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第三章・5
「お父さんには、君をよろしく頼むとお願いされているんだよ」
「父さんは、何て?」
「早紀くんが淹れたコーヒーを飲める日を楽しみに、頑張る、と」
だから、君も頑張るんだ。
ここが、踏ん張りどころなんだ。
ただ……。
「ただ、今日一日は静かに過ごしなさい。カウンター奥に、休憩室があるから。そこで、ゆっくりするといい」
「僕、働くよ。今からでも構わない。ちゃんと稼いで、父さんに恥ずかしくない大人になるよ」
その意気は、見事だ。
さすが、一流企業の社長子息だ。
「しかし、今の早紀くんが店に出たら、私が通報されそうだ」
パワハラ疑惑が、湧いて出る。
それほどひどい、早紀の泣き顔だった。
「休憩室には、いろんな本もある。読んで、勉強するといい」
「うん……」
ようやく早紀は、衛に連れられ休憩室に入った。
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