
「ちゃんと洗うから、大丈夫だって!」
いつまでも笑いの絶えない少年たちを、ウエイターは困り顔で眺めている。
そんな彼を、カウンター向こうのマスターが目で呼び寄せた。
「しばらく、楽しませておこう」
「すみません、ちっともオーダー取れなくて」
いいさ、とマスターはかすかに微笑んだ。
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