28 / 145
第四章・6
「お願い、衛さん。僕のこと、抱いて」
「どちらかと言うと、私の方が抱かれてるんだが」
「お願い、茶化さないで。僕と、エッチして」
早紀くん、と衛は息を吐きながら言った。
「君はもっと、自分を大切にした方がいい」
「経験なら、あるよ。だから、抱いて」
身を擦り付けてくる早紀の中心は、硬く張っている。
「辛い。僕、辛いよ。少しの間だけでも、忘れたいんだ」
これは迂闊だった、と衛は眉根を寄せた。
早紀の心傷は、あんこう鍋程度でごまかせるようなものではなかったのだ。
「……じゃあ、キスしてやるから。だから、すぐに寝るんだぞ」
その言葉が終わらないうちに、衛は早紀に口づけられていた。
「衛さん。……衛さん!」
早紀は、大人のキスを知っていた。
衛の唇を割り、その細い舌を差し入れてきた。
甘い香り。
柔らかな感触。
「早紀くん、これ以上は、いけない」
「早紀、って呼んで」
夢中でキスをしながら、早紀はパジャマを脱いでいった。
ともだちにシェアしよう!