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第一章・5
箸が転んでも、可笑しい年頃だ。
そう言って、マスターは微笑む。
肩まで長い直毛を、オールバックで後ろにひとくくりにした独特の髪型。
肉付きは薄いが、彫りの深い面立ち。
髪と同じく黒い瞳は、少し物憂げな光をたたえている。
そんなアルファ性の男・弓月 衛(ゆづき まもる)が、このカフェのマスターだった。
「しかし、このままだと他のお客様が入って来られなくなるな」
そこで衛はカウンターを出て、自らオーダーを取りに早紀たちに近づいていった。
「お客様、ご注文はお決まりですか?」
「ね。この和菓子セットの飲み物は、自由に選べるの?」
早紀は、衛にそう持ち掛けた。
「ジュース、紅茶、コーヒーからお選びいただけます」
「じゃあ、さ。この店で一番高い飲み物に、和菓子を付けてよ」
それには、周囲の友人たちが驚いた。
「お、おい。早紀」
「別にいいよ、値段にこだわらなくても」
しかし早紀は、引き下がらない。
「お兄さん。一番高い飲み物って、いくら?」
屈託のない表情の早紀は、生意気だが可愛らしい。
衛はつい、この少年を試してみたくなった。
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