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第四章・2
「わぁ、マンションだ!」
「賃貸だけどね」
一軒家だった実家とは違う雰囲気に、早紀は興味津々だ。
室内に入って、その温かさにまず驚いた。
「エアコン、いれてたの?」
「マンションの部屋は、一戸建てと違って密室だからね。隙間風が、入らないんだ」
ただし、真夏は灼熱地獄だ、と笑う衛だ。
そう聞いても、衛の家を自宅と比べて貧相だ、とは思わない早紀だった。
高い天井には、邪魔にならない幾何学的な照明が灯っている。
装飾の少ない家具や、シンプルなカーテン。
統一感のあるカラーで整えられた部屋は、モダンインテリアという言葉がぴったりだった。
「カッコいい部屋……」
「ええ? そうかな?」
「全然、散らかってないし。無駄なもの、一切置いてないし」
こんな部屋、憧れた。
大学に進学して一人暮らしになったら、こんな部屋に住みたいと思ってた。
しおれた早紀に、衛は気づいた。
「どうかしたかい?」
「ううん。何でもない」
そして、お腹はすいてない、と言い張る早紀は、バスを使わせて欲しいと言った。
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