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第四章 初めての夜
『また、きっと会える。私は、早紀を信じているよ』
「……父さん!」
は、と我に返ると、早紀の体はゆるやかに揺れていた。
ここは……、車内?
気付くと、自動車の後部座席で横になっている自分がここにいる。
「衛さん?」
身を起こし、前に乗り出すと、果たしてそこにはハンドルを握った衛の姿があった。
「起きたか。よく眠ってたな」
「起こしてくれて、良かったのに」
「起こしても、起きなかったんだよ」
車窓の外は、すでに暗い。
しかし、夜の10時、というわけでもなさそうだ。
「衛さん、お店は?」
「今日は臨時で早く閉めたよ。早紀くんを、我が家に招待しなくてはならないからね」
そうだった。
僕は今日から、衛さんのお世話になるんだ。
(父さん、今頃どうしてるだろう)
そう思っても、涙はにじむ程度に落ち着いた。
ただ、瞼がやや重い。
早紀の目は泣きすぎて、すっかり腫れてしまっていた。
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