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第三章・2
このカフェのことは、毎日のように話していた、と紀明はコーヒーで体を温めながら語った。
「飽きっぽい早紀が、毎日通って。そして、弓月さん。あなたのことも」
「私を?」
「大人で、優しい方だ、と。憧れている、と話しています」
まさか、あの早紀くんからそんな風に思われていたとは。
だが、衛はあえて黙っていた。
早紀の父親に、和菓子を勧めて聞いていた。
「数年、地下に潜ろうと思っています。もちろん、また日の当たるところに出られるよう、努力はします」
「身を隠すような、危険が?」
「借金取りが、厄介です。どうやら、暴力団まがいの連中らしくて」
それは確かに隠れなければ、と衛は眉根を寄せた。
高額の保険金を掛けさせられ、自死を装って殺される恐れがある。
「しかし、私のような人間に、大切な息子さんを。早紀くんを預けてもよろしいので?」
「早紀はまだ若く、しかも第二性がオメガです。もし、奴らに目を付けられれば、風俗に売られます」
「そんな……」
「私は、早紀を信頼のおける人間に、預けておきたいのです。隠しておきたいのです」
確かに、隠すには絶好のポイントだろう。
このカフェは、目立たないところでひっそりと営業しているのだから。
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